【感想・ネタバレ】女神記のレビュー

あらすじ

遙か南の島、代々続く巫女の家に生まれた姉妹。大巫女となり、跡継ぎの娘を産む使命の姉、陰を背負う宿命の妹。禁忌を破り恋に落ちた妹は、男と二人、けして入ってはならない北の聖地に足を踏み入れた。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

登場人物の分類される重要な立場が女か男かのふたつだと感じた。
主人公は女という概念がナミマという皮を被っただけであるし、イザナミ、イザナギ、マヒトもまた同じ。
陰にされた女、陽になった男、
自分勝手な男、昔のことを忘れる男、突き放され怨む女、昔に戻れればそれでいいはずの女。
徹底的にイザナギを恨み尽くすイザナミと、マヒトに優しくされたら揺らぎそうなナミマがいるが、ナミマだけが独白の文体があって感情移入しやすいし、多くの女性はイザナミよりナミマ寄りなのでは。
そのナミマがラストでイザナミに尽くすことを誓ったということは、多くの女性にイザナミと同じく男に屈しないことを奨励している?

イザナギとイザナミは神だからか言動が明快、絶対的で軸がぶれないが、人間たちは言動がいきあたりばったりで、未来が予測できず、他人の心が読めず(人の心情描写が少ない)、自分の行動原理もわかっていなさそうなのが現実に似ている。
これから日本は人口が減ると言われているが、物語のラストでイザナギが千五百の産屋を建てなくなるのに、イザナミは千を殺すのをやめないというのはそれになぞらえてあるような。

古事記での神は人間臭いが、ここでのイザナミは嫉妬、憎悪、怨恨などの感情はあるもののその他の明るい感情が感じられないので人間を超越した存在だと感じる。
人間になったイザナギを殺してしまうことでイザナミの絶対性が浮き彫りになる。これはなんなんだろう、男が滅びても女は生き続けるということかな?
この作品は存在も心情も極めて陽に立ち向かう陰としての女寄りにえがかれている。

陰の世界、陽の世界、それらが混じり会う人間界のみっつが感じられて楽しい。
"魂"の字を見ただけでなんの違和感もなく、なんとなく脳内に魂の表象が思い浮かぶ。魂の存在を疑っていない人がこの物語の魂の描写を読むとなにか根底にあるものが安心すると思う。

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2013年05月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

3年前に単行本で読んだが、文庫版で再読。
男と女の性(さが)をテーマにして、古事記を下敷きに翻案したもの。

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2015年03月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんとも言えない独特の世界の話。
少し話が、飛躍し過ぎ・大きくなりすぎ・現実離れしてるとも思えるけど、それもまた許される。
小さな1つの島の中から話が始まり、海上・他の島・海の底・神の世界と進んでいく。主人公も一人の小さな女の子から大人になり、色々な物に姿を変えて行く。小さな島の小さな女の子の小さな恋。そこから、ここまで大きな話に移り変わるのはすごい。
突拍子もないけれど、話しの繋がりもしっかり書かれているので違和感なく読み進める事ができる。
主人公の立場で読むと、あまりに辛く切ない物語。

仲の良かった姉妹なのに運命が大きく分かれて、やっと見つけた幸せも偽物だった、たった1つ守りたかった娘も奪われる。
自分の命が尽きても、見るのが怖い現実から目を背けずに直視した。

だけど、この物語で本当に幸せになった人は最後まで居なかったように思う。ハッピーエンドにはならないけれど、辛くて切ない独特の世界を読むと【私はまだまだ!】とツライ事が小さく思えて前向きに頑張れるような、そんな小説だと思う。

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2013年05月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

多くの人がイザナギ・イザナミの神話を「永遠の二項対立」の物語と理解しているだろう(私もそうだ)。イザナキは生命を産み続け、イザナミは生命を奪い続けるのだと。しかし本書で桐野氏は神話を物語として発展させ、イザナミにもっと過酷な現実を突きつける。
語り手であるナミマは人間であるため、憎むべき男が些かでも改心したかと感じられれば安らぎを得ることが出来た。イザナキは男神ゆえ己の運命すら覆して「死を経験できるかと思うと嬉しい」と言う。
しかし愛する男によって突然黄泉の国に送られ、閉じ込められたイザナミは、決して変わることが出来ない。許すことも仕事を放棄することもできない。
「真の破壊者」となってすべての運命を背負う。
「女は哀しい」「女であることは苦しい」という解釈も可能であるが、桐野氏がその他の作品でも貫く「真に強いのは女である」というメッセージを感じられる。
ナミマの物語がやや冗長なのと、その分後半の神話を超えた部分が短い気がしたので星は3つ。

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2014年01月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

古事記!? 神話!?
読み切るのは難しそう。
そう思いながらも買って、結構すぐに手をつけた。
読み方が難しいし、カタカナの名前がどんどん出てくるし。
心の中で泣きそうになりながらも読み切れたのは、適度に流す術を身につけたからだろう。

何年か時間を置いて読み直すのもいいかもしれない。
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遥か南の島、巫女の家に生まれた姉妹。六歳の誕生日、姉は家族から引き離された。大巫女となり、後継ぎの娘を産むのだ。やがて姉の元に食事を届けることが妹の役目に。--ひもじくても、けして食べてはならない。--だが島の男と恋に落ちた妹は、禁忌を破り、聖域に足を踏み入れてしまう。激しい求愛の果て、地下に落ちた妹が出逢ったのは、愛の怨みに囚われた女神・イザナミだった。性と死の神話を、現代に編み直す!

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2015年06月02日

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