【感想・ネタバレ】つまらない住宅地のすべての家のレビュー

あらすじ

とある住宅地に、刑務所を脱獄した女性受刑者がこちらに向かっているというニュースが飛びこんでくる。路地をはさむ10軒の家の住人たちは、用心のため夜間に交代で見張りを始めることに。事件をきっかけに見えてくるそれぞれの家庭の事情と秘密。だが、新たなご近所づき合いは知らず知らず影響を与え、彼らの行動を変えていく。生きづらい世の中に希望を灯す、ささやかな傑作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

高度成長期あたりに開発されたであろう戸建て分譲地に建つ10軒の家に住む家族と、その近くに出没する脱獄した女刑囚。

それぞれの家族にも囚人にも欠けている事情があって、その背景が判明していくとともに有機的に絡んでいく構成が見事。ミステリーみたいに謎が解けていく感じじゃなくて、要素が影響しあって物語を構築していく感じが面白い。

過剰な振れ幅を抑制するような津村記久子の文体で丁寧に構築されていく物語。特に大きなハッピーエンドはないけど、彼らの明日にが昨日よりマシっぽい明るさが、これまた良いのだ。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

登場人物がかなり多く、入れ替えが多いので途中まで読むのが辛い。しかし、最後は一気に解決まで読めて楽しかった。


一見古臭いつまらない住宅地の近くに、つまらない犯罪で捕まった女性脱獄犯が逃げてくる。
その住宅地の町内会で見張りを行うってことになったのだが、住宅地の色々な家の住民がそれぞれ主人公目線になって少しづつ話が済む。色々な人がいること、その人たちの性格から見たその人たちなりの目線、考えがあることをよく感んじさせるストーリー。 ただこの人誰だっけってなってしまうけど、最後は中心人物が限られてきて引き込まれた

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2025年05月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とある路地を挟む住宅地に住む様々な家族や単身者。濃密なご近所づきあいがあるわけでは決してなく、かといって全くの無関心でいるというわけでもない。
ある時、刑務所を脱獄した女性受刑者のニュースが飛び込んでくる。近辺にやってくるかもしれないと警備のため見張りを始めることに。


読破に時間がかかってしまいました。
一つ一つのお話は短くて難解ではないけれど、いかんせん登場人物が多過ぎて、尚且つ、誰の話かということを冒頭で明らかにしない書き方のため、これは誰だっけ?どんな人だったっけ?とお話が始まるたびに住宅図や少し前の話に戻る、の繰り返しでした。
後半はもう諦めてどんどん読み進め、人物がごっちゃになりつつもなんとか読み終えました。
決して面白くないわけではないけれど、誰が誰かすぐ分からなくなるところや、読みながらこの人の話だったっけ?と余計な推理が入ってしまうところが私の好みではなかったです。

最初はとても遠くに感じていた受刑者がじわじわと近づいて来て、ある時を境にグッと近くにきた感覚がありました。
表向きだけでは分からない、それぞれの家の事情が入り乱れているのだなあと読んでいて思いました。

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2024年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

傍から見ると順風満帆そうなあの家も、実は嵐の中にいたりして。

自分のことに精一杯でリアルな繋がりを面倒くさいと思ってしまう世の中だけど、そのハードルを越えて対話することで知れる一面もある。往々にして私たちは悪い部分だけが脳裏に残りがちだけど、良い一面を知れるのはやっぱ対話だよね。

全く知らないのも怖いし、知られすぎるのもいや。生活の大部分を占めるご近所は、特に適度な距離感が大事なのかも。 

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2025年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

活気がなく、不便で、つまらない住宅地。そこの住人も変わり映えのない日常を送っているが、単調ながらも小さなデコボコはある。
ある日、逃走犯をきっかけにそれぞれの日常のデコボコが干渉しあって大きな波を生んでいく、そんな物語である。

最終的にすべてのデコボコがぴったりハマる感覚が爽快だった。
ある地域の一区画の住人がまるっと登場人物なので読む方もけっこう大変だけど、そんな彼らのいろいろな想い・行動のパズルを完成させた津村さん、すごすぎる。


この小説を読んで印象に残ったのは2つ。
ひとつは、千里の祖母の覚悟と孤独。
逃走犯の事件をきっかけに、人とのつながりを新たに生んだ人、閉鎖的で暗い未来から抜け出そうとしている人がたくさん生まれた。
他人と干渉しないようにしよう、波風立てないようにしようと生きてきた人たちが、ある事件をきっかけに一歩踏み出すきっかけを得たのである。
その中で、改めて孤独に生きる覚悟を強め、変わらないままでいる千里の祖母の姿が相対的に浮かび上がってくることとなり、かなり強い印象が残った。

2つめは、ご近所付き合いってめんどくさいけどやっぱり楽しそうだなということ。
私自身小さい頃はご近所さんとの付き合いもあり、果物やお菓子を分けあったり、困ったことがあれば助け合って生活してきた。
今となってはお隣さんの顔もわからない。
小説の中で描かれた住人同士のやり取りに懐かしさを覚えた。

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2024年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

中盤くらいまでは、登場人物が変わる度に最初のページに戻ってどこに住んでる誰?といちいち確認していた。(正直少し読みづらかった。)

10人以上の人物が主要キャラになっているのに、全部きちんと片付いて綺麗にまとまっていた。
ただ、うまくまとまっているけど、まとまり過ぎ感もある。
そんな何もかもうまいこといかないでしょとはやっぱり思う、、、。

あと、登場人物の子供達は何故か逃亡犯に捕まってほしくないと思っていて、逃亡犯に同情?しているけど、
読んでいて、やはり犯罪者は犯罪者だなーという感想。
一度道を誤ったからなのか、協力してくれた人から無理やり財布奪ったり、人の家の事情も考えずに洗濯物を取ったり。
生い立ちに同情の余地はあっても、犯罪に手を出す程のこととも思えなくて、後半は憤ってしまった。

全体的には、ハラハラもあって楽しめた。

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2024年09月23日

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