あらすじ
「痛いやんけ……」エリート官僚・稲田は、故郷の奈良で車を走らせていたところ一頭の鹿を轢いてしまう。慌てる稲田をよそに鹿は草むらに隠れ繰り返し呟き始めた。その声は高校時代の親友・市田理一郎の声だった。
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奈良県が大好きな筆者が名作文学作品たちを現代の奈良を舞台にパロディ化した短編小説です。
奈良県民が日ごろからお世話になっている某私鉄や某銀行など、奈良ネタがふんだんに詰め込まれていて、20年以上奈良に住んでいた私は思わずニヤニヤしながら読み進めてしまいました。
奈良ネタが詰め込まれたパロディ小説ときたら、ご当地勘がある奈良県民にしか面白くないのでは?という印象を持たれるかもしれませんが、そんなことは全然なく、誰でも楽しめる作品が勢揃いです。
「ガチの昔。竹取の翁といふ陽キャありけり」というインパクトが強すぎるひとことから始まる『ファンキー竹取物語』、「社畜となって長く膝を俗悪な上司の前に屈するよりは、ユーチューバーとしての名を死後千年に残そう」として鹿になってしまった主人公が登場する『若草山月記』など、奈良県で生活したことない方も気になってしまうような作品が盛りだくさんなのです...!!
奈良県が好きな方はもちろん、古典作品や近代小説の有名どころのアレンジ部分に気付けて楽しく読めちゃうので、文学作品が好きな方、クスッと笑いたい方にもオススメの一冊です。
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
タイトルから『今昔物語集』にある話の奈良県アレンジ版だと思っていたら全然違った。
『走れメロス』や『竹取物語』など有名日本文学作品を奈良県の話としてパロディ化した短編集だった。
本当に有名どころが揃っているので、誰でもある程度粗筋を知っている作品が多いのでは。
勿論元ネタを知らなくても読めるが、知っているとアレンジ部分に気付けて楽しい楽しい。
作品ごとに文章の書き方も変えていて、技が細かい!
元ネタに文体も限りなく寄せておきながら、絶妙に奈良かつ現代アレンジが効いていて凄い(現代ばかりではないけれども)
特に『竹取物語』ぶっ飛んでいて最高でした。
最後の「知らんけど」に死ぬほど笑った。
と言いつつ、個人的にはシリアステイストの『大和の桜の満開の下』が一番好きでした。
元ネタ作品からすると、芥川や宮沢賢治推しなので『三文の徳』や『うみなし』も好き。
ナラムボン、耳に残る……元ネタ忘れそうになるほど。
シリアスやしんみりした話もあるが、基本的にはコメディでラストもきちんとオチがあって笑える話。
実際にあった騒動を交えた話もあって、読んでトラウマが蘇った人もいるかも。
色々な楽しみ方、感じ方ができるお話だったと思う。
奈良が好きな方も、元ネタの文学が好きな方も、とにかく笑いたい方も、是非是非。