あらすじ
山深い秘境を走る旧道沿いにぽつんと佇む「ドライブインまほろば」。店主の比奈子が一人で切り盛りする寂れた食堂に、突然男の子が幼い妹を連れて現われた。憂と名乗る少年は「夏休みが終わるまでここに置いてください」と必死に懇願する。困惑する比奈子だが、事故で亡くした愛娘の記憶が甦り、逡巡しながらも二人を受け入れてしまう。その夜更け、比奈子は月明かりの下で激しく震え嗚咽する憂に気付いた。憂は、義父を殺し逃げてきたことを告白し――。「生きる意味」を問い、過酷な人生に光を灯す感動長編。
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Posted by ブクログ
優が月明かりの下で激しく震えながら泣く場面がいちばん切なかった。銀河、流星の双子の話には嫌な気持ちになったが、比奈子が愛娘を亡くした悲しみから目の前にいる子供たちを必死に守ろうとする強い気持ちが切なくも感動した。子供は死んではいけない。なにはともあれ優が生きてて良かった。
Posted by ブクログ
幼い子供が店に転がり込んでそれを手伝うところに「アンチェルの蝶」を、酷い環境で育った兄弟というところに「オブリヴィオン」を想起させられます。
ただ、それらの作品以上に暗くて重い内容。憂の境遇はもとより、他の人物たちも何かしら過去に “傷” を負っていて、彼らには憐憫の情が芽生えてきます。
ただ、流星は凄絶な過去があるとはいえ憂への仕打ちがあまりに酷く、後半にその過去が明かされはしましたが同情の余地はないかな、と。
銀河については流星の過去を知らなかったことを差し引けば、流星に比べれとまだ救いがある方かとは思いますが、やはり過去に数多の女たちを売ってきたことを考えると、感情移入はしにくかった気がします。
そうした引っかかるところはありつつも、終章に至るまでがかなり辛い内容だったため、比奈子や慶子、憂、来海、光が希望を持てるような結末だったことには心底ほっとしました。過去に傷を負ったもの同士、何かを補い合う形で前向きになれているところがポイントなのかな?
Posted by ブクログ
人の心の動きの複雑さを随所に感じました。自分の力ではどうにもできない現実の残酷さの中にあるわずかな救いを求めてもがく様子が苦しかったです。それでも、最期は希望をもって終わったのが良かったです。これからも、苦難は待ち受けているだろうと示唆されているとしててもです。
誰かに認められたり、必要とされたりした経験が少ない人ほど、反比例して人生に大きく影響してくるというのが、辛いなあと思います。受け取るはずだった幸せに気付かないことが、唯一の幸せになる方法の様で、それがまた、受け取る側の悲しみを深くさせる要因だなと思いました。
それにしても、児童虐待の絡んだ作品を、意図せず連ちゃんで読んでしまいました。重いです。