あらすじ
H2Hマーケティングとは、Human to Human Marketing、すなわち人間を中核に据えた、人間主体のマーケティングである。
たゆまぬ進化と引き換えに信用と効力を失いつつあるマーケティングに、「人間の役に立つとともにしっかり利益を生み出す」というかつての力と役割を取り戻すためのマーケティング手法だ。
著者らは、最新のマーケティング概念にデザイン思考、S-DL(サービス・ドミナント・ロジック)、デジタライゼーションという3つの神器を組み合わせることでH2Hマーケティング理論を完成させている。
Amazonやホールフーズ・マーケット、ウーバーなどの事例をはじめ、コロナ禍を踏まえて完成された充実の内容。
巻頭にはH2Hマーケティングの始祖である3名の著者からの日本へのメッセージ、各章末には経営学者の鳥山正博氏による日本の読者向けの解説文を掲載。
信用が通貨となった現在、H2Hは今や稼ぐための手法にとどまらず、生き残るために必要な視点である。
(本文より)
H2Hマーケティングは、人間と、人間が抱える問題(H2Hの課題)の解決を中心に据え、現在欠けている信用、誠実さ、高潔さ、共感、脆弱性、建設的な対話、サステナビリティ等の問題に取り組んでいく。
マーケティングの人間的な側面を再活性化させ、パーパスと情熱を持つ事業を成功させ、世界をよりよくしていこう!
<目次>
第1章 マーケティングの現状
第2章 新たなマーケティング・パラダイム――H2Hマーケティング
第3章 H2Hマインドセット――H2Hマーケティングの基盤
第4章 H2Hマネジメント――信用とブランドを重視する
第5章 H2Hプロセス――オペレーティブ・マーケティングを再考する
第6章 この難しい世界の中で
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
人間回帰!そのためのマーケティングを!というお題のもと、過去の様々な理論の統廃合を試みる一冊。
結論として導かれる理論は、(翻訳者もおっしゃる通り)ツッコミどころ多々あるものの、その過程で、50年以上のマーケティング論と周辺経営戦略論が整理されるプロセスに価値がある。その意味で読み応えあり。
何より、90になってなお、新しいフレームワークの提示を続けるコトラー大先生の誠実な欲深さに感服
Posted by ブクログ
マーケティングがHuman to Humanになり始めていると。太古、人が作ったり獲ったりしたものを、人に売るという単純な構造だったが、間にいろいろな企業が介在して複雑になったと。モノを売るのではなく価値を交換するという観点で見直すと一方的にモノやサービスを売るのではなく、価値の交換であり、人と人のつながりで共創するモノであると。すべてのマーケティングは、モノを売っているのではなく、サービスの交換で、デザイン思考、デジタル化を取り入れることにより、そのH2Hが実現できると。
最近のコトラーを銘打った書籍は本人が主に執筆していなく、本書もドイツの方が書いていて、引用もドイツの事例だったり、理詰めだったりでわかりにくい部分も多かった。各章の最後にテストがあったり、監修の方の日本人向けの解説があったりするところが新鮮。
Posted by ブクログ
かつてマーケティングの標準的なフレームワークであった4Pの考え方は、デジタル時代の現代にはフィットしなくなっている。4Pはあくまで、企業視点で何を管理するかというものであり、そこに顧客という最も重要な存在が入っておらず、顧客の視点も入っていない。
本書は、現代においてマーケティングは人間を中心に添えたアプローチに転換するべきものと捉え、各種の主要な学説を集めたものである。そのため、アカデミックな記述がいくつも羅列される形となり、まとまりもなく、正直読んでいて面白いものではない。
一方、既にマーケティングがデジタルである事が前提となっている現代において、マーケターはどう顧客と向き合うべきかというヒントが多く提示されている。4Pのようにマーケティング界隈で誰もが納得し共有されるようなフレームワークはまだ出ておらず、本書でもいくつか提示されているが、これといったものは無い。そんな中、5Aという考え方は一つの切り口としては面白いが、やはり説得力不足は否めない。2021年に書かれているが、その後そうした言い方が全く定着していないのがその証左でもある。
課題が多い現代のマーケティングにおいて、少なくとも人間を中心に添えたアプローチというのは方向性としては正しいと思われる。しかし、それをどうやって実現していくのかという事については、マーケティングというよりは事業に関わる全ての人達がそれを普段の仕事の中で実践していくべきものであり、多くはオペレーションにおいて目の前の顧客を抽象的なものから一人の人間として対峙するといった事で実現されるのではないかと思う。そうすると、マーケティングは手法というよりはより哲学のような要素が強くなっていくのかもしれない。