【感想・ネタバレ】ソコレの最終便のレビュー

あらすじ

【戦争×鉄道エンターテイメントの傑作】
大戦末期、ソ連軍の奇襲侵攻を受け崩壊の危機に瀕する満洲国。
特命を帯びた装甲列車(ソコレ)が、混乱の大地を駆け抜ける!

昭和二十年八月九日、日ソ中立条約を破棄したソ連軍が突如として満州国へ侵攻を開始。国内全体が未曾有の大混乱に陥るなか、陸軍大尉・朝倉九十九率いる一〇一装甲列車隊「マルヒト・ソコレ」に特命が下った。それは、輸送中に空襲を受けて国境地帯で立ち往生してしまった日本軍唯一の巨大列車砲を回収し、はるかかなたの大連港まで送り届けよ、という関東軍総司令官直々の緊急命令であった。

疾走距離2000km、タイムリミットは7日間!!

【佐藤賢一氏推薦】
昭和二十年八月、終戦間際の満洲を装甲列車(ソコレ)が走る。
迫真の戦争小説と転変のロードノベルが合体
――おののかされ、引き回されて、もう一気に読まされた。

【著者略歴】
野上大樹(のがみたいき)
1975(昭和50)年生まれ。佐賀県在住。防衛大学校卒。『霧島兵庫』名義で第20回歴史群像大賞優秀賞を受賞し、2015年『甲州赤鬼伝』(Gakken→新潮社)にてデビュー。その他の著作に『信長を生んだ男』(新潮社)、『二人のクラウゼヴィッツ』(「フラウの戦争論」より改題)(新潮社)、『静かなる太陽』(中央公論新社)がある。2023年『野上大樹』へ名義変更。『ソコレの最終便』が名義変更後初の刊行作となる。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 終戦間際の満州を舞台にした冒険小説。
 戦時下の惨状を描きながらも、爽やかな読後感は、凄惨極まりない戦場で失われがちな、人間本来の優しさや、正しくあろうとする足掻きを、愚直なまでに貫き通す主人公たちの姿がもたらしたものに他ならない。

 昭和20年8月9日。陸軍大尉朝倉九十九率いる一〇一走行列車隊に、日本軍の秘密兵器列車砲を回収、本土決戦に備え大連港から積み出せとの特命が下る。
 大連からの輸送船の出港のタイムリミットと、日ソ中立条約を反故にし北から迫るソ連軍。分かりやすいくらい分かりやすい、舞台設定。

 その中で、隊員たちの他、道中に加わる避難民らとの反発や理解、協同による作戦遂行のエピソードに、それぞれの登場人物の性格、背負って立つ背景、生い立ちが織りなされれば、ただただ満鉄の軌道のごとくの物語の展開に身をゆだねていればOKという、大衆エンタメ小説。
 どうやって登場人物を考案し、どうプロットを組み立てたかが目に見えるような展開だった(笑)

 登場人物も分かりやすく、ヒロインは17歳の勝気な看護婦雲井ほのか。任務と人命を天秤にかける朝倉とことごとく対立するのは既定路線。
 満鉄の老整備士の知恵と技術で危機を脱し、配下の隊員たちの活躍を、場面場面で追っていく。
 砲隊長の金子が内地に残してきた妻子のことを語れば、あぁ、これはもう死亡フラグだな、というのも分かりやすいくらい分かりやすい。

 佐賀県出身の著者。
 大連を引き上げた避難民を乗せた船が目的地の神戸ではなく長崎佐世保に寄港するのは、故郷の近く、長崎の惨状を描くためであろう。
 朝倉の出身地も長崎市内とした。殿を務めるため大連港に居残った朝倉に代わり実家を訪ねる雲井と迎える姉との対面は、涙なくして読めない場面だった。

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2024年10月18日

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