【感想・ネタバレ】殺人者の白い檻のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 短編ミステリの雄、長岡弘樹さんの長編第2作だろうか。『風間教場』と同様、250p程度で長編としては短めだが、内容は極めて濃密だ。

 優秀な脳外科医である主人公の尾木敦也は、6年前に両親が強盗に襲われて亡くなって以来、スランプに陥っていた。そんな中、敦也は刑務所から緊急搬送されてきた囚人の手術を命じられる。手術後、彼が知った囚人の正体とは。

 その囚人とは、敦也の両親を殺害した罪で死刑が確定した、定永宗吾であった。設定だけでも凄い。定永は、死刑確定後も一貫して殺害を否認していた。敦也と妹の看護師長・菜々穂は、リハビリを通して過去に、定永に向き合うことになる。

 死刑囚のリハビリという特異なシチュエーション。病状が回復すれば、結局は死刑執行される。付き添ってきた刑務官も、回復を望んでいないのが興味深い。自身が死刑執行を担当するかもしれないのだ。いっそこのまま亡くなってくれれば。

 遺族である敦也だが、医師としての腕だけでなく、職業倫理も高いようだ。妹の菜々穂も。理学療法士とも連携して「仇」のリハビリに取り組むうちに、彼の観察眼が何かを見抜きつつあった。ちょっとした違和感を積み重ねていくと…。

 定永が熱心にリハビリに取り組みだした理由とは。その分野のプロフェッショナルではない自分に、そんなことがあるのかはわからない。短編の長岡作品でも、やや飛躍を感じることは多いが、それでも唸らせる手腕は長編でも変わらない。

 短編の長岡作品には、長編にアレンジできそうなネタが多い。本作はさすがに短編には収まらなかったか。それでもコンパクトにまとめているのはさすがである。もっと長くできたはずだが、この長さだから読者に強く訴えてくる。

 敦也の勤務先の院長もなかなかの狸だが、定永を担当させてリハビリをする意図があったのか。物騒なことを言いつつ、院長にはわかっているのだろう。敦也は医師の責務を果たすと。この終わり方は実に心憎い。また長編も書いてほしい。

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2022年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2022/07/31リクエスト 4

刑務所のすぐ隣にある総合病院に勤務する脳外科医の尾木敦也。彼はもう医者を辞めようと休職していた。
そんな休職中のある日、院長の直々の依頼により、刑務所からクモ膜下出血で搬送されてきた「スペ患」の執刀をすることになる。
緊急開頭手術で命を救うことはできたが、スペ患の正体が両親の命を奪った死刑囚・定永宗吾だったことを知る。
尾木はその命を医者として救ってよかったのか悩み続ける。
当の定永は、逮捕と死刑の判決以降も自身の犯行を一貫して否認していた。
術後のリハビリを通して、尾木と妹の看護師長・尾木菜々穂は、定永という人間を観察ていたところ、ベテランのPT(理学療法士)村主に引っかかるところを見つける。
両親を殺したのは、死刑囚の定永ではないのではないか…

尾木の妹の菜々穂は、村主とお互い憎からず、というより、結婚も考えるような間柄だったにも関わらず、白紙に戻す。
そんな中、村主が脳梗塞で目の前で崩れ落ちる。
本当の、両親を殺した村主の命を救っていいのか、またもや執刀医は尾木になり…
院長にかなり難易度の高い手術だから、とほのめかされるも、やはり成功させてしまう。
その手術の最中、父から受け継いだ、
「脳外科の手術の時、患者はわかっていないかもしれないが、手をにぎること、それにより奥深いところで伝わる」
その役割を任せたのは、妹の菜々穂だった…

最後にこういう展開になるとは、思っていなかった。
いい意味で裏切られた作品です。

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2022年08月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遺族が犯人の主治医となるミステリー。

短編では、わざとらしい薀蓄とオチが直結するので鼻白むことがある著者ですが、長編だと薀蓄が伏線やヒントになるのでうざく感じることはありませんでした。
そのためか、どんでん返しもなく、真相が少しづつ明らかになっていくところは好感が持てました。
短編のオチらしさっぽいラストの余韻の残し方に著者のいやらしさが透けて見えますが、多少感動させていただきました。

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2023年08月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった。
半分くらいで、犯人も結末も予想できてしまうが、一気に読める。
冤罪に気づく病い、真犯人を特定する手法、事故死した父と入院してきた息子など、散りばめられたネタはむしろ短編向きなのでは、と思った。

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2022年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

死刑囚とその命を助けた医者、そしてその因縁、確かに興味深い。

しかし、読み進めていくうちに、だんだん明らかになる真相と疑問。
少しご都合主義的なストーリーだったが、それでも一気にやめられすに読む。
そして、結末は余韻というのだろうか・・・

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2022年09月11日

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