あらすじ
通学中に痴漢に遭っている女の子を助けた。それは陰キャな福助が片想い中の校内一の美少女……の後ろでいつも大人しくしている少女だった。福助の親友に片想い中らしく、ふたりはモブ同盟を結成するが――?
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Posted by ブクログ
裕時悠示著『彼女にしたい女子一位、の隣で見つけたあまりちゃん』は、
学園ラブコメの王道にありながら、その奥底にある“静かなまなざし”が印象的な一冊。
物語は、「彼女にしたい女子一位」と称される人気者の隣に座る、
目立たない少女・あまりちゃんとの穏やかな交流を中心に進む。
派手な恋愛劇ではなく、日常の中で少しずつ心が通い合っていく過程が丁寧に描かれており、
その静かな時間の積み重ねにこそ、真の青春の輝きがある。
主人公・福助の誠実さと、あまりちゃんの控えめながらも芯のある優しさが共鳴し、
読者は次第に二人の間に流れる穏やかな空気に引き込まれていく。
恋愛というより“人と人との信頼”を描いた物語としても秀逸であり、
互いを急かすことなく、相手の存在を尊重する姿には、現代の人間関係にも通じる深い余韻がある。
また、学園生活の描写も瑞々しく、球技大会などの青春らしい場面が
ストーリーに心地よいリズムと彩りを与えている。
地味な少女に宿る小さな勇気や、彼女を見守る周囲の温かさが、
読む者の心に静かな灯をともすだろう。
“優しさ”という感情が確かに形を持って存在する——。
そんなことを思い出させてくれる、柔らかくも深みのある青春小説である。