【感想・ネタバレ】経学少女伝 ~試験地獄の男装令嬢~【電子特典付き】のレビュー

あらすじ

世界最難関・男性のみ受験可能な試験――科挙。

雷雪蓮(らい・せつれん)は、少女でありながら男装して科挙登第を目指す受験生。
自分以外にそんなやつはいないと思っていたが、試験会場でどう見ても女の子な受験生・耿梨玉(こう・りぎょく)を発見してしまう。

ひょんなことから仲良くなった二人は、悪徳官僚に支配された世界を正すため、手を取り合って試験地獄に挑むことに。
性別がバレたら即・失格なうえ、試験問題は超ハード。

さらには殺人事件やカンニングの横行など、様々なトラブルが発生して…?

世界を変えようとする二人の男装令嬢の物語が始まる!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

『経学少女伝 ~試験地獄の男装令嬢~』は、学問と制度を物語の中心に据えることで、知の重みそのものをドラマへと昇華させた、きわめて誠実な作品である。
試験という、一見すれば地味で閉じた題材を用いながらも、本作はそこに人間の欲望、焦燥、誇りを鮮やかに映し出している。

男装令嬢という設定は、単なる装飾や話題性にとどまらず、学問をめぐる社会構造の歪みを浮き彫りにする装置として機能している。
性別や身分によって学ぶ権利が制限される世界で、主人公が知を武器に道を切り開いていく姿は、静かでありながら確かな力を持って胸に迫る。
そこには奇跡やご都合主義はなく、積み重ねられた努力と忍耐だけが描かれている点が、この物語に揺るぎない説得力を与えている。

また、経学という硬質な題材が物語に奥行きを与えている点も特筆すべき。古典や思想は単なる背景説明ではなく、登場人物たちの価値観や対立の根幹を成しており、知識がそのまま人格と生き方を形づくっている。
試験の場面ですら、勝敗以上に「何を信じ、何を選び取るのか」が問われる構造になっており、自然と知の意味について考えさせられる。

全体を通して感じられるのは、学ぶことへの真摯な肯定である。知は人を選ばないが、社会は人を選ぶ。その矛盾を直視しながらも、それでもなお学ぶことに価値があると語りかける本作の姿勢は、静かで力強い。派手な興奮ではなく、読み終えたあとに確かな重みとして残る余韻こそが、この作品の最大の魅力だろう。

『経学少女伝 ~試験地獄の男装令嬢~』は、知を尊び、努力を信じる物語である。学ぶことの厳しさと尊さを真正面から描き切った、実直で骨太な一冊。

著者初読。KU。

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2025年12月17日

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