あらすじ
すべては三沢の地からはじまった――。競馬記者の小林は、異色な経歴の競走馬トナミローザに興味を持つ。取材を進めるうち、日本で初の民間洋式牧場が青森の三沢にあった事実や、歴史の狭間に埋もれた偉人・廣澤安任の存在を知る。さらに、敬愛する寺山修司との意外なリンクも。競馬黎明期からの血統を継ぐトナミローザ、その陣営の真の狙いも次第に明らかに。時を経て連なる人の想いは海をも越えて一頭の競走馬に託される。史実に基づき、日本競馬の未来を照らす物語。「寺山修司没後40年記念認定事業」の一冊!
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Posted by ブクログ
二刀流、競馬で何のことかと思った。
大谷なら打者と投手。
平地と障害のことで、しかもG1.
また大好きだった寺山修司のこともふれられていて楽しく読むことができた。
Posted by ブクログ
明日6月1日はダービー・デー。
今年で第92回だが、第100回を観るまでは生きるのが当面の目標。
久し振りにこの作者さんの競馬ミステリー、6冊目。
作者さんも色々と調べていると思われるが、血統にハマり出すと沼から抜け出せないだろうね。“サラ系”を扱った前々作「ノン・サラブレッド」も興味深かったが、本作もまたなかなかニッチなところから始まるものだ。
今回は、青森県にあった日本で初の民間洋式牧場に導入された種牡馬の血統を継ぐトナミローザという3歳牝馬を巡るお話。
「ダービーパラドックス」や「ノン・サラブレッド」にも登場した競馬記者の小林が同僚・高橋とともに東京と青森・北海道を行き来しながら陣営の思惑を探る。
歴史の狭間に埋もれた偉人・廣澤安任や、少年時代を三沢に暮らし記念館も残る寺山修司のことも織り交ぜながら語られる話は、実際に作者さんが辿った道筋と思われ、今回もまた興味深い。
寺山の報知のコラムを集めた「競馬場で逢おう」をまた読みたくなったなあ(BOOKOFFにて入荷待ち)。
物語はと言えば、平地のGⅠ勝った後に障害のGⅠを目指すなんて話はファンタジーに過ぎて、あまり語る言葉を持たず。
オジュウチョウサンが開成山特別に出た時は皆注目したし、有馬記念のファン投票も盛り上がったが、逆のケースはどうなんだろうか。
フローラSやローズS、エリ女を勝つような馬に中山大障害を走らせようとは、いかにオーナーブリーダーが描く血統のロマンとは言え、なんか間尺に合わないような。
とは言え、障害から平地へという下剋上的な話は手垢がついているようにも思うし、話としてはこっちのほうがハラハラするのかも。
確かにレースの場面には結構手に汗を握らされ、それになり面白く読んだのだな。今回もまた、大甘で★4つ。
Posted by ブクログ
競馬において、ファンは予想というよりも夢想、妄想し、そこに競馬の面白さを感じるという側面がある。
また、ほかの本のレビューでも書いたが、競馬の面白さとして、馬が人の思いを乗せて走ることにある、と書いた。人の思いを乗せて描かれる物語が、その馬の血統とも言える。
本書においては、一頭の、なんと平地と障害の二刀流を目指すという馬の、ある一頭の祖先馬から、受け継がれてきた血脈、即ち人の思いや、馬と絡み合う縁が実にファンタジックな妄想力でもって、魅力的に、またミステリアスに描かれていて実に面白く、読み応えがある。
馬に乗せる、馬に絡む人の思い、馬に見る妄想、そうした競馬の面白さを描いた素晴らしい小説でした。