あらすじ
厳重な警戒態勢を潜り抜け、高価な宝石類を略奪して日本中を荒らしまわる、まぼろしの怪人。次々と姿を変えては行方をくらまし、正体も隠れ家も謎のままだった。そしてとうとう、警視庁の敏腕警部、等々力宛の犯行予告が届く。クリスマスの夜、警察の威信を賭けた闘いに、現場にあらわれたのは……? 神出鬼没、大胆不敵な大泥棒に、探偵小僧・御子柴進が等々力警部や敏腕記者の三津木俊助らとともに挑む、傑作ジュブナイル。
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Posted by ブクログ
顔を変幻自在に変え、宝石などをいただくと予告すると、何でも必ず盗んでしまうまぼろしの怪人。探偵三津木俊助と、新聞社に務める探偵少年御子柴進がまぼろしの怪人の犯罪予告を阻止しようとするが…。
横溝正史の青少年向け推理小説。明らかに乱歩の怪人二十面相と明智+少年探偵(小林君)をモチーフにしたストーリーである。
乱歩の二十面相は、絶対に殺人だけはしないというのが売りであったが、まぼろしの怪人が現れるところでは往々にして殺人事件が起こる。しかし、その殺人は本当に宝石などを盗むためのものなのか?
催眠術などの、科学的(?)トリックも散りばめつつ、時にはまぼろしの怪人も逮捕したりと起伏が激しいので、子供向けの探偵小説と言えど、なかなか飽きさせないという意味で、本作は成功している。
一方で、本来殺人が起きないはずのシチュエーションで殺人が起こってしまったり、盗むものが一様に宝石であったりと、作者の悪ノリやめんどくさくなっている部分も垣間見えてしまう。
怪人二十面相という下敷きがあるがゆえの難しさについては、割と楽しんで書いているんじゃないかなと思わせる部分も多く、始終描きたいというモチベーションが感じられるのは良かった。