【感想・ネタバレ】フローとストック 世界の先が読める「思考」と「知識」の法則のレビュー

あらすじ

本書の目的は、「世の中の具体的な個別の事象を抽象度を上げて連続的に捉えることで、その変化のメカニズムからさまざまな事象を説明し、次に起きる出来事の予想を可能にする」ということです。

本書を読み終えたとき、人間の成長と保守化、組織の栄枯盛衰、イノベーションはどのように起き、抵抗勢力はどこから現れるか、資本主義の未来はどうなるか、そして生成AIは我々の生活をどう変えるか、などの事象に明確な答えが出せるようになっていることでしょう。

本書で細谷氏はまず、「具体と抽象」と並ぶ最重要コンセプト「フローとストック」を提示します。そこで目に見える「フローとストック」の構造はもちろん、目に見えない「お金」や「ルール」などの「フローとストック」の構造までも赤裸々に明らかにされます。

そして、この「フローとストック」を、人間の思考の根幹をかたちづくる「具体と抽象」という考え方にかけ合わせて提示するのが「CAFSマトリックス」。この新しいフレームワークを使いこなし、誰もが日常の事象の先読みができるようになるために、本書はつくられました。

内容例:世の中の大半は「フローとストック」に大別できる/「フローとストック」から見た「水」「お金」「人間」/「所有」という概念が人類に与えたインパクト/精神的な世界も「フローとストック」で説明可能/抽象とは動物が感じない「目に見えない概念」/都合のよい切り取りが生む「認知バイアス」/先人の知恵の流用こそ「具体化」の真骨頂/「CAFSマトリックス」四象限を解説する/なぜ手段はいつの間にか目的化するのか/「陰謀論」にとらわれる人の思考回路/人間の学びのサイクルとアンラーン/いかなる組織も逃れられない「栄枯盛衰」/「技術による世界の歪み」を見つけ出そう……ほか

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Posted by ブクログ

「まずい、このままでは…」
本書を読み進めるうちに、私は焦り、思わずそう呟いていた。

年齢を重ねるごとに、私たちは「陳腐化したストック」の中で生きる時間が長くなっていく。学び、経験を重ね、知識を増やせば増やすほど、それらは“正しさ”の名のもとに積み重なり、やがて私たちの視野を狭めてしまう。もちろん、知識は武器であり、ストックの世界で生きることは、決して悪いことではない。むしろ、論理的で素早い判断力を身につけ、知的な成果を出せるようになる点で、現代社会では大いに求められる能力だ。

だが一方で、そうした「ストック思考」が私たちから確実に奪っているものがある。
それは“新鮮さ”だ。

たとえば人と出会ったとき、私たちは無意識にストックに基づいたフィルターで相手を見てはいないだろうか。
「優しい人は断るのが苦手」、「金髪でサングラスをかけた若者は無愛想」…。こうした“あるある”は、確かに一定の確率で当たることもある。その話を共通認識として他者と共有できれば、共感や安心感を得られる場面もあるだろう。けれどもそのたびに、私たちは目の前の“その人”を、たったひとりの存在として見ることを忘れてしまっているのではいないか?

細谷氏が提唱する「フローとしての具体」という視点は、まさにこの問いかけに光を与える。

本来、人間は子どものころ、誰もがフロー感覚の中で世界を生きていた。「なぜ?」「どうして?」と目の前の現象に純粋な驚きを持ち、全身で世界を感じていたはずだ。そこには知識による枠組みやパターンはなく、ただ目の前で起きていることを“ありのまま”に見る姿勢があった。

この「フロー感覚」を持ち続けることが、いかに難しく、同時にいかに大切か。
私自身、この一年を振り返って、何度このフロー体験を味わっただろうかと思いを馳せた。

目の前の出来事に、知識ではなく感情で反応できた瞬間。誰かの言葉に対し、論理ではなく直感で共鳴できた瞬間。そんな時間こそが、私にとって心が動く、生きている実感のある時間だったのだと思う。

本書の中で「フロー感覚を持てる人は少数派」と述べられている。だからこそ、それを自分の中に灯しておける人は希少であり、価値ある存在なのだと感じた。

知識や経験というストックに支えられつつも、目の前の人や出来事を過去の枠組みに当てはめることなく“今この瞬間の出来事”として受け取る。それはまさに、新鮮な共感を交わせるコミュニケーションのあり方であり、その人ならではの若々しさを維持することに繋がると思う。
フロー状態とは究極的には、「他者の目」からも解放されている状態と言えるのではないだろうか。

あなたの中にもきっとある、あなただけの“フロー感覚”。

それをぜひ、胸の中に留めず言葉にしてアウトプットしてみてほしい。うまく言おう、うまく書こうとしなくていい。ただ、感じたままを自分の言葉で述べること。そうすることで、「面白い」と感じる体験が、いつまでもあなたの心に残るはずだ。

私もこの読後感を、そのままに綴った。
これは、知識ではなく“私自身”のゆらめく感情そのものだ。

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2025年04月29日

Posted by ブクログ

面白すぎた。特に自分の人生にすごくフィットしていて、今,読めてよかったと思った。自分はストック型がメインではあるけど、イノベーションを恐れないし、フロー型の人に対してもアレルギーが出ないタイプなんだと認識した。あらゆる場面で応用ができる抽象と具体をさらに飛躍させて循環しているというものは本当に面白かった。人生において定期的に読んでいろんなものをリセットしつつ整理できればと思った。

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2025年01月17日

Posted by ブクログ

まだ、どう使えばよいのか?がわかりかねているんだけど、
フロー×具体を抽象×フローに型化して、抽象×ストックに定着させる。そして、具体×ストックもラベル化される。
そんなCAFSマトリックスのイメージは掴めたと思う

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2024年09月10日

Posted by ブクログ

具体と抽象を往復することだけではイマイチしっくりこなかったところを、フローとストックという概念と組み合わせてマトリクスにすることで、とても解像度が上がった気がする。
最初の方はまだ理解が及ばずだったが、読み進めて行き個別の事象などに当てはめてみる(これがまさにストックとしての具体)ことで、さらに理解が深まる内容になっていると思う。
CAFSのマトリクスの各象限の大小、CAFSの一方向のサイクル、アンラーニング、自分の思考回路など、考え方としてとても参考になる。

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2024年07月04日

Posted by ブクログ

フローとストック、具体と抽象。そして四分割のサイクルの考え方。当てはまると思う事も多く、共感も出来て面白かった。考え方として覚えておくと、視点が広がる本ですね。

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2025年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

世の中の全ての事象をCAFSマトリックス/サイクルという構造的法則に当てはめて理解する。
①フロー(F)としての具体(C)→ ②フロー(F)としての抽象(A)→③ストック(S)としての抽象(A)→④ストック(S)に縛られた具体(C)
とても明快で納得感があった。

そして、この流れが教師なし学習を行うdeep learningモデルの学習と推論の流れと同じだと気づく。①から②はク特徴量を探し重みづけを行う学習過程、③から④は推論過程といった感じ。

④から①は不連続な変化ではあるが、AIモデルの追加学習が必要なように、人も④から①にサイクルを進める必要性が生じうることを忘れないようにしたい。
人間の思考を構造化するって面白い。

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2025年03月22日

Posted by ブクログ

あらゆる全ての事象を「フローとストック」×「具体と抽象」の枠組みに当てはめ構造理解をする。構造理解のための説明があらゆる事例を用いて説明されている。”例えば”の話が大半を占めている印象。
事象を構造に当てはめることで未来を察知したり、発生する歪みを察知し仮設立てすることがイノベーションに繋がるといったことが活用法として書かれている。新しい視点で馴染みがないので読み進める時には難解に感じたが、読み終わるとあらゆる事象がこの本に書かれる構造でなんとなく整理され納得感に包まれる。
本の中身は構造説明が比較的大きい話で書かれているけど、活用するなら日々業務、小さなルールや規定や恒常化した事柄という範囲で見ると自身でも何か活用できそうな気がした。

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2025年03月22日

Posted by ブクログ

筆者がこれまで提示してきた具体⇔抽象という概念による思考フレームワークの軸に、フロー・ストックという概念の軸を組み合わせたマトリックスによる新たなフレームワークを提示。このマトリックスを動的に用いることにより、世の中で起きている変化のメカニズムへの理解と、将来起こり得る出来事への予想を可能にする。世界を見る新たな視点が得られ、仮説・検証サイクルを回す強力な思考ツールになりそう。

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2024年06月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

感想
日々無数に湧いてくる思考。ほとんどはジャンク。だが輝くものが出現する。蓄積されることで知識となり共有財産となる。次に繋がる。

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2024年04月08日

Posted by ブクログ

思考のフレームワークというと小難しい感じもするが「思考の癖や視点」みたいなものだ。それに当て嵌める事で、物事に気付きやすくなる。いわゆる、旅行の前の持ち物チェックリストみたいなもの。あるいは、先ず自分の責任として考えるか、他人の責任として考えるか、という思考習慣にも似ている。性善説か性悪説か。で、こうした新たな視点を与えくれるのが本書。

ー 本書の主題であり目的は、「世の中の具体的な個別の事象を抽象度を上げて連続的に捉えることで、その変化のメカニズムからさまざまな事象を説明し、次に起きる出来事の予想を可能にする」ということです。そして本書を読み終えていただいたとき、右記の問いに潜む構造的な法則が、手にとるように理解できるようになっていることでしょう。「抽象度を上げて」と記したとおり、人類は抽象化という強力な武器を手にしたことによって、複雑な事象を言語化やカテゴリー化、数値化、デジタル化、モデル化などの抽象化で捉え、数々の理論や技術や解決策を編み出してきました。

具体と抽象の話は非常にわかりやすい。しかし、これにフローやストックの軸を加えると、途端に分かりにくい。何故なら、ストックの具体に関する象限が浮いているからだ。著者はここに無理矢理アノマリー(例外)を嵌め込むが、敢えてこの整理で解説を試みなくても良かったのではないか。

フレームはどうあれ、プロセスとしては〈具体的な事象から、仮説を立て、定説を導き、例外を抜き出す〉という螺旋構造の思考様式を提案したいという事だと理解した。また、日常においては歪みやバグを発見、つまり例外を特定してからのアプローチにも使えそうだ。既にこうした思考プロセスが無意識にも身についている人は多いような気もする。仮説までの推論で日常生活は動くので、定説と例外からのプロセスは学問の範囲にされがち。時間をかけていられないだけ、というのが真理だという気がする。

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2024年11月02日

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