【感想・ネタバレ】長期腐敗体制のレビュー

あらすじ

衰退途上国から脱け出すために――。
なぜ、いつも頭(トップ)から腐るのか!?
不正で、無能で、腐敗した組織が続く構造的理由を、レジーム分析を続ける政治学者が剔抉する。

悪徳の三拍子がそろった時代。
不正=間違った政治理念を追求。ないしは、その理念に動機付けられている
無能=統治能力が不足している
腐敗=権力を私物化し、乱用している

第二次安倍政権以降の状況は「体制」と呼ぶ方が的確だ。
体制とはトップが入れ替わっても権力構造が基本的に変わらない状態を指し、個人名に重きを置く政権とは違う。
長期腐敗体制と化していった要因を洗い出し、シニシズム(冷笑主義)を打ち破る術を模索する。

■日本は腐敗した衰退途上国だ
■エリートがしっかりすれば国がうまくいくわけではない
■前線だが最前線ではない、という日本の位置
■日本の戦後レジームの本質は朝鮮戦争レジーム
■日米の「価値観の共有」は空洞化している
■前提からおかしかった「デフレからの脱却」
■リフレ派も反リフレ派も勝者ではない
■中曽根は対米交渉カードをみずから放棄した
■冷戦秩序への回帰は不可能だ
■維新の会とデモクラシー
■二〇一二年体制と近代国民国家の終わり?

【目次】
序 章 すべての道は統治崩壊に通ず――私たちはどこに立っているか?
第一章 二〇一二年体制とは何か?――腐敗はかくして加速した
第二章 二〇一二年体制の経済政策――アベノミクスからアベノリベラリズムへ
第三章 二〇一二年体制の外交・安全保障1――戦後史から位置づける
第四章 二〇一二年体制の外交・安全保障2――「冷戦秩序」幻想は崩壊した
第五章 二〇一二年体制と市民社会――命令拒絶は倫理的行為である
あとがき
参考文献一覧

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Posted by ブクログ

ネタバレ

白井聡さんの新書。
深堀TVの番組見て手に取った本。戦後からの日本政治の流れを大枠で把握する意味でもすごくわかりやすかった。

インデックスは以下
 序章 すべての道は統治崩壊に通ず - 私たちはどこに立っているのか?
第1章 2012年体制とは何か? - 腐敗はかくして加速した
第2章 2012年体制の経済政策 - アベノミクスからアベノリベラリズムへ
第3章 2012年体制の外交・安保保障Ⅰ - 戦後史から位置付ける
第4章 2012年体制の外交・安保保障Ⅱ - 「冷戦秩序」幻想は崩壊した
第5章 2012年体制と市民社会 - 命令拒絶は倫理的行為である
あとがき

著者は、2012年から始まった安部政権以降の政権を「2012年体制」と呼び、「政権」ではなく構造的な「体制」だと論じる。たしかに、その後の菅・岸田政権も、結局は安倍政権のコピーでしかない。岸田氏は宏池会なのでちょっと違う路線に見えるが、安部政権時代の官僚をそのまま登用しており、方針にたいした違いはない。安倍政権以上に方向性が定まっていないし。就任してから約1年間、ほぼ何もやってないもんな、この人。。

この本を読んだ数日前に安部氏は殺害された。
そして、現在のメディア(・・と言っても私はテレビは見ていないが)は安倍礼賛を繰り返しているらしい。おそらく神格化され、過去の実績(政策の是非、森友・加計、桜を見る会などの問題)を正当に評価する者はマスメディアではほぼ居なく(居られなく)なるだろう。

この本に書かれている2012年体制で行われていたことは、日本をさらに「劣化」させた。元々劣化してたので、さらに止めを刺した、と言えなくはない。そして、著者もこの本で何度も語っているが、これは「安倍晋三」個人の問題ではない。この2012年体制は「現象」に過ぎず、本当の原因は一番最後の章で語られている、国民自身の「劣化」にある。それは、古くは小泉政権から始まり、2012年体制でも実施した「B層マーケティング」が結実した姿なのかもしれない。

しかし、5章に書かれてる日経ビジネス(2021年12月27日号)の分析結果は衝撃的だったな・・安部氏の殺害を「民主主義の危機」とか言ってる人がいるが、そもそも日本は民主主義国家ではない、ということをはっきり示してる。選挙とかやる以前の問題だわ。。

その分析を裏付けるように、このレビューを書いてる2日前に行われた参議院選挙は、当初の予定通り「自民党の圧勝」だった。多くの国民は、「バカ」のまま、「現状維持(国家として下降し続けること)」を選んだわけだ。

私は、宮台真司氏の影響もあり、「加速主義」の立場を取る。
今の政治含めた日本社会で既存権力(既得権益)を壊すことなど出来ないし、落ちるところまで落ちるしか改善する方法はないと思う。その過程で多くの弱い人が悲惨な目に合うから、著者の白井氏はこういった本で少しでもその痛みを和らげようとしているのは理解するし尊敬もする。「明日」を「今日」よりほんの少しでもマシにしようとする努力を、私も怠ろうとは思わない。

しかし、崩壊は避けられないと思う。

だが、崩壊したその先に「希望」があると思う。
社会が崩壊すれば人が輝く。出来るだけ早い方が良い。そうなれば、それだけ早く回復できるのだから。

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2022年07月15日

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