【感想・ネタバレ】三十の反撃のレビュー

あらすじ

2022年本屋大賞翻訳小説部門第1位!
ベストセラー『アーモンド』の著者が放つ、すべての人に勇気をくれる傑作。

『アーモンド』が人間という存在そのものへの問いかけだとすれば、『三十の反撃』は、どんな大人になるかという問いへの答えである。
ーーーソン・ウォンピョン

1988年ソウルオリンピックの年に生まれ、三十歳になった非正規職員のキム・ジへ。
88年生まれに一番多い名前「ジヘ」と名付けられた彼女はその名の通り、平凡を絵に描いたような大人になっていく。
大企業の正社員を目指すジヘの前に現れたのは、同じ年の同僚ギュオク。
彼の提案する社会への小さな反撃を始めることになったジヘは、自信を見つめなおし、本当にしたかったことを考えるように。
そして、ついに「本当の自分」としての一歩を踏み出すことになるーー。
世の中という大きな壁と闘うすべての人に贈る、心温まるエール!第5回済州4・3平和文学賞受賞作品。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

最後の「作者の言葉」まで読んで、この小説が実は、最初「普通の人」というタイトルだったことを知った。この作品のなかで「普通の人」とは、どういう人たちのことを言うのだろう。
さぁっと読んだだけでは、主人公とその仲間たちは「普通の人」たち以下、或いは未満のように思えた。
半地下、或いは子供と暮らすには絶対適さないような場所でしか住めない人たち。他人にいいように使われたり、調子のいい奴に騙されたり、盗まれたり、それでも黙って何事も無かったように働き、でも陰では泣き、愚痴や陰口を言い、そして自分自身を諦め否定しながら生きていく人たち。
この小説の中で「普通の人」とは、例えばユ・チーム長、キム部長のような人たちかも知れない。下の者には傍若無人、マナー無視のキム部長とか、また雑用、面倒臭い事は全て非正規職インターンに押し付けるユ・チーム長みたいな。でも明らかに分かることは、彼等は少なくとも主人公たちよりは成功しているように見える。少なくとも彼等は正社員、主人公は非正規職インターンで、主人公の仲間たちも同じようなものだ。何より彼等も、そして主人公たちもそう思っているから。
本当はキム部長やユ・チーム長も、彼等なりに非常に重くかつ逃げられない悩みや辛さがあり、そしてやはり世間のしがらみに囚われて生きているのだが。
「虐げられた」人たちであり、そして「騙され、奪われた」人たちである主人公とその仲間たちは、このまま自己を否定しながら生きていくのか?と言うところで同僚のイ・ギュオクの提案にのる。つまり「成功した人」たち、「普通の人」以上の人たちに他愛もないイタズラを仕掛けるというもの。犯罪と言えば犯罪かも知れないが、大物なら、大物でなくとも普通の人なら笑って済ませる程度のイタズラ。社会も人も、何も変わらない、ただ主人公たちの胸がちょっとだけスカッとするそれだけのこと。事実、イタズラされた「普通の人」以上の人たちにとっては笑い話以外の何物でもない。そのイタズラで何か影響があった人はキム部長のような小物くらいなもの。
でも、このイタズラが無かったら主人公たちの人生は「騙され、奪われた」だけの人生で終わったかも知れない。良いか悪いかはいざ知らず、このイタズラが主人公たちの人生を変えたのであれば、少なくとも主人公たちは「特別な人たちではないかもしれないが、でも『普通の人』で収まる人たちでもない」ということだと思う。
自分勝手の感想だが、この小説のタイトルやっぱり「三十の反撃」で良かった思う。少々、他愛のない反撃だが。

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2024年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特に印象に残ったのは、ユ・チーム長の存在。
彼女はいろんなことを諦めさせられてきた人なのだと思う。
納得できないことやおかしなことも、「それで物事が回るなら」と受け入れて働いている。
ギュオクのように声を上げる強さもあるけれど、ユ・チーム長には“黙ってやる強さ”がある。
その姿が、妙に心に残った。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

NOを、YESを、言おう。

ありふれた名前のジヘはインターンをしている。ある日コーヒーショップで有名人に啖呵を切っていたギュオクが会社にインターンとして現れて、2人は会話をするようになる。ギュオクは遊びと言いながら、言いたいことを言い、ちょっと騒ぎを起こす活動を持ちかけてきて——。

よくならない社会に、価値を見出せない労働、気の合わない同僚、わかってくれない家族、だんだんと気持ちが離れていく友人。受け流すのは難しくないけど、そんな人生でいいのか。声をあげても変わらないかもしれない。相手に与える打撃は一時のものかもしれない。でも自分を縛る理不尽にNOを言い、自分のしたいことにYESを言えたら、それは確かな変化になる。ちっぽけで他にもたくさんいる人たちのなかの自分だからこそ、自分のために行動するのが大事なのだ。

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2025年02月26日

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