あらすじ
名所から穴場まで、おばけの伝説地を目指して西へ東へ!
“あの”名コンビ+αが、全国各地に点在する伝説地を訪ね歩く。
茨城の旧家に受け継がれてきた「河童の妙薬」を譲り受ける。
鬼のスーパースター・酒呑童子と茨木童子の出生地を探して新潟へ。
高い山が少ない房総半島で、あえて天狗を訪ねる。
『稲生物怪絵巻』の舞台・広島には京極夏彦氏も参加。
江戸の七不思議から「妖怪」を七つピックアップ。
国道16号沿いに分布するダイダラボッチ伝説を強行軍で巡る。
伊豆大島に伝わる民間信仰「日忌様」の謎を追う。
九尾の狐と殺生石を求めて栃木と福島へ――。
ときに手を取り合い、ときに罵り合い、一喜一憂しながら「妖怪馬鹿」が各地を廻る。
妖怪ライター・村上健司による探訪記&妖怪研究家・多田克己による解説で、ゆるく、深く楽しめる!
今日からあなたも妖怪旅おやじ!?
雑誌「怪と幽」創刊号から続く人気企画が待望の書籍化。
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Posted by ブクログ
2020〜21年頃、判で押したように「同じ時期、同じ場所」へ修学旅行に行っていた当地の小学校も路線変更を余儀なくされたと聞いた。
コロナ禍のためである。
中止にするのはしのびないが、人が大勢集まるところに子どもたちを連れて行くのはリスクが高すぎるという判断で、学校により時期もまちまち、行き先は近場の史跡がある場所などになったようだ。
テーマパークを楽しみにしていた子たちはさぞやがっかりしただろうが、先生たちにとっても苦肉の策だったはずだ。
一方で、"地元の史跡"みたいな場所には(近すぎて)あまり行かないもので、この体験をきっかけにして「車で2時間ほど走ればこんなに面白い場所があったんだなあ」と感じた子もいた、かもしれない。
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本書は、妖怪好きなら誰もが知るお二人プラス「怪と幽」編集者氏の珍道中を綴った一冊である。
ただし、コロナ禍のため(あと多分予算の関係もあって)「遠出はできない」という縛りの中、都内からまあまあ離れずに行ける妖怪関係のあちらこちらを訪ねる、という趣向。いきおい、範囲は関東圏内という感じになる。
そして、妖怪関係の場所はいっぱいあるのだ。
みんな大好き河童の傷薬伝承の地からはじまり、おじさん3人が(一般人から見ると)不審な振る舞いを炸裂させつつあちこちをうろつき、熱く議論したりするのである。都内でもそこここにある"七不思議スポット"などは、全てが妖怪に関係する場所でないため厳選しければいけなかったようだが、その地に古くから伝わる伝承などを丁寧に紐解いていくと見えてくるものも多くあるようで、興味深い。
編集者氏が多田氏(「多田」って入れたら予測変換で「克己」が表示された我が辞書!)の奇行を期待する場面も含め、珍道中としか言いようのない妖怪旅が繰り広げられる模様が面白すぎる。淡々と綴る村上氏の文章も面白い。多田氏のマニアックすぎるコラムはマニアックすぎて妖怪成分が薄い私にとっては、ちょっと置いていかれる感も。
道中合流する京極御大の姿に「おお"妖怪馬鹿"再演か!?」と期待したけど案外あっさり。笑
元々関東者の私にとって、足を伸ばせる範囲内にいろんな妖怪関係の場所があったんだなあもっと早く知りたかったなあ、と思わせてくれる一冊だった。
また、時代の流れとともに伝承の場所がわからなくなっていたり、人の手が入らなくなって荒れ果ててしまうなどの残念な記述もあり、諸行無常を感じた。
妖怪好きならぜひ。ただ、コロナ禍真っ只中の大変だった時期が思い返され、苦い気持ちが蘇る方もいるかも。
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私の地元には、今から知ってみるとけっこう面白い歴史的な地域があるらしい。「ブラタモリ」で、タモリさんが自分がよく知る場所に興奮している姿を見て、ああ知らないって勿体ないことなんだなあとも。
コロナ禍は本当に大変で、つらい思いをした人もたくさんいた出来事だったが、そんな機会でなければ県内の史跡を訪れる機会がなかったかもしれない小学生たちのうち、かつてその地に生きた人たちの営みに関心を持つ子が生まれてくれたらそれもまたひとつなのかもしれない、と思っている。
Posted by ブクログ
村上先生の妖怪スポット本には大変お世話になっている。妖怪大好き、聖地巡礼·フィールドワーク楽しい!というオタクにはかかせない情報をくださるので手放せない。
その村上先生と、多田先生、編集者による妖怪珍道中。奇行?謎発言?の多田先生、それに文句のある村上先生。
途中京極御大も参加しているのだが、強行軍が過ぎて居たか居ないか…御大の本のインパクトとはまったく間逆な影の薄さ。これは帯のキャッチコピー詐欺なのでは…。
とまれ、現地での調査でしかわからないこと、現地の人との交流で得られる知られていない情報など、生のフィールドワークならではの発見や楽しさが読み取れて楽しい。
本で知識を得るのはもちろん重要だが、現地を歩くこともまた重要というのがよく使わってくる。
久しぶりに妖怪めぐりでもしようかなろ…というアウトドア?な気持ちになった。