あらすじ
藤原道長の圧力に屈する形で三条天皇が譲位し、中宮・彰子の実子である敦成親王が後一条天皇として即位する。道長はついに摂政の座に就き、彰子も名実ともに「国母」となった。ほどなく道長はその座を嫡男の頼通に譲り出家し、表向きには政の表舞台から身を引く。そんな世相を尻目に、紫式部は自分の代わりに娘の賢子を彰子に出仕させ、『源氏物語』の「宇治十帖」を書き続けていくが、これは紫式部が道長に仕掛けた最後の“戦い”だった。好評平安王朝絵巻三部作、感動の最終巻!
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Posted by ブクログ
こちらも最終巻となりました。
一条帝と定子の間に生まれた敦康親王を天皇としたかった彰子と紫式部、そしてあくまでも外戚として孫を天皇にしたかった道長の長く目に見えない争いはこうして決着をつけることになるんですね。彰子は定子が亡くなってから敦康親王を自分の手で育てていますし、その辺りは物語と歴史にあまり差異はないとも思えたりするところが何とも~。
そして、『源氏物語』も『雲隠』の章へ。この辺りの作者の遠藤さんの解釈がとても面白かったです。
ここで話がずれてしまいますが、ご容赦を(;^_^A
光源氏が死に至る物語『雲隠』本当に書かれたのか? 存在したのか? 私が最初に読んだ谷崎潤一郎訳の『源氏物語』では巻名だけあって、本文がないと記されています。一番直近の角田光代さんの翻訳では解説で『雲隠』のことをこう称している。
【『雲隠』には本文はない。空白である。あまりにまばゆすぎて、私には顔がみえない、見上げた太陽のようにただの白い光に思えた光君がぽっかりと空白にのみこまれる】
『雲隠』が本当に存在していたかのか、いまだに決定打はありませんし、写しを重ねてきた以上途中で紛失したり、改変されたり、災禍で失された可能性もあるでしょう。研究をされる人は確たる証拠(例えば和歌など)がなければ、それは存在しないものとされますので、今後どこからか出てくるかもしれませんし、それは後世の研究者の方々にお任せしたいと思います(*^^*)
感想に戻ります。
そして、光源氏の華やかな出家の様子を描かれることを願った道長も年老い飲水病(糖尿病)で亡くなり、彰子は六代もの天皇を見守り、紫式部は出家することもなく亡くなります。
この『源氏物語』は彰子と紫式部が道長と戦うために描かれたもの。ですが、その物語を読みたいと願った一人の少女が最後を締めくくってくれます。天皇の妻になるよりも『源氏物語』を読む方がずっと素晴らしいと。
彼女の書いた日記は今も私たちの手の届くところに存在しています。(更級日記です)
まだまだ、『源氏物語』に関する資料も積読山にはいっていますし、そろそろ『伊勢物語』も読みたいと思ってます(*^^*)
日本人ならば一度はと思って手に取って読んだ『源氏物語』はこうした作品たちにも出会わせてくれた、世界を広げてくれた大事な物語にいつの間にかなっていたのだなと思いつつ、本を閉じさせていただきました。
Posted by ブクログ
面白かった!!!そしてこれで完結。寂しい。
源氏物語ミステリ
出てくる物語にミステリーがあるんではなくて、
『源氏物語』のミステリを解くという遠藤QED本とでも言ってええと思う。
なぜ「雲隠」の本文がないのか!!それは!!
とかねぇ、そういうところよ。良き。
ほんと、私の思うところと非常に合致するので
ストレスがほんとにフリー、ゼロ、なしなんである。
そう、単に好き、としか言いようがない。
世に
色々な書き手の描く源氏と色々な紫式部の話がある
まあ、どれも面白いが、好きなのも嫌いなのもあり、
どれだけ自分の持つ紫式部像に近いか、というのが
ツボ(笑)。そう、好き嫌いだもの。100%主観よ。
その中でこれだけ好きなのに出会えると、感謝しかない。
彰子&紫式部VS道長
俗物魔王道長の見苦しい最期がこれまたすばらしい。
宇治十帖執筆のところもたまりませんな。
いやはや、また1巻から再読しようと思う。