あらすじ
外科医の才所准一は、大阪で海外富裕層向けの自由診療クリニックを運営している。
抗がん剤・免疫療法の趙鳳在、放射線科の有本以知子、予防医学の小坂田卓という優秀な三人の理事とともに最先端のがん治療を提供し、順調に実績を重ねていたところ、久しぶりに訪ねてきた顧問が不審死を遂げる。
これは病死か事故か、それとも――。
高額な治療費への批判も止まず、クリニックに吹き荒れる逆風に、才所はどう立ち向かうのか。
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Posted by ブクログ
題材的にとても面白い。
医療は国民に公平にあるべきだ、というマスコミの主張に対して、医療だってビジネスと捉えれば投資をして利益を出すというモデルも全く違反でもなくあっても良いのではないか?ということ。
惜しげもなく設備投資をして、お金持ちの命を救ってしっかりと儲ける。それ自体はおかしくもなく、マスコミと対決をしながらもストーリーは進んでいくのだが。
我が身を守るために実は…ということが後半になって少しずつベールが剥がされていく。
途中までは主人公に感情移入しているのだがあれよあれよという間に展開が変わっていき、金儲けもたいがいにしろ、とう気持ちになってしまう。
お金がかかる最新医療とさらに進んでまだ完成されていない医療技術をどう使うか、問題提起だ。
Posted by ブクログ
途中、色々追求されていくのが怖くて、飛ばし読みをして読み終わった。
ずっと良い人が、追求されて可哀想だなと思っていたら、まさかの悪い奴だった…
悪い奴だと分かってたら、ドキドキしないで読めたのにな。
Posted by ブクログ
最初は難しい医学用語が飛び交い読みにくいかも…と思っていたけれど、物語が進むに連れてぐいぐいと引き込まれていった。末期癌の患者に真実を告げるべきか希望をもたせるようにするべきか…大きな石を心の深いところに投げられた気分になった。ひさしぶりに小説を読んで考えさせられる作品に出会った。そんな1冊。
砂の宮殿はタイトル通りの話だった。
Posted by ブクログ
海外の富裕層向けに、自由診療で高い水準の医療を提供する「医療ツーリズム」の功罪をベースにおいたミステリー小説。
大阪のりんくうタウンにある医療ツーリズム施設「カエサル・パレスクリニック」の理事長・才所准一は、優秀な3人の理事とともに、最先端のがん治療で順調に実績を重ねていた。だが、久しぶりに訪ねてきた顧問の福地が不審死を遂げてから、波風がたち始める。
死因は病死か事故か、あるいは他殺か。福地は元大学の解剖学教授で才所の恩師。その後、「府立病院機構」のトップとして君臨、才所は、開業に際し、便宜を図ってもらっていた。だが、そんな恩義がある反面、顧問料として多額の見返りを要求するなど、強欲で扱いにくい人物だった。
そんな折り、才所は、海外患者を斡旋するシンガポールの金持ち華僑ドクター・リーから約10億円でブルネイ王室の王女のがん治療をしてほしいという依頼を受け、了承する。
その後、顧問の不審死や怪しげな仲介者との取り引きを巡って老練なジャーナリスト・矢倉が動き始める。
彼の切り口は海外富裕層への超高額”詐欺“治療と日本の皆保険制度を脅かす金儲け主義の医療ツーリズムへの批判。利益率の高い海外患者を優先することで、日本人患者の治療が後回しにされ、医療の公益性、公平性が損なわれ、経済格差が命の選別につながるというのだ。
矢面に立つ才所は、日本の医療の高度化や医療面での国際貢献という立場で弁明する。だが、巧妙に仕組まれた矢倉との討論会で、論破するつもりが、クリニックの新たな疑惑を指摘される結果となる。
屈辱感を味わった才所だったが、今度は、クリニックで手術を受け、順調に回復中だったブルネイ王女が原因不明の劇症肝炎を発症、危険な状態に陥り、究極の対応を迫られる。さらに、才所と特別な仲にある女流舞踊家・雅志乃の身体にも異変が生じるなど、次々と逆風が吹き荒れる。福地の妻は夫の死因をしつこく追及し、3人のスタッフとの関係もギクシャクしだし、次第に亀裂が生じる。才所にとって、神経をすり減らす日々が続く。
起伏の激しい怒涛の展開で読み手はどんどん引き込まれていく。
一方で、ミステリー性とエンターテイメント性にこだわったためか、才所の人物像に首尾一貫性が感じられなかったのが残念な気がした。
ステージⅣの宣告を受け他の病院で見放された患者をひたすら救おうとするヒューマニズムと、高度な頭脳を持ち合せたヒーロー的なイメージを終盤、一気に崩す展開はすっきりしなかった。
ただ、才所ががん告知をしたことで父は希望を失い、がんの真実を知らせなかった雅志乃が不信感から、それぞれ自ら命を断ったという設定は心に重く残った。やはり、がん告知が人によって受け止め方が違うのは現実的で、医者も苦労するところであろうと感じた。
Posted by ブクログ
2023/03/17リクエスト 3
大阪で海外富裕層向けの自由診療クリニックを運営している才所准一。
才所は得意のダ・ヴィンチ手術、抗がん剤・免疫療法の趙鳳在、放射線科の有本以知子、予防医学の小坂田卓と4人理事体制で実績を作ってきた。
久々にクリニックを訪ねてきた恩師であり、便宜も図ってもらった福地が不審死、その後も、つきまとうジャーナリスト矢倉もシンガポールで殺される。
このあたりで、潔癖症の有本以知子が何かに感づき、趙も才所の裏側に気づき、ふたりとも退職する。
トリプルcが15年位前に実用化されていたらな、と思った。完全でなくてもいいから。
真実を告げられ自殺する人、真実を告げられなくて自殺する人、これはどんなに優秀なドクターでも悩むところだろう。