【感想・ネタバレ】にほんのうた 音曲と楽器と芸能にまつわる邦楽通史のレビュー

あらすじ

YouTube「みのミュージック」で独自の音楽批評をおこない、多くの大人たち・音楽関係者を魅了する著者。

本書では、謡、雅楽、歌舞伎、唱歌、演歌、軍歌、歌謡、JPOP、アイドル、ゲーム、着メロ、ボーカロイドなど、日本で起こった音楽ジャンルの成り立ちを時代を追って浮き彫りにする。

縄文楽器から初音ミクまでドレミに翻弄された歴史をいま解き明かす!

さあ新しい音楽との出合いをもとめて、本書を手に取り、みのと一緒にタイムスリップしましょう。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

みのミュージックチャンネル、みのさんが執筆。
海外の間違った邦楽通史に心を痛め、自らが書きあげました。もう、辞書です。すごいです。
これからもいろんな音楽に触れるたびに、
これを引いて、邦楽通史に肉付けしていきたいと思います。
本書への「広範な討論や批評は養分となり、大樹として幹、枝葉、根を大きくしていけると信じている」
愛の物語です。

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2025年06月28日

Posted by ブクログ

 YouTubeで「みのミュージック」という国内外のロックやポップスの解説動画をよく見ている。みのさんのロックやポップスについての愛と知識が半端なく守備範囲も広いので面白いのだが、ある回では「ペリー来航」と日本の音楽の関係について語っていて、「守備範囲どこまで?!」と驚き、この「にほんのうた」の通史についての本を書かれていることを知った。
 普通、ロックやポップス専門の方なら日本の大衆音楽の歴史として、せいぜい昭和に入ってからの歴史を書かれるのではないかと思うが、この本ではなんと「縄文時代」から始まっている。出土した縄文時代の楽器を博物館から提供された写真を掲載して説明している。そして明治の前まで約70ページを割いて日本の音楽の歴史を書いている。

飛鳥、奈良時代: 国が必要とする音楽のために置かれた「雅楽寮」(うたまいのつかさ)で「国風歌舞」のほか、中国や朝鮮の音楽や舞も伝承された。

平安時代: 民間の間では長歌、田歌、法門歌、神歌などの「今様」と呼ばれる「流行歌」が流行した。今様を好んだ後白川法皇は、今様をはじめとした雑芸の歌詞をまとめた「梁塵秘抄」を編纂した。

鎌倉時代: 踊り念仏が始まり、「盆踊り」のルーツとなった。

室町時代: 「小歌」と「猿楽」が流行った。それらは1518年に成立した歌謡集「閑吟集」に収められている。

江戸時代: 三味線、箏曲、尺八が普及した。東海道などの道の整備や北前船などの海路の整備に伴って、地方の歌が都に伝わり、都の歌が地方へ伝わった。鎖国していたとはいえ、朝鮮や中国、琉球、アイヌとは交流があったので音楽も伝わった。

 そして、明治維新前夜、日本に最初に広く浸透した「洋楽」があった。
 それはペリーの来航でもたらされた「軍楽」であった。当時の日本の上層部の人たちは太鼓のリズムによって軍隊がピッと揃うのを見て、軍隊を組織的に動かすには集団行動を均一に維持するためのリズムの重要性を思い知らされたらしい。
 明治になり、ボストンで大きなコンサートに足を運んだ岩倉施設団も大観衆の興奮ぶりを「愛国心」の強さと捉え、日本で富国強兵を目指すには、西洋式のドレミファソラシドで表す音楽教育が必要だと言う考えにいたり、小学校で無理矢理五線譜の音楽教育を始め、従来の日本の音曲や歌謡(端歌、小唄、都都逸など)は全て「低俗」だと切り捨てられた。しかし、民衆は簡単には変われず、明治10年ごろには女性による義太夫「娘義太夫」が大流行し、志賀直哉や高浜虚子もファンだったそうだ。娘義太夫が語る物語が佳境を迎えると、客席からは拍手と共に熱狂的なファンが「どうする、どうする」と声をかけるようになり、かれらは「常摺連」と呼ばれ、まるで昭和のころのアイドル親衛隊のようだった。
 明治10年代、自由民権運動が始まると民権運動の活動家である「壮士」と呼ばれる若者たちは、政府や警察による干渉を避けるために、演説の一部を歌に変えていった。これが「演説家」つまり「演歌」の先駆けとなったが、昭和のころに登場した歌謡曲の一ジャンルの「演歌」とは全く異なる。最初の壮士節とよばれている「ダイナマイト節」の歌詞を見ると、まるで現代の「ラップ」のようである。やがて添田唖然坊という人によって「演歌」は政治批判だけではなく娯楽にも発展した。社会問題や政治風刺を取り上げた添田唖然坊の歌は1960年代の社会派フォークシンガーへと受け継がれた。
 子供のための歌としては文部省により全曲日本人作曲の「尋常小学読本唱歌」が刊行された。それに対して、鈴木三重吉らが刊行した児童文学雑誌「赤い鳥」に載せられた創作詩に曲を付けた「赤い鳥曲譜集」が掲載されるようになった。ここから「赤い鳥小鳥」「十五夜お月さん」」うさぎのダンス」などの童謡が生まれた。

 明治の終わりまでで163ページ。全体の3分の1だ。
 前書きに「日本の芸術の多くは残念ながら国外から逆輸入的に自信を獲得する傾向があることを指摘したい。つまり、海外の人に褒めていただいて、ようやく自分たちの文化に自信や誇りを持ち始めるのである。」と書かれている。
 ロックやポップスの評論をしているみのさんが、日本の音楽を語るのに、遡れるかぎりどの時代も丁寧に同じ熱量で書かれている訳が分かった。
 私も今の日本のポップスやロックは一重に洋楽の影響だと思っていたが、実は明治時代の「壮志」が今のラップに似ていたり、添田唖然坊という明治後期から大正時代の演歌師が1960年代のフォークシンガーに影響を与えていたりしていたのだ。
もっと時代は下って、日本でエレキブームの始まった1965念仏には阿波踊りをエレキギターで演奏したアルバムも発表されていた。
 時代の流れに沿って読んでみると、日本では「官」が外国に倣い、日本の民衆の音楽は低俗と決めつけたり、「治安が乱れる」といって取り締まったりしてきたが、その圧力に負けずに日本独自のカウンターカルチャーを発展させてきて、今のポップスも技法的には西洋ルーツでも古くからの日本文化を受け継いでいると分かった。だから、日本人はもっと邦楽に自信を持つべきなのだ。
 巻末には膨大な量の参考文献が挙げられている。本当に日本の大衆音楽を学究的に突き詰めて書いた大学の講義みたいな本。
 まだお若いのに、みのさん、リスペクトしてます。

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2025年03月03日

Posted by ブクログ

螺旋階段を登るような平面的には行きつ戻りつしつつ少しずつ上昇する構造は、読み手にそこそこの忍耐力と読解力を求める。
多重構造的な内容を解説する難しさを痛感する一冊だけど、終わって全体を俯瞰すると、とてもよく纏まってて自分みたいな門外漢にはただただ面白い

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2024年03月10日

Posted by ブクログ

YouTuberとで自身も音楽活動をしているみのによる、邦楽通史。

縄文時代から丹念に邦楽史を書いているのは素直に素晴らしいと思う。
反面、自分が知ってる現代の邦楽において欠かせないバンド(YMOやBOφWYなど)が名前しか出てこないのは物足りなさを感じた。
色んなアーティスト(これも90年代以降の表現だけど)が並列で出てくるのは良いけど、圧倒的に影響力を与えたミュージシャンはもっと大きく取り上げても良いのではないか?

本人も言ってるように、これがたたき台になって今後邦楽史がさらに整備されることを願う。

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2024年05月09日

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