あらすじ
存在しないはずの本を買ってしまう「継ぎ穂」、空中散歩を楽しむ「21gの冒険」、異国のラジオが聴こえ始める「混信」、図書館の地下に迷い込む「地下図書館探検譚」。
日常から地続きの〈不思議な世界〉に読者をいざなう、極上のローファンタジー4編を収録。ネットやCOMITIAで大注目の才能による商業デビュー単行本。
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Posted by ブクログ
ファンタジー系の短編集。
緻密な背景とすっきりしたキャラクターデザイン、凝った世界観と緩やかなドラマのギャップが楽しめる一冊です。読みやすい語り口なのに情報量が多く、くすっと笑えてじんわり泣ける、不思議な読み味の短編集でした。
個人的には「接ぎ穂」と「21gの冒険」が特に印象に残りました。
◇接ぎ穂
12ページしかない同人誌を買ったところ、読むたびに内容が変わり、毎回面白いところで終わってしまう——というマジックリアリズム的な設定の作品。
読んだ内容を記録できないため、なんとなく残った印象を頼りに、主人公が自ら続きを書き始める。
他者から受け取った面白さの種が主人公の中で開花し、新たな創作物として生まれ変わり、やがてまた別の誰かへと受け継がれていく。技術論を一切語らず、創作への純粋な愛だけで一本書ききったのは、むしろ潔くて珍しいです。
オカルト的な設定でありながら誰も傷つかない、優しい世界観も好印象でした。
◇21gの冒険
交通事故で亡くなった女性が幽霊となり、することもないので自分が入る墓を目指して冒険する物語。
亡くなった人間は魂が尽きるまで幽霊として街を彷徨うという設定が、優しさと儚さを同時に漂わせていました。
年齢以外の素性が一切語られないまま淡々と冒険していく展開はさっぱりとしていて心地よく、それでも読み進めるうちに自然と思い入れが深まっていく。
未練を残さず静かに消えていった彼女ですが、思わず涙ぐんでしまいました。