あらすじ
九州の静かな港町で叔母と暮らす17歳の少女、岩戸鈴芽。
ある日の登校中、美しい青年とすれ違った鈴芽は、「扉を探してるんだ」という彼を追って、山中の廃墟へと辿りつく。
しかしそこにあったのは、崩壊から取り残されたように、ぽつんとたたずむ古ぼけた白い扉だけ。
何かに引き寄せられるように、鈴芽はその扉に手を伸ばすが……。
やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
その向こう側からは災いが訪れてしまうため、開いた扉は閉めなければいけないのだという。
―――星と、夕陽と、朝の空と。
迷い込んだその場所には、すべての時間が溶けあったような、空があった―――
不思議な扉に導かれ、すずめの“戸締まりの旅”がはじまる。
新海誠監督が自ら執筆した、原作小説!
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Posted by ブクログ
この物語はすずめが失ったものを取り戻す物語。実際は失ったように見えていただけで、失ってなどいなかったけど。そのことに気がついたから常世で幼き日のすずめと邂逅した時に「あなたは、光の中で大人になっていく」という言葉が出たのだと思う。本作は、物語中ではすずめが何かを失うということはないが、過去の出来事にずっと囚われ続けていて、そこから抜け出せずにいる為、どこか自分を蔑ろにしてしまうすずめの痛々しさを感じたし、草太にも似たようなものを感じられた。「大事な仕事は、人の目に見えない方がいい」という言葉は、草太の性格を象徴するものだと思う。似たもの同士だ。
Posted by ブクログ
新海誠監督の手によるノベライズ。映画を先に観ていたので、思い出しながら読み進めた。宮崎に住む女子高生、鈴芽は一人の男に出会う。草太は廃墟であの世と繋がる扉を封印する「閉じ師」。要石に変えられた草太を元に戻すため、鈴芽は旅に出る。新海監督らしく語彙や形容詞をふんだんに使い、感覚などをうまく表現しているが鈴芽の恋愛的な感情の描き方は微妙。母親への想いや環の鈴芽への想いは秀逸に描けているが、監督自身が娘を持つ親だからだろう。男性キャラクターの話し方や感情は申し分ないが…。映画をそのまま小説化しているので、どちらだけでも十分楽しめる。
Posted by ブクログ
映画を見て、小説も購入しました。
文章はちょっと気になるところもありましたが、映画の追体験のような感じで、映画を見た人なら楽しめる小説だと思いました。
映画を見たときは、どうして「戸締まり」というタイトルにしたんだろう?閉じ師が出てくるからかな?としか思っていなかったのですが、このお話は、全体を通して主人公のすずめが、自分の人生のひとつの区切りとして、自分の中にある1つの扉を閉めて、新しい道に進んでいくということを意味しているのかなと小説として文章になることで考えることができるようになりました。
扉を閉めるというと何かが終わるようなイメージが強いですが、それは外の世界に歩みを進めていくという意味もあると思います。扉を閉めるのと開けるのは違う動作のようで、同じ動作なのかもしれません。
すずめが新しい世界に「いってきます」をするために必要な「おかえりなさい」=戸締まりをする作品なのかなと感じました。
Posted by ブクログ
すずめの戸締まりの展示展があったから
急に読みたくなってきた
映像は見たことがあってとてもよかった。
小説にはすずめの心情が細かく書かれていた。
サクサクと読めた。
1日大切にして、思い切り楽しんでいこうと改めて思った。
過去が辛くても前に向くことが大切であることを学んだ。
また読み直そう。
Posted by ブクログ
映画を見ないままだったが、話題作なので遅ればせながら読んでみた。
東日本大震災という重いテーマをファンタジーにして爽やかに描き切るのは見事。
幼い頃に震災で母を失い言葉にできない心のわだかまりを、高校生になった少女が自分を探しにいく成長物語。
Posted by ブクログ
映画でダイジンの件が納得できなかったので、救いを求めて小説へ。
すずめの内省が少し見えたのでそこはよかった。でもやっぱり、最後の方にもう一度、ダイジンたちに想いを馳せるシーンが欲しかったなぁ。
Posted by ブクログ
当たり前ではあるけれどストーリーは映画と一緒。違う点を上げればすずめの過去が少し深掘りされたことと内情がわかりやすかったところ。特に小説はほぼ完全にすずめ視点で話が進むので、事細かな内情描写も書かれているけれど、半分資料化するくらまで情報が書いてあるので、ほとんど映画と一緒に見る用に作ってあると思う。
純粋にすずめの戸締まりという物語の感想を言うなら、結構面白かった(というよりも趣深い)。この話で一番印象に残るのは東日本大震災を取り扱ったことだ。あれから10年経ったわけであるけれど、未だにその傷跡は日本に残っているし全然センシティブな話題である。これには賛否両論色々あるけれども、それでも圧倒的に人気が出ているのは、明確に東日本大震災について言及していないことと地震というものについてただ訪れてしまうものとしか描いていないからだろう。すずめの戸締まりの話の中では地震はみみずという意志を持たない穢れの集合体が引き起こしており、それが常世から現実へと出てくるのを防ぐために、日本の二箇所に要石を設置することで常世と現世を区別している。そしてその要石というのは神様であり、人は平穏な生活を送るために神の恩恵を受けいている状態だ。そして神様はみみずを抑えてあげている一方で、なら人間(すずめと草太)はどうしているのか、みみずという脅威に対処し自身の過去を乗り越えているのだ。これは勝手な解釈であるけれども、この話には地震の被災者に向かっての励ましを込めているのではないかと感じる。常世が人によって見え方が異なっており、すずめの場合は被災時の故郷だったのはすずめの心はまだその時に囚われているからではないのか。最後に子供の頃のすずめと成長したすずめが出会ったのは未来とは希望であり、そしてみみずという脅威を対処することで、人は悲しい過去も乗り越えられると伝えたかったのではないかとこの作品を読んで感じた。