【感想・ネタバレ】冬牧場のレビュー

あらすじ

世界で一番海から遠い都市、中国アルタイ地方から届いた極上の紀行エッセイ。著者と、新疆ウイグル地区アルタイ地方にある冬の牧場で遊牧をしているカザフ族との約3カ月にわたる心温まる交流が綴られている。遊牧民の生活は、中国の政策によって近いうちに遊牧民たちも定住を選ぶ時代になるかもしれないという時代に、非常に貴重な記録ともなっている。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

2010年、私が体験したのは遊牧民の寒くて寒くて寒い冬ー

著者・李娟が新疆ウイグル自治区アルタイ南部のカザフ族の遊牧民の一家と共に旅をして暮らしたノンフィクション。

バタバタとした(主に服装の)準備から始まり、遊牧民との旅、生活、出会いと別れ、何事もとにかく寒さをしのぎ、水を得るため戦いであり、困難の連続。それが今を生きる人の目で丁寧にかつ軽やかに描かれている。これは李娟の筆致によるもので、彼女は私が持っていた強い中国人女性とは異なり、なんともほわほわとしたところもあるごく普通の女性だ。

彼女と生活を共にする人たちも、ごく普通の、それぞれに素敵な能力を持つ人たち。彼らは黙々と日々の暮らしを営んでいる。少ない食料と単調な仕事。テレビは大好きでみんなで噛り付いて観る。子供はどこにいても元気。ごくありきたりの生活なんだろう。でも読んでいると、地窩子(地下穴の家)で彼らと一緒に極上のミルクティーを飲んでいるような、温かくほのかな幸せを感じられる。

遊牧民の彼らはその後は政府のプロジェクトにより、定住しなければならなかった。その記憶を残すために李娟により書き留められた記録。日本を含めた世界中で起きていることだろうけど、古くから伝わってきたものが失われていくのは寂しいかぎりだが、李娟が書くことによって日本にいる私がこの牧場に立ち寄ることができたのは貴重な体験だ。

#冬牧場 #NetGalleyJP

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2021年12月27日

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