【感想・ネタバレ】火山と断層から見えた神社のはじまりのレビュー

あらすじ

神道のはじまりより遥かに古い、大規模神社の真の起源を知りたい。元新聞記者の著者は鎮座地の〝大地の履歴〟に着目。たとえば光り輝き、役立つ道具ともなる鉱石の産出。たとえば湧き出る清水、温泉。そして巨岩。火山帯ゆえに表情豊かな列島に暮らした旧石器人・縄文人がそれらの神秘に出会って何を感じたか。聖地と二大構造線の関係は? 現地調査と考古学、神話を網羅した史料探求による綿密な考察は地歴ファン必読。「目からうろこだった」と読者から絶賛された『聖地の条件』を改題して文庫化。
※本作品は2021年8月に小社より刊行された単行本『聖地の条件 神社のはじまりと日本列島10万年史』を文庫化に際し、加筆修正を行い改題したものです。

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Posted by ブクログ

神社に興味を持ち始めたのは、コロナ前に妻と「御朱印集め」を始めたことに由来します。御朱印がいくつか溜まってくると、様々な神社に行くのが楽しみになってきました。定年退職して時間が取れるようになり、今年(2025)の4月に、宇佐神宮や阿蘇退社に参拝する機会があり、古い神社に興味が出てきました。

そんな私が先日隣駅の本屋で見つけたのがこの本です、日本にある有名な神社が、火山や断層などの地理的な視点から説明されています。ここで紹介されている神社のいくつかを時間を見つけて回ってみたいですね。

以下は気になったポイントです。

・日本列島の近辺では、太平洋(東)・フィリピン海(南)・北アメリカ(北)・ユーラシア(西)プレートという4つのプレートがせめぎ合っており、その複雑で激しい地殻の運動の結果が火山と地震に他ならない、阿蘇山・霧島山・富士山など名だたる火山には歴史ある神社(阿蘇神社=宮司の阿蘇氏は92代目・霧島神宮・富士山本宮浅間大社)がある(p8、12)

・神社の始まりを探る作業は「国つ神」について考えることになる、出雲大社(島根)・熊野本宮大社(=本宮大社・速玉大社・那智大社@和歌山)・諏訪大社(長野)は、全国各地に多くの支社、分社を持ち、古代に起源を持つ信仰の歴史は力強く継承されている(p17、128)

・玉作りの主要な材料である碧玉の採れる地域は限られている、新潟県の佐渡島、石川県小松市、兵庫県豊岡市、出雲地方(松江市玉生湯町)である(p39)

・三種の神器は、政治(鏡)、軍事(剣)、宗教(勾玉)という古代社会の3つの権威を象徴しているという説がある、本書のテーマは神社なので、注目するのは勾玉である(p50)

・武蔵国(東京、埼玉、神奈川の一部)の国府があったのは、東京都府中市で、府中駅の近くに広大な神域を持つ「大國魂神社」がある。この社名は大国主別名の大国魂神と重なっている。主祭神である大国魂大神はオオクニヌシであると言われる(p83)東北地方にも広がっていて、湯殿山神社(山形鶴岡市)飛鳥神社(山形県酒田市)太平山三吉神社(秋田市)筏隊山(ばつたいさん)神社など、地域を代表する古い神社もある、これらはオオクニヌシを祀っている(p87)

・出雲の神々の物語を通して日本人が受け継いできたのは、「玉」と温泉によって象徴される火山列島の信仰だったのではないか(p127)

・気象庁は、日本の火山のうち、過去1万年間に噴火したかどうかを基準として、111の活火山と指定して警戒対象としている。1万年より前に活動していた休火山、死火山を含めると日本列島にはおびだたしい数の火山がある(p130)

・千と千尋の神隠しの舞台となったのは、松山市の道後温泉本館である、現在は市営の公衆浴場で一階は「神の湯」二階はやや高い料金の「霊の湯」である(p157)

・諏訪大社とは諏訪湖を挟んで南北に鎮座する4つの神社の総称である、南側に上社本宮(諏訪市)上社前宮(茅野市)北側に下社春宮と下社秋宮(下諏訪町)がある(p159)一番観光客が目立つのは、下社秋宮である(p160)

・延喜式に記録されている伊豆国の神社92座の代表格が、三島市に鎮座する三島大社、伊豆国一の宮である、大国主の長男格(コトシロヌシ)が祀られている(p170)

・諏訪大社の分社の数は5000社、合祀や境内社を含めると全国に一万社の諏訪神社があり、特に興隆している神社である(p183)

・日本列島で最も美しいとされていた石は、翡翠(ヒスイ)で、碧玉、メノウ、琥珀がそれに次ぐ、石器素材として最も珍重されたのが黒曜石、そのほか、サヌカイト(安山岩の一種)貢岩、玉髄などの石器が見つかっている(p188)

・主要な黒曜石産地の近くには、神社がある、諏訪大社・三島大社・出雲大社・宇佐八幡宮(p190)江戸時代まで神道界の総元締めのような役割を持っていたのが、吉田神道の拠点である吉田神社があるのが吉田山である(p214)

・二大構造線(中央構造線、糸魚川静岡構造線)に沿った神社と鉱物産地がある、天津神社(翡翠)・鹿島神宮(砂鉄)・伊勢神宮下宮(辰砂=朱)・諏訪大社(黒曜石)・大神神社(辰砂=朱)、さらに中央構造線に沿って、豊川稲荷(稲荷信仰の中心)、日前国懸神宮(和歌山)、石鎚神社(愛媛)がある(p217)大神神社は広辞苑では、日本最古の神社で三輪山が神体とされる、美しい山と神と仰ぐ原初の神社の始まりは大神神社にあると考えられている(p226)

・現在、神宮と称している神社は20数社しかなく、伊勢神宮、熱田神宮、明治神宮、橿原神宮などは天皇家の先祖神あるいは歴代の天皇や皇族を祭神としている、天皇家とは血縁がなく家来のような地位の神を祀っているのは、鹿島神宮・香取神宮(千葉県)石上神宮(天理市)くらいである(p233)

・北陸新幹線の小松駅近くの八日市地方(じかた)遺跡は、北陸では最大級の弥生時代の環濠集落であり、玉作りの拠点(碧玉)としても注目されている(p246)

・現在進行している温暖化は、過去百年で一度程度、平均気温が上昇しているのに対して、氷期とその後の温暖期(縄文海進)では、「三年で7度」という激烈な変動であった(p280)水月湖(福井県若狭町)の湖底堆積物のデータから、突然気候が変わった年が見える、それは今からおよそ「16100年前」であると絞り込まれている。太平洋にあったアトランティス島が消滅したのは、プラトンの生きた時代から9000年前のこととされている、プラトンは今から2400年ほど前の学者なので、単純計算すると、アトランティス島が消滅したのは、氷期の終わった16100年前頃と概ね一致する(p281)

・日本列島4万年史の上では、西日本の繁栄の中心を、旧石器時代=出雲、縄文時代=日向(南九州)、弥生時代・古墳時代=近畿となる(p295)

2025年5月23日読破
2025年5月23日作成

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2025年05月23日

Posted by ブクログ

 この本は、地質学的なスケールで日本の縄文時代の始まりについてとても興味深い話を綴っている。なぜ出雲の国が日本の中心だったのか、前々から不思議に思っていたのですが、黒曜石などの鉱物資源が新石器時代を切り開いたと考えれば納得できる。現在では雨や雪が多い日本海側が文明の中心というのは腑に落ちないのだが…
 また負けた諏訪大社が勝った鹿島神宮よりも全国的に崇拝されてきた理由やら伊勢神宮がなぜ天皇陛下の祖先を祀るのかとか様々な疑問を解くヒントがいっぱい出てくる。そう言う意味では多くの人に是非読んでほしい本である。

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2025年04月25日

Posted by ブクログ

⭐︎4.7
オーディブルで、聴き始めて、面白いので紙の本をポチッとしてしまった。
珠たま(石 黒曜石)・水銀・鉄文明にとって1番影響を及ぼしたのは、鉄であることは間違いないが、石器時代において、、火山と断層が作り出した、温泉や断層による一筋の道、またそこから採掘される翡翠や黒曜石といった石はその国の力になっていたのは間違いないと云うことを、知ることができた、また出雲大社の大国主が海と対峙していることが、参拝者の方を見るのでなく海と対峙していることの意味も腹落ちした。氷期から温暖期にかけての海面侵蝕がどれほどおそろいいものだったかを想像するに、まさに死に至る病のように絶望しか感じなかった当時の日本人の心を支えようとしてそこに鎮座されたのだろうと、考えることもできた。また、同じ石を産出する南米のテスカトリポカ神と日本の神々の待遇の違いも実に興味深く読むことが出来た。
私はどちらかといえば、タタラを生業にしている一族が鉄と水銀をもとに統治してしきたヤマト王権のその「みまほし」と云う一言で持って国を譲らせ、その代わりに古代出雲塔の建設をさせるほどに大国主の荒御霊は激しかったのだと思っていた、だから、国譲りの際の諏訪の大社が実は鉄ではなく珠(石)を珍重していることも、初めて知った。むしろ諏訪は産鉄民だと思っていた。
これは高田崇史氏によるQEDシリーズがだいぶ影響を私に与えているので、この見方のパラダイムシフトも新鮮でした。

一つまだ、文献をあたって自分なりの考えに田ぢ流つきたいものは鉄をキーワードに世界に旅する産鉄民と国家権力の結びつきをもっと真摯に理解を進めていきたい。
あと神は自分が果たせなかったことを叶えてくれると云う定説に出雲は当てはまっているのかと云うことも考えて期待テーマになりました。
素晴らしい書物み巡り会えた。今年暗殺の次に心打たれました、

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2024年11月01日

Posted by ブクログ

火山やその生成物(勾玉とか黒曜石等)、さらに断層が主要神社が作られたということを言いたいようだが、神社が何らかの自然現象(驚異)を祀るということは当然だと思うのだがどうなのだろう。火山や断層という環境も当然あるのだろうがそれだけではないだろう。そもそもこの方は「ひとつのアイデアを思いつきました」とか「と仮定してみると、いろいろなことが腑に落ちる」などと書かれているように、思いつきに無理やり関連事象を結びつけることが多いよう。トンデモとは言わないまでも少々アブナイ議論が多いように思える。
例として、伊豆の三島大社を論ずるときに「コトシロヌシが三島大社の主祭神になったのは、江戸時代の国学者、平田篤胤の主張」(根拠は中世の文献)と述べておきながら、その後では当然のように伊豆とコトシロヌシが関係があったと話を進めている。また諏訪のミシャグジ信仰や守矢氏について触れておきながら諏訪信仰=タケミナカタ神として話を進めているなど少々都合のいいところだけ使っているようである。
かなりいろいろ調べてはいるようだが、抜けているところも多く(細かいところだが伊豆山神社関係で頼朝の二所詣も知らない?)、どうもまともに読むには躊躇される著者のようだ。

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2024年06月24日

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