あらすじ
室町時代から続く名家・榊原家。当主の道山が亡くなり、家の古い習わしから孫の俊彦に多額の遺産が相続されるはずだった。しかし俊彦はその権利を放棄。なんとか夫を翻意させようとする妻の景子だったが首尾よくいかず、そればかりか謀略の果てに義姉を死なせてしまう。ところが放置した死体が忽然と消えてしまい――。死体を隠したXは誰か。真相は闇に葬られてしまうのか。それとも……。遺産相続をめぐる本格ミステリ!
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Posted by ブクログ
室町時代から続く名家・榊原家。当主が亡くなり、古くからのならわしで孫の俊彦が多額の遺産を受け継ぐ筈だった。
幼少期からお金に苦労してきた景子は、ボンボンの俊彦との玉の輿結婚を夢見てやっと結婚に漕ぎつけたのに、蓋を開ければ俊彦は生活能力は皆無、おまけに遺産放棄をすると言い出した。何とか遺産を貰おうと説得するが、ガンとして譲らなくて…
遺産を巡って熾烈な戦いを繰り広げる俊彦以外の面々。そして、殺人を犯してしまう景子に更に、犯人Xは景子が殺した俊彦の姉・史穂の遺体を隠し、それを黙っている代わりに追加の殺人を依頼。二転三転するストーリーがジェットコースターの様で一気読みでした。
主役だと思っていた景子が、実は脇役なのもとても意外で、犯人Xの完全犯罪、見事でした。
Posted by ブクログ
少し前の時代のミステリなら3章で終わってたかも。4章があることでもう一捻りしてすっきりできるのは、そういえば、『閻魔堂沙羅の推理奇譚』シリーズでもそうだったと思い出した。予想外の展開に翻弄される景子の運のなさには同情し(マーフィーの法則みたい)一緒にハラハラするけれど、傍で見ているぶんには、そこが面白いところ。七星重工や榊原家で心理的安全性が確保されていれば、凋落することなく、悲劇が起きない未来もあったかもしれない。俊彦みたいな鈍感天然キャラは、案外どんなところでもうまくやっていける。朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』の甘露寺を連想した。大家族での遺産相続にまつわる殺人事件といえば、横溝正史『犬神家の一族』を連想したけれど、大抵の人が思い浮かべるようで、解説にも書かれていた。仮に『犬神家の一族』が倒叙ものだったらどんなものになるだろう。
Posted by ブクログ
タイトルから入って手にとったものの著者が若そうで世代ギャップで楽しめるか不安に思いながら読み始めたけれど面白かった。本格ミステリというには簡単に殺人が起きたりするのでタッチは軽いけれどそれがかえって読みやすくそして最後のオチも納得できるものだったので読後感も悪くなかった。前半は景子の身になって俊彦にイライラさせられてばかりで景子を応援したくもなったけれど殺人まで犯してこのまま逃げ通せても腑に落ちないしと思ったまま後半へ。第4章で凛の視点で結末が語られているが母親の死の真相までも分かっているのか曖昧だけれど。竹中刑事は20年前の殺人までも迫っているがそこは闇に葬るというこれも読者にも味方につけた形だったかもしれない。