【感想・ネタバレ】相続人はいっしょに暮らしてくださいのレビュー

あらすじ

遺産を受け取る“ささいな”条件とは?

突然ふってわいた祖母の遺産相続に戸惑う佳恵。
バラバラだった家族に遺されたのは、簡単には受け取れないものだった――
『殺した夫が帰ってきました』の著者が描く、期限付き家族の物語。

高三の夏、一人暮らしの佳恵に、突然、祖母・雅子の相続話が舞い込んだ。
既に他界した母に代わって相続することになったのは、現金と猫。しかも受け取るには、他の相続人と暮らすことが条件だという。
そこには借金まみれの義理の伯母・利沙子、女装姿の叔父・幸太郎、そして遺言執行人で雅子のハトコ・環がいた。
訳アリの四人と猫一匹が厄介な相続に奮闘する疑似家族ドラマ。

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Posted by ブクログ

10/11頃発売。
ゲラ頂きました。

「相続人はいっしょに暮らしてください」
桜井美奈 祥伝社文庫

「殺した夫が帰ってきました」がうちの店でものすごく売れる!ので、
ゲラを頂いたら、
いや、すごく面白かった。

うちの店って若者中心なのね。
「うちで売れるってことは、スピード重視でシンプルな感じの、超軽め作家さんなのかなー」
と、ちょっと高をくくっていたのですが(失礼…でも多いんだもん…)

読んだら
「えー、ポスト原田マハでもいいのでは〜」
(こういう比喩もちょっと失礼かなと思いつつ。)
くらいに、
物語とキャラクターの魅力を伝えるのが抜群に上手い、読みやすいけど心に残る作家さんでした。

0
2022年09月30日

Posted by ブクログ

あなたは、『相続』に興味があるでしょうか?

う〜ん、この質問は人によりけりというところがあると思います。そもそも『相続』できそうなものなんて全くないという方もいるでしょう。さらには、『借金の方が多い』というまさかの場合には大急ぎで『相続放棄』の手続きをとらないととんでもない目にあいかねません。

一方で、そんな『相続』の対象は、必ずしも『現金』とは限りません。『土地』や『建物』、『ダイヤモンドの指輪』のような宝飾類も可能性としてはありそうです。では、『私が相続するものって何ですか?』という問いにこんな答えが返ってきたとしてらあなたならどうするでしょうか?

 『猫です』、『ニャーと鳴く猫です』

  (*˙ᵕ˙*)え?

この作品は、突然の『相続』の連絡に集まった四人の戸惑いを描く物語。そんな四人が一つ屋根の下で暮らす様を見る物語。そしてそれは、『遺産を受け取る』ためにさまざまな試練を課せられた四人の悲喜交々を見る物語です。

『他人に期待なんてするものじゃない』と、『小学校五年生』のころに実感したのは主人公の花城佳恵(はなしろ かえ)。そんな『「他人」の筆頭にくるのが「実父」』だと思う佳恵は、『現在は「期待していない」ではなく、「まったく信用していない」になっている』と実の父親のことを思います。『鍵がかかる学習机の一番上の引き出しにしまっておいたはずの現金が封筒ごと消えていた』現実を前に『油断してた…』と愕然とする佳恵は、『パチンコか、競馬か、女の人か…あ、また怪しい投資話って可能性もあるかも』と理由を推測します。これまでも、さまざまな場所に隠したお金を持っていかれた佳恵は『どうやって生活しよう…』と困惑します。そんな時、玄関のチャイムが鳴ります。『裏の松永だけど…』とやってきたのは『アパートの大家である松永』でした。『お父さん、ずっとここには住んでいないよね?』、『あのね、お家賃のこと』、『もう一年ももらってないんだから』と話す松永に何とも言い返せない佳恵。そんな佳恵に、松永は『出ていって欲しいの』、『お父さんのところへ行けばいいじゃない。あちらには、お義母さんもいるんでしょう?』と詰め寄ります。『あそこは私の家ではありません』、『父のところへは行けません!』と返す佳恵に『じゃあお家賃払って』と言う松永。そんなところに『うちにいらしてください』と『四十代半ばくらいの女性が』割り込んできました。『紺野環と申します』、『親戚です』と語る女性は『白い封筒を取り出』すと、佳恵に渡します。『花城佳恵様』と書かれた封筒の裏に『弓浜雅子』という祖母の名前を見る佳恵に『生前に用意されていたものです』と語る環は、雅子が『五月の末に』『腎臓ガンで』亡くなったことを説明すると『急なことで申し訳ないのですが、佳恵さんに来ていただけないかと思いまして、お迎えに参りました』と続けます。それに『どうしてですか?』と訊く佳恵に『遺言書の公開の立ち会いをお願いしたい』、ただし『相続人は複数いますから、佳恵さんが一人で相続するわけではありません』と説明する環は、『佳恵さんが相続するには、まず屋敷に来ていただがなければなりません。それが遺産相続の条件の一つです』とも話します。そんな説明を聞いて『自分に遺されたものは何なのか』、『現金だろうか。それとも何か思い出の品だろうか』と気になる佳恵は『私が相続するものって何ですか?』と訊いてみます。それに『猫です』、『ニャーと鳴く猫です』と答える環は、『ここでは説明も難しいので、ひとまずお越しください』と話します。
場面は変わり、『亡くなった雅子のハトコだと』いう環に連れられ、新潟へとやってきた佳恵が家へと入るとそこには『二人の女性』がいました。『アンタ、麻美の娘?』、『名前は?』と凄んできた一人の女性。一方でもう一人の女性は『中性的な顔立ちで、首には喉仏があ』ります。そんな中、『では、これから雅子さんの遺言書を読み上げたいと思います』と、語り始めた環は『遺言者弓浜雅子は、本遺言者により次の通り遺言する…』と『遺言書』を読み上げます。そんな『遺言書』の内容に戸惑う三人と環が『相続が終わるまでは全員、この家で暮らすこと』という『遺言』に従ってひとつ屋根の下で暮らす『家族ごっこ』な物語が始まりました。

“高三の夏、一人暮らしの佳恵に、突然、祖母・雅子の相続話が舞い込んだ。既に他界した母に代わって相続することになったのは、現金と猫。しかも受け取るには、他の相続人と暮らすことが条件だという。そこには借金まみれの義理の伯母・利沙子、女装姿の叔父・幸太郎、そして遺言執行人で雅子のハトコ・環がいた。訳アリの四人と猫一匹が厄介な相続に奮闘する疑似家族ドラマ”と内容紹介にうたわれるこの作品。一軒家を見下ろすか如く一匹の『猫』が圧倒的な存在感で描かれている表紙にまず目がとらわれます。

では、まずはそんな『猫』からこの作品を見ていくことにしましょう。私は2019年の暮れから読書&レビューの日々を送ってきました。今までに950冊以上の小説を読んできましたがそこで驚いたのは『猫』が登場する作品がとても多いということです。『犬』が登場するものもありますが、圧倒的に『猫』が勝つという印象があります。恐らく『猫』好きな作家さんがそれだけ多いということなのだと思います。そんな中でこの作品は表紙にこれだけ目立つ形で『猫』が描かれていることから、どんな風に描写されていくのだろうと『猫』を飼ったことのない私も興味がわきます。上記した通り、この作品では主人公・花城佳恵の前に現れたハトコの紺野環とこんなやり取りをするところに『猫』が登場します。

 佳恵: 『私が相続するものって何ですか?』

 環: 『猫です』、『ニャーと鳴く猫です』

おおよそ『相続』という言葉とは縁遠い存在でもある『猫』ですが、『法律上動物は”物”扱い』ということから冗談でもないことがわかります。そんな『猫』こそが、亡くなった祖母が飼育していた『リネン』という猫になります。

 『リネンは白・茶・こげ茶の三色の三毛猫だ』。

なるほど、表紙のイラストそのまんまです。ではそんな『猫』の描写を見てみましょう。

 ・『パッとリネンの目が開いた。今の今まで寝ていたはずなのに、タンタンと軽い足取りで、タンスの上にのぼってしまった』。

 ・『握っていた手のひらを開いて、リネンの顔の前に出すと頭が動く。リネンの鼻がヒクヒクとしたかと思うと、利沙子の手を舐めた』。

数多の小説にはもっともっと『猫』を前面に出した作品があります。この作品の『猫』の表現は、この程度しかなく、表紙の印象ほどには登場せず、『猫』の登場を楽しみにされた方には少し肩透かしかもしれません。この点は補足しておきたいと思います。一方で、この作品は表紙に大きく描かれた『猫』ではなく、表紙に書かれた書名の「相続人はいっしょに暮らしてください」に読みどころが集中しているのです。

では、この作品の中心を占める『相続』についてみていきたいと思います。そのためには、まずはこの作品の登場人物をご紹介しなければなりませんね。

 ● 『相続』に関係する四人の登場人物と弓浜雅子の関係性
  ・花城佳恵: 17歳。通信制の高校に通いながらアルバイトの日々を送っていた
    → 雅子の娘の麻美の子供が佳恵 → 雅子の孫

  ・弓浜利沙子: 48歳。短大を卒業後、水商売。仕事を転々とし無職。
    → 雅子の二人目の夫の娘 → 雅子の義娘

  ・弓浜幸太郎(ひまり): 34歳。元教師で現在は塾の講師。”おねえ”キャラ。
    → 雅子の息子

  ・紺野環: 44歳。遺言執行者。看護師だが現在は無職。
    → 雅子のハトコ

雅子が遺した遺産の『相続』に関係することになるのがこの四人ですが、その関係性は極めて希薄であることにまず気づきます。そのため四人はお互いを知るところからスタートすることになります。では、そんな四人に雅子はどんなものを『相続』しようとしているのでしょうか?

 ● 四人の登場人物が『相続』を予定しているもの
  ・花城佳恵: 『猫』のリネンと、『一、花城佳恵に現金千五百万円を相続させる。相続金は一括ではなく、進路決定後、毎月一定額渡すものとする』

  ・弓浜利沙子: 『二、弓浜利沙子に、以下の不動産のうち、遺言者の所有する持ち分を相続させる。(1)土地… (2)建物』

  ・弓浜幸太郎: 『三、弓浜幸太郎に、以下の遺産を相続させる。遺言者の自宅にある三・五カラットのダイヤモンドの指輪』

  ・紺野環: 『遺言執行者としてすべての遺産相続の完了を見届けること。その期間内の生活費として、一か月十万円、さらにすべてを終えたあとに支度金として百万円』

雅子は大枠で以上のような『遺言書』を残しました。一見、金額的には孫の佳恵の『千五百万円』が目立ちますが、利沙子の『土地』、『建物』の方が考えようによっては巨額です。一方で幸太郎に『相続』される『ダイヤモンドの指輪』というものも『三・五カラット』という大きさが気になります。物語では、お互いに他者が『相続』するものと自らが『相続』するものを比較して、さまざまに疑念を抱く姿が描かれていきます。また、それぞれの『相続』の内容にも一癖二癖あることも描かれていきます。これはなかなかに面白いです。『代襲相続』や『相続税』、そして『相続放棄』など『相続』に関する、なるほどそうなんだ的事項も織り交ぜながら物語は四人の悲喜交々を描いていきます。

そんな物語を作っていくのは、同じく『遺言書』に記されたこんな文章です。

 『相続が終わるまでは全員、この家で暮らすこと』

そうです。『相続』において、ライバル同士とも言える面々が祖母がかつて暮らした家、利沙子が『相続』することになる家で暮らすことになるのです。実質一人暮らしをしていた佳恵と違って、元々近くに住む家のある、利沙子と幸太郎はこの指示に戸惑います。『市内に住んでいるのにわざわざ?』という疑問は当然のことでしょう。しかし、一緒に暮らすことが『相続』の条件である以上従わざるを得ません。物語は、一つ屋根の下で『家族ごっこ』を演じる四人の生活を描いていきます。

この作品は最後に〈エピローグ〉が設けられた四つの短編が連作短編を構成しています。それぞれの短編には、四人の登場人物に順番に一人ずつ視点が移動し、これまでの人生と『相続』することになるものについての背景事情、もしくは思いが描かれていきます。冒頭で触れた通り、17歳の佳恵は、母・麻美を幼くして失うも、アルバイトで稼いだ給料を勝手に持っていってしまうというとんでもない父親に苦労させられながらも東京のアパートで実質的な一人暮らしをしていました。『千五百万』という大金はそんな佳恵にとっては助け船ですが、一方で雅子が飼っていた『猫』の『リネン』も『相続』することに戸惑いを覚えます。雅子の二人目の夫の子である利沙子は『夢見がちで金のない男に惹かれる』という一方で、『噓をつくし、筋なんてぐにゃぐにゃだし、信念なんてものはほとんどない。その日を楽しく生きて、苦労はしたくない』という思いの中に人生を生きてきました。そんな彼女は『建物』と『土地』を『相続』することになりますが、まさかの試練が待ち受けています。そして、幸太郎は、『外出するときは男性の格好』をし、『本当に女性になりたいというのともちょっと違う』という思いの中に”おねえ”としての人生を生きています。そんな幸太郎が『相続』する『ダイヤモンドの指輪』にもまさかの裏事情が隠されています。三人三様の戸惑いを見せていく一方で、一番の謎と言えるのが『遺言執行者』の紺野環です。雅子のハトコという四人の中では最も関係性が遠い環は何かしらの謎を抱えています。環とは何者なのか?これもこの作品の奥行きを深める役割を果たしています。そんな物語は、四人が『一緒に暮らす』ことで、新たな繋がりが生まれていく様も描いていきます。そして、『相続』の行く末が描かれていくその結末。そこには、「相続人はいっしょに暮らしてください」と雅子が願ったことの意味を思う、そんな物語が描かれていました。

 『何よりも謎なのは、雅子が四人で生活するようにと言い遺したことだった』。

『相続』の条件に『一緒に暮らすこと』と指定された面々が一つ屋根の下で生活する様が描かれるこの作品。そこには、遺言者・雅子の生前の思いを感じる物語が描かれていました。とんがったキャラの饗宴に最後まで面白く読めるこの作品。”ミステリー”としての面白さも併せ持つこの作品。

『相続』するための条件設定の絶妙さに思わず唸る、桜井美奈さんらしい”ミステリー”を感じる、そんな作品でした。

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2025年04月07日

Posted by ブクログ

遺産相続したいなあ。そういう当てはないけど。
いろんなこと想像しながら読み進められた。

秘密を抱えた遺言執行人のおばさん。男依存症のおばさん。人としてどうかしてる父親をもち、自分の意思を諦めた高校生。親との確執に縛られたおじさん。それと愛想のない猫。
個性豊かな四人と一匹の同居生活がさまざまな困難を経て人を優しくしていく。
これ、ドラマか映画にしたら面白そう!おばさんとおじさんのやりとりがコミカルで笑えそう。

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2024年01月18日

Posted by ブクログ

つい最近、『殺した夫が帰ってきました』を読んだばかり。全然違う。こちらは温かい。色々事情のある人々が集まってきているが、最後には“家族”を考えさせてくれる。婚姻届けを出せば、家族にはなれる。血は繋がっていなくとも、遠い親戚でも一緒に住めば家族と呼んでいいのではないか。遺産相続、働かずに舞い込むお金はどう扱えばいいのか、しっかり考えた上で受け取らなくては。

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2023年03月18日

Posted by ブクログ

猫が好きで猫があまりにも可愛かった。
正直それだけで手に取った本でした。

まさかあの、殺した夫が。。。の作者の方とは
気づきませんでした。
その作品は読ませて頂き、とっても
面白くて印象に残っています。
その作者さんだと読む前に知って
急に興奮!笑

そしたらもう〜!面白い!

全てのキャラクターが憎ったらしいのに
愛くるしい。

続編が読みたいです!

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2022年11月12日

Posted by ブクログ

遺産相続をめぐる、家族の話。

花城佳恵、高3の夏。
浪費家の父が家を出たまま帰らず、家賃も払っていないと判明、大家に出ていくように言われて困っている時、親戚と名乗る女性・紺野が現れた。
亡くなった祖母の遺産相続のために、来てほしいという。
祖母の家には、借金まみれの義理の伯母・利沙子、女装している叔父・幸太郎、祖母のハトコで遺言執行人の紺野環がいた。

佳恵が相続するものは猫。祖母が飼っていた三毛猫のリネンです。他にお金もありますが。
それぞれに違うものが遺贈されました。
ただし、相続の条件は、みな一緒にここで暮らすことだと。

親戚といっても、これまで会ったこともなく、血のつながりも薄い。
一緒に暮らすことを望んだ祖母の真意は?
それぞれに遺されたものにも、一癖二癖あって‥
やがて、祖母の思いが明らかになってゆく。
猫はそれほど出てきませんけど(笑)
面白く読めました☆

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2025年04月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初はバラバラだった相続人達が色々な出来事を経て少しはまとまって行く話

最後は家はそのままで暮らすのかと思ったがそれは無かった

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2024年05月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうしようもない父親をもつ女子高生が遺産相続に巻き込まれ、癖のある擬似家族と暮らすことになる話。
いろんな意味で出てくる人たちにイラッとさせられますが、最終的に家族よりも家族にまとまって、強く生きられるようになってよかったです。

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

本屋さんで表紙に惹かれて思わず購入
「殺した夫が帰ってきました」の作家さんの作品だった

母と死別
父はお金にだらしがなく居場所も分からない
高校生の佳恵は1人暮らし
佳恵の前に母の代わりに祖母の遺産相続する話が舞い込む
相続は猫と現金
相続の条件は他の相続人と暮らすこと
借金まみれの義理の伯母の利紗子
女装姿の叔父の幸太郎
祖母のハトコの環
訳あり4人と1匹の相続に奮闘する疑似家族ドラマ

祖母がなぜその物を相続人に残したのか
理由が明らかになった時に
祖母の本当の思いや愛が私達読者にも伝わる

この登場人物達は不器用
だからこそ人間らしい
虚勢を張っているけれど本当は寂しがりや
でも愛をたくさん求めている人達

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2023年02月05日

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