あらすじ
「ねえ、秘密のアプリって知ってる?」
いつものように教室の片隅にいると、楽しそうな女子たちの噂話が聞こえてきた。
【過去を自由に変えられる】という夢のようなアプリ。
みんな噂話だとわかっているけど「あったらどうする?」と話題が絶えない。
もし僕だったらどんな過去を変えるだろう? きっと「僕を『普通』の人間にして下さい」こう願うかな……。
次の日、いつものように登校すると――友人の三宮春乃が消えてしまっていた。
何故だかみんな春乃のことを憶えてないようだ。まるで元からいなかったみたいに。
「誰かが“アプリ”を使って、この世から春乃が存在した過去を消した?」
――秘密のアプリは夢なんか与えない。その日から噂は現実となり、僕たちの『普通』は壊れていった。
感情タグBEST3
こんなアプリがあったら…
過去を変えられるアプリの話。ある日友人がこの世に存在しなくなってから、壊れていく日常と人間関係が面白いです。一体誰がそんなことを!って謎をひっぱらない、サクサク進む展開が良い。意外な死亡もあったし、他人を出し抜かないと希望をかなえられない設定も上手く活きていました。各キャラ視点が読めるのも楽しかったですね。特に鬼畜な人のパートとか(笑) こういう疑心暗鬼の中の攻防戦みたいな話は大好物なので、あっという間に読んでしまいました。これを前哨戦として、ぜひとも続編を出してほしいです。
Posted by ブクログ
『第3回ⅡⅤクリエイターアワード』の最優秀賞受賞作品。
2000年生まれの若い作家さんだけあってスマホアプリをモチーフにした物語は新鮮。
「過去を自由に変えられる」夢のようなアプリ。
もし自分だったら、過去のどの場面を変えようか思い浮かべながら読み始めたが、実はこのアプリ、そんな生易しいアイテムではなかった。
突然消えてしまう者。
善人の仮面が剥がれ本性が剥き出しになる者。
正義と悪、そして『普通』の定義についても考えさせられる。
リーダビリティの高い文章で、思春期ならではの自意識や承認欲求がストレートに伝わる作品。