【感想・ネタバレ】「日本列島改造論」と鉄道 田中角栄が描いた路線網のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

まず私の生まれは旧新潟3区であり、田中角栄を選出した選挙区である。私が中学生のときに政界は引退しており、原体験としてはほとんどないのだが彼の正・負両面の遺産を感じながら育ってきた。大学時代に「日本列島改造論」を古本屋で買って読んだのも覚えている。昨今、JR各社のローカル線の赤字が改めてクローズアップされている。コロナ禍が拍車をかけた面もあるのだろう。今年は日本の鉄道開業150年の節目でもある。そんななかふと見つけたのがこの本だった。

田中角栄の持論は特に地方では赤字でも鉄道は維持するというもの。その思想は当然「改造論」にも反映されていた。

だが国鉄の末期は赤字路線の廃線が相次ぎ、彼らが主導した上越・東北新幹線開業の後から、JRになり整備新幹線の計画は一時的に停滞する。その後、長野、九州、北陸、北海道など開業はしたが、東京への集中が進み、在来線は第三セクターとなり地元民にとっては不便なものになり、貨物輸送の柔軟性も奪われつつある。災害時には最後の点はクローズアップされる。彼の思いとは逆に「国土の均衡ある発展」とは逆に向かっている面は否定できない。

筆者は最後に、「鉄道を平時のビジネス感覚のみで捉えるのではなく、非常時にも機能させるべき公共の社会資本と考えるならば、財政面も含めた公的機関の関与や制度の充実は不可欠」と説く。国鉄の国鉄民営化とJRの誕生により効率性優先で生活が豊かになるという「正」の面ばかり見てきた世代には戸惑う面があるかもしれない。だが、今なお交通政策に影響を与えている角栄の主張を通じ、改めて鉄道とは、公共交通とは、社会資本とはを考える好機になると痛感した。

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2022年08月16日

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