【感想・ネタバレ】私たちの近現代史 女性とマイノリティの100年のレビュー

あらすじ

1923年9月1日に発生した関東大震災は、東京近郊に大きな被害をもたらしたばかりか、近代日本の精神にも大きな傷跡と罪科を刻み込んだ。
民間人らによる朝鮮人虐殺や憲兵らによる無政府主義者殺害である。
シベリア抑留体験のある父を持ち、ドラマ・映画化された小説『風よ あらしよ』でアナキスト伊藤野枝・大杉栄と、大震災での彼らの殺害を描いた村山由佳、祖父が関東大震災で殺されかけ、家父長制の色濃い在日家庭に育ち、自らも様々な形での差別を経験してきた朴慶南。
ふたりが、戦争と植民地支配、災害と虐殺が日本人社会に与えた影響、そして、いまだ女性やマイノリティへの差別と偏見が根強く残るこの国の100年を語り尽くす。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

二人の出会いから、関東大震災後朝鮮人(・中国人・アナーキスト)虐殺事件、それに対する否定論、伊藤野枝/『風よ あらしよ』、シベリア抑留/慰安婦/『星々の舟』、女性とマイノリティ、村山さんの恋バナ、男性遍歴、そして物語の危うさと希望まで。マイノリティに対して厳しくなっていく時代のなかで、事実をみつめて、「分かりやすい」(けれど、まちがった)物語=流言飛語にとらわれないようにするにはどうすればよいか。村山由佳といえば、性愛の大衆文学作家というイメージが強いが、意外にもたいへん勉強家で、聡明であることに驚いた。

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2025年01月24日

Posted by ブクログ

村山由佳氏の「風よあらしよ」を読む前に、たまたまこの書を見て爆読。関東大震災時の朝鮮人虐殺の話から、今も続く在日朝鮮人の方々に対する差別、ヘイトなど、また当時から続いている女性差別の構造は、あれから100年たった今でも変わらずにある。だからこそ、女性とマイノリティの人たちがどのように立場に置かれていたかを想像し自身に置き換えて考えてみることが重要であると思った。現在、ジェンダー平等や多様性が訴えられている時代ではあるが、対談者自身の体験や本音も交えた書であり、あらためて自身の考えをアップデートできる書であった。

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2025年01月08日

Posted by ブクログ

最近の政治家のかざす「愛国心」には心底嫌気がさしている。その理由を、この対談のなかでお二人が言語化してくれた気がする。
「過ちを過ちとして認めることからしか、国への本当の思いも生まれない(村山由佳)」「今は、過去の歴史に学ぼうとするような政治家が皆無に近くなってしまって、戦争への警戒心や、ヘイトが悪いことだという意識が弱くなってきているのが、とても恐ろしい(朴慶南)」
↑こういうことを、日本人はもっと重く受け止めるべきなんじゃないかな…。そういう人間としての努力が、日韓関係だけではなく、イスラエルやロシアの戦争に対する解決の糸口になるのだろうと思うのだけど。

猫エッセイや『風よあらしよ』を読んで好きになってしまった村山由佳さん、冒頭で書かれている『愛の不時着』を見たときに去来した思いなど、考え方が私も似ているなぁと思って、とてもよい対談だった。

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2024年08月31日

Posted by ブクログ



 ユーチューブ、佐高信の隠し味という番組で偶々巡り合い一日で読み切った。
 関東大震災100年の2023年の節目に村山由佳と朴慶南対談本である。大正12年の大震災での朝鮮人虐殺、大杉栄と伊藤野枝の虐殺事件、朝鮮人虐殺事件そのものを認めようとしない日本政府、慰霊の追悼文を寄せることを中止した小池百合子知事など。当時の知識人の寺田寅彦の虐殺事件に寄せた否定的な見識、千田是也が震災当時12歳であった時の朝鮮人に疑われた体験、黒澤明が井戸に落書きを貼ったところ朝鮮人が井戸に毒を投げ入れた証だとした住民の流言飛語が飛び交い、朝鮮人、中国人、朝鮮人に間違えられた日本人の虐殺、普通の一般市民が殺人に走る社会状況が如何に醸成されたか訴えている。警察、官憲が流布に加担したことが書かれてます。
  しかし、日本警察の中でも神奈川県鶴見警察署署長大川は狙われた朝鮮人を保護し暴徒と化した日本人を追い払って守った人がいたこと、戦後大川の孫と朴慶南と韓国を訪れ虐殺を救ったことを韓国人の前で、その孫はその事を自慢することなく日本人の行為を謝罪したことなど胸に打ちます。一方で朝鮮人を擁護し守った日本人も多くいたことも書かれてます。今も自然災害も多くネットなどで誹謗中傷、流言飛語が簡単に飛び交う社会で差別を助長することに監視していかなければと思います。
 
 安倍政権は政権の延命のために日本人拉致事件を利用したこと、与党の一部がLGBTQは生産性がないなどと喧伝したことなど、ちょっと左よりかと思われますが、人間の正義が主張されてます。
 村山由佳の文学への立ち位置、三度の結婚での結婚観、人生観が書かれ、直木賞とった「星々の舟」の最終章での慰安婦を取り上げた事などが書かれてます。
 今こそ人文知が必要であること、読書の有要性を訴えてます。

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2024年12月30日

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