あらすじ
高校の修学旅行で人形浄瑠璃・文楽を観劇した健は、義太夫を語る大夫のエネルギーに圧倒されその虜(とりこ)になる。以来、義太夫を極(きわ)めるため、傍からはバカに見えるほどの情熱を傾ける中、ある女性に恋をする。芸か恋か。悩む健は、人を愛することで義太夫の肝(きも)をつかんでいくーー。若手大夫の成長を描く青春小説の傑作。直木賞作家が、愛をこめて語ります。
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Posted by ブクログ
漫画みたいで、面白かったです。
仏果を得ずの意味が最後に分かる流れはよかったです。
芸事を極めるには、何もかもより優先しなければならない、厳しいです。
文楽は社会とかでしか学んでこず、死ぬまで高みを追求するものなのですね。師匠と弟子の関係、今はこういう場でしか見ない。しをんさんの、一見軽妙な文体で、文楽の厳しさや奥深さを、わかりやすく教えていただき、実際にどんなものか見たり読んだりしたいです。
Posted by ブクログ
大好きな文楽がこんな青春胸熱展開のお話になって現れてくれたことに感謝。作品に対する思いや考察、表現の妙、芸の厳しさ、伝えていくことの重責、重たいけどそれをしっかりと受け取って、繋いでいこうとする登場人物たちに感動した。伝統芸能は面白い。真智さんとの恋もはらはらしたけどそういう愛の形もありでミラちゃんもかわいかったから文句なしに面白い小説だったと思います。
Posted by ブクログ
文楽ってほんとに馴染みがなくて読み進められるかな…と思ってたけど、
三浦さんの書く文で情景が浮かんだ。すごい…。
ひとりひとり性格や文楽に対しての取り組み方は違うけど、真剣に人生をかけて取り組んでいる様はみんな一緒で、
必死さをひしひしと感じた。
主人公が役を演じているとき、自然と息を飲んでしまったよ。
Posted by ブクログ
私、学生時代の最後の二年は大阪で過ごしていました。
その当時気に入って通ったのが文楽。日本橋(にっぽんばし)まで電車で通い、国立文楽劇場でひと時を過ごす。結構通いました。
今となっては、文楽が好きだったのか、文楽が好きな自分というイメージに酔っていたのかは分かりません。でも、そういう歴史にまみえることが出来る関西に居られたのは幸せな思い出の一つであります。
梅田で電車を降りて曽根崎警察署を発見すれば、『すわ、曾根崎心中の曽根崎か』となり、大阪城を見れば、『やや、豊臣秀吉の築城ぞ』となる。
もちろん、私の出身の東京はじめ、東日本にも史跡はあります。ただし、生活に息づく感は余りない気がします。
江戸城跡は皇居になっていますが、普通近寄りませんよね。あとは何だろ。大森貝塚とか?大森とかじゃあ駅降りないなあ。
いずれにせよ、私が数年を過ごした大阪では、そこここに、かつて教科書で習った事柄が「でん」と鎮座し、歴史の中に生きている気がしたのでした。
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で、やっと本題です。
本作、三浦しおん氏による文楽をテーマにしたエンタメ小説であります。2007年の作品。
人間国宝の太夫に弟子入りした健の成長物語、とでも言いましょうか。
主人公は太夫という、文楽でいう語り手パートの男性(といっても30歳)。相方となる三味線引きとの関係構築、気難しい師匠の面倒、そして気になる女性と芸事への専心との間の葛藤など、ドタバタになりすぎず、かつ面白さもある、良くまとまったエンタメ小説となっております。
ついでに言えば、古典・文化の理解・解釈の仕方についてもとても参考になりました。
古典(芸能)って教科書に載っていても面白くないですよね(うちの子どもたちは散々無理だとか意味不とか文句を言っていた)。
主人公の健も、登場人物の気持ちがどうしても理解できず、状況や本人の立場に沈潜してどのように表現すればよいかを考えあぐねていました。
古典芸能に限らず、外国語作品、ないしは時代を超えた作品、或いは歴史、いやいや、もっと大風呂敷を拡げればあらゆる事柄は彼我との差を認識しつつ、相手側に沈潜する、当時の状況を鑑みて解釈するべきなのでしょう。
なーんてことにも考えさせられる作品でありました。
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ちなみに私が学生時代やっていたフラメンコも何となく文楽と似ているかもしれません。
バイレ(踊り)に注目が集まりますが、ギターとカンテ(歌い手)とのバランスと調和があって舞台が整います。
文楽も人形使い、太夫、三味線と三者の合致があり舞台が整うのだろうと思いました。
まあこういうとバンドとかもそうですがね。
完璧にシンクロしたときの気持ちよさってのはこれらの芸事はどれも感じられるのだろうなあと思いました。
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ということで久しぶりの三浦氏の作品でした。普通の人がうかがい知れない伝統芸能の内実や葛藤をエンタメに仕上げた佳作と感じました。
三浦しおん氏の作品は私のお気に入りになりそうな予感です笑 今後も渉猟して参ります。