【感想・ネタバレ】相撲を見る眼のレビュー

あらすじ

土俵人格論を展開した尾崎士郎の随筆集。筆者の厳しくも暖かい眼差しは、相撲の隅々に行き渡り、一人一人の力士を限りない愛情で活写する。行間から、拍子木の冴えた音、呼び出しの声、立ち合いの厳し気合いが滲み出る。〈解説〉山内昌之
・著者の尾崎士郎は、大正9年の栃木山・朝潮戦観戦を機に、無類の相撲愛好家となり、双葉山70連勝を阻んだ安藝ノ海戦も観戦している(本書にも当時の回想あり)。晩年は横綱審議委員にもなり、角界のご意見番的存在であった。
・著者のスタンスは、土俵に躍動する力士への思慕であり、力士個人とは一定の距離を保つ、その姿勢が文章に客観性と高潔さを生み、読者を自然と相撲の魅力に気づかせてくれる。
・当代「大の里」の四股名は、昭和初年の大関大の里に由来しているが、その「大の里」を忘れがたき力士として一章割いていることは特筆される。
・底本には、ベースボールマガジン社刊(1995年)では除かれていた3章分を含む東京創元社版(1957年)を使用する。

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Posted by ブクログ

 大相撲九月場所を観ながら読んだ。尾崎士郎が相撲観戦に通ったのは昭和二年頃からということなので、関東大震災復興後の初代国技館と、蔵前国技館ということになる。生で観戦するほかには、新聞などで試合の展開を知るしかない頃の尾崎士郎にとって、相撲というのは少年時代には自分でとるものであり、大人になっても文士同士でとりつづけつつ、国技館に通いつめて観戦し続けるものでもあった。そんな著者の相撲観の変遷は「跋」(pp217-219)にさらりと書かれている。本書におさめられた文章は、土俵から国技館の外、東京の街のなかにまで広がり、浜町や柳橋あたりまでを描く。相撲というものが都市において持っていた存在感を感じることができる。

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2025年10月12日

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