あらすじ
『幽世の薬剤師』の著者によるどんでん返しミステリ!
かつて信者が集団で自殺した宗教団体「科学の絆」に潜入した探偵の新道寺。聖女の天祢の〈万象観〉による事件解決を目にするが。
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Posted by ブクログ
まず、作品自体はミステリとしてとても魅力的な構造を作ろうと試みていて面白かった。
以下、ネタバレありで引っかかりを感じたことについて
・「第2章 氷結魔法事件」と真相について
ダミーの犯人である剛田は、ガラス像が冷たいと犯行時刻からあまり時間が経っていないことが明らかになってしまうため、ガラス像を砕いた
最終章における真相では、本当は0時頃に殺害し、ガラス像も外に出していた。これにより、そのまま放置すれば常温となってしまい、用意していた剛田犯人説と矛盾するため、ガラス像を砕いた
冷たいから砕いた→常温だから砕いた
ここでは砕いた理由の逆転が発生している
このあたりに引っかかりを感じた
本来であれば、ガラス像が常温であることは容疑者圏外に逃れることにつながり、犯人にとって有利な状況になる
ミステリとして見た場合、本来は容疑者がどうやって犯人候補から逃れようとしているのかを読者側は考えるわけだけど、この場合犯人側が自身が犯人である根拠を残すためにそうしたという推理をする必要がある
共犯であり、なおかつ自身が犯人とされることを受け入れている剛田という存在がこの奇妙なロジックの前提にある
このあたりのねじれた構図に引っかかりを感じているのかも知れない
また作中の論理に則ったとしても、二人であればガラス像を運べるとした場合、天袮と樹里の共犯説もあり得ると思うのだけれど、暗黙の了解としてこちらの可能性は除外されている
・共犯について
本作に限った感想ではないけれど、共犯がありになるだけで、作中で出来ることが一気に増え、様々な可能性を考慮する必要が出てくる
また、共犯がありならば、それこそ二人に留まらず三人以上の共犯の可能性もあり得る
(作者の恣意性が強くなってしまう?)
古今東西で納得のいく共犯が真相のミステリは存在するのか?
本作の場合、自分が犯人であることを受け入れ、さらにはその後に自殺する共犯者という、だいぶ特殊な共犯者であることを想定する必要がある
なんやかんやと引っかかる部分はあるけれども、最終章でこれまでの事件全ての真相が覆されるという構造は誰もが一度は夢想したくなる大変魅力的な構造であり、そんな魅力的だけれども難易度が最高に高い構造をどんな形であれやり通した本作の試みを賞賛したい