あらすじ
半世紀前に絶滅したはずの中央アルプスに、突如1羽のライチョウが現れた。絶滅危惧種に指定されているライチョウを救わんと情熱を燃やすのが、信州大学名誉教授の中村浩志(76)だ。ライチョウの知られざる生態を解明し、木枠と金網で作ったケージでヒナと母鳥を守る「ケージ保護」を考案、動物園での人口飼育、卵やヒナのヘリコプターでの移送などを指揮、難題を次々に解決していく。新聞記者だった筆者が、早期退職してまで追い続けたライチョウ奇跡の復活劇。
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Posted by ブクログ
中央アルプスでライチョウを復活させるために奮闘した人々の物語。先日、北アルプスを縦走した際、何度かライチョウの姿を見ることができた。貴重な鳥だと言われているが、どれくらい数が少ないのか?と思い、書籍を探した結果、本書籍に辿り着いた。
ライチョウの研究、保護、増殖にこれだけの熱意と切実さを持って取り組んだ方々がいただなんて、自分は全く知らなかった。たった数羽増やすことがこんなにも難しく、また失敗の連続なのにもかかわらず、プランAがダメならプランBと切り替えて突破口を見つけようとする、研究者としての執念に尊敬の念を抱いた。何かを成し遂げるには、周りが見えなくなるくらい、取り組む必要があるのだなとも思った。
ライチョウ研究の第一人者である中村さんはもちろんすごいが、本書を書き上げた著者も相当すごい。なにしろ、ライチョウに関わるさまざまなことが高山で起きているのだから、体力・気力そしてジャーナリストとしての矜持がなければやり遂げられない。本書の内容は、中央アルプスでのライチョウ復活事業の第一歩であり、ライチョウ復活が完全に完了したわけではないが、この一歩を踏み出すには、誰一人として欠けてはならなかった。関係者全員が自分の精一杯を尽くしたから見られた奇跡。
Posted by ブクログ
素晴らしかった
ここまで情熱と執念を注ぎ込まないと野生生物の個体数は回復しないのだなと感服
終始中村先生が大暴れでハラハラしたw 著者の近藤さんの冷や汗が行間から滲み出ている
今の時代では煙たがられる存在だけど、やはりこういう大きな取り組みでは絶対に必要な人だよなと思った
それにしても国の「二桁になったら考えます」はアホすぎる
人間みたいに一部屋に番を放り込んだら勝手に殖えるとでも考えているのだろうか?
こんなのが官僚かぁ…とガッカリしたりちゃんと保護に理解を示してくれてホッとしたり、中村先生にヒヤヒヤしたり、大勢の意思を統一する難しさと、その分成し遂げた時の感動の大きさにグッときたり、壮大なルポでした
登山に1ミリも興味無かったけどライチョウに会えるなら鍛えて行くか!という気持ちになった
今年も飛来メスちゃんが元気にしてるといいなぁ
Posted by ブクログ
今年の9月に北アルプスで雷鳥に出会った。愛らしいフォルムに心底癒やされたけれど、この本を読むまでこの出会いがいかに奇跡的でかつ尊いものだとは思いもしなかった。
この本はたまたま中央アルプスにメスの雷鳥が飛来したことがきっかけで始まったライチョウの復活作戦の一部始終を描く。失われた自然を取り戻すには狂気的な想いが必要だが、併せて挫けない確固たる意志と失敗しても続けられる不屈の精神も必要だ。