【感想・ネタバレ】母の友2024年4月 特集「子育てを“たのしむ”」のレビュー

あらすじ

特集は「子育てを“たのしむ”」です。いろいろ大変なこともあるけれど、“たのしみ”も探ることができたら。保育の専門家、作家、映画監督、産後ドゥーラ、様々な方と一緒に考えます。童話欄は西平あかねさん作「いいもの みーつけた」。「ぼる塾」酒寄希望さんらの新連載も。

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Posted by ブクログ

 「母の友」は、この号から新年度となったことで、新しい連載もいくつか始まり、まずはそれらを紹介していきます。


サントーシマ香さんの
「ヨガでみつめる私の時間」
 こころや体に溜まった緊張を解きほぐし、気分をリフレッシュさせてくれる、やさしいヨガの紹介、初回は「ガス抜きのポーズ」で、やり方はとてもシンプルながら、消化器官を刺激し、抱っこやおんぶで重くなった腰を楽にするとともに、腹式呼吸を使って自己調整力を育む練習にもなるそうです。

絵本作家の元気のもと
「下を向いて歩こう」
 絵本作家の方に『元気のもと』を伺う初回は、まるやまあやこさんで、タイトルからも感じられた視点を変えることによる逆転の発想は、創作にあたって、何も考えない時間の大切さと、長野県安曇野市のアトリエ周辺の自然の恵みの素晴らしさを教えてくれて、特に、オランダフウロの種の創作物が印象的でした。

まめこさんの「トビラをひらく小さな鍵」
 新しいことを始める楽しさを紹介してくれるこのコーナー、初回は「切手のトビラ①」と題して、自分好みの切手を探し出したり、切手貼り絵体験の魅力が紹介されていて、私はう~んって感じでしたが、国別とかジャンル別とかでテーマをまとめたり、素敵なデザインのものがあることや、その手書きが親しみやすいコーナーのデザインの温かさも含め、単純に読み物として楽しめました。

酒寄希望さんの「みたらしの味わい方」
 ぼる塾の酒寄さんの連載、初回は、タイトルの由来についてでしたが、他のメンバーの言葉の引用も含めて、上手いことまとめられる方だなといった印象を抱きました。

園の暮らし
「やまのこだより」
 大阪の河内長野市の端っこ、金剛山の麓にある「観心寺保育園」に通う、子どもたちの愛称『やまのこ』たちの園でのエピソードを紹介するコーナー、初回は塗り絵をやってみたいけど・・・と躊躇いを見せる男の子に対して、大人ではなく、子どもたちのひと言が、彼の背中を押してくれたエピソードには、仲間たちで支え合い、共に生きていく姿を見た思いがして、その様子を雄大な日本画で描いた、きくちちきさんの絵も印象的でした。

連載小説
「線の上のママとぼく」 山崎ナオコーラ
 待望のナオコーラさんの小説、どんな内容かなと思ったら、彼女らしい様々な価値観のあり方を問い掛けるもので、ママの呼び名は「あるがまま」の「まま」って意味のママであることや、漢字で書くと「中田一」と左右対称で美しい、「ぼく」の名前の「一」は、一番じゃなくて、ひとつだけっていう意味があること等、固定観念にとらわれない見方をしてくれるのかと思いきや、それと矛盾することもあったりと、複雑なものもありそうだと思った矢先の意外な終わり方に、連載小説ならではの、どういった場面で続くにするのかといった、そんな次号への期待感をもたらしてくれる構成もいいと感じました。


 ここからは、特集「子育てを“たのしむ”」になります。

 まずは、保育の現場に40年以上関わっている、子育て・保育カウンセラーの井桁容子さんの「子どもを知る楽しみ」より。

 ここで知った主な内容は、これまでの母の友とも重複するものでありながら、それだけ大切なことだということも認識し、そもそも楽しむ気持ちになれない心境として、『子どもを立派な大人に育てようとしなければならない』という、子育てに関する偏った見方による不安やストレスが大きいことが挙げられており、それに対して『元からある大事な特性を尊重する姿勢』を持ち、『機嫌のいい状態でただ一緒にいる、それだけで十分』とのことで、その理由は、『子どもが自分の力を存分に発揮できるのは「安心」しているときだから』であることに、いつも機嫌のいい状態でいるのって、中々、難しいこと言うなと思いつつも、自分が子どもの頃の気持ちに立ち帰ると、何だか分かるような気がする。

 また、私にとって知らなかった知識で目から鱗だったのが、幼い子の方が「味蕾(みらい)」という味を感じるセンサーを多く持っていて、味覚が鋭敏だからこそ、食べものに好き嫌いも出やすい一方、二十歳を過ぎると、それは徐々に減少していくことから、大人になって色々なものを食べられるようになるのは鈍感になっていくからだそうで、子どもの好き嫌いに関しては、あまり気にしない方がいいそうです。

 それから、もう一つ印象的だったのが、『自分だけで何もかもやろうとしない』ことで、世の中には様々な家庭事情があると思われる中で、どうしても頑張らないといけない時もあるとは思う。しかし、それでもといった気持ちで胸を打たれたエピソードが、産後ドゥーラとして活動されている、ひらつかけいこさんの「一緒にやりましょう」の中にあった、『日本には料理の手作り信仰みたいなのがある』意識が強すぎて、夕方、園に迎えに行き、子どもを連れてスーパーへ向かい、重たい荷物を持って帰宅するが、そこで身体も心も動かなくなってしまい、食事を作ることができずに出前を頼み、食材も使いきれず、悔しさで涙することであり、これに対して、やり方は他にいくらでもあるとか言う前に、まずは身も心も安心出来るようなサポートが必要だと感じました。

 そして、それは、初めての育児に於いて、ひらつかさんのサポートを受けた、西加奈子さんの『そんな気持ちを分かってくれる人が近くにいることは、私の心を本当に、本当に軽くしてくれました』という、その人の気持ちを分かってあげられる人の存在であり、ちなみに、西さんのそんな気持ちとは、『果物を剝いてタッパーに入れておいてくれた』ことで、これについて「?」と思った方は、是非本書を読んでみて下さい。

 また、子育てに楽しみを見出すのが難しいと感じている方には、村井理子さんの「たのしい日々は、きっと来る」が、優しく寄り添ってくれると思い、読めば実感されると思いますが、双子という事情もあり、凄絶な内容で、子育てはこんなにも精神的、肉体的に疲弊するものなのかということを感じさせながらの、彼女の言葉『子育てを楽しむタイミングは子どもが幼いときだけではないと思う』に、大きな勇気をいただけると思いました。

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2024年04月14日

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