あらすじ
妻あり子なし、39歳、開業医。趣味、ヴィンテージ・スニーカー。連続レイプ犯。水曜の夜ごと川辺は暗い衝動に突き動かされる。救急救命医と浮気する妻に対する嫉妬。邪悪な心が、無関心に付け込む時――。
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Posted by ブクログ
バレないと思ってやってしまった罪。
しかし色々な繋がりの中から、犯人が浮かび上がり、追い詰めていくところは、
(追い詰められていくところ)どんどん読み進めてしまいました。
色々な登場人物がつながっていく様子がとても面白かったです。
Posted by ブクログ
著者を知ったのは『OUT』がTVドラマ化されたときだと記憶しています。それはそれは面白くて、主人公たちがノコギリで死体をギコギコぶった切るシーンは、長調なのに哀しげなテーマ曲の旋律と共に今も頭の中に蘇ります。
本作はそのイメージそのままというのか、そのまますぎる気がして、桐野さんってあれからひとつも歳をお取りではないのかと思うほど。
「最低最悪の読み心地」という帯の言葉に、このゲス医者が逃げおおせる嫌ミスの如き結末も覚悟していましたが、桐野作品ではやっぱり女が一致団結するのですね。天罰を喰らえばいいと思うと同時に、プライドの高い奴はここまでひねくれてしまうものなのかと思う。
Posted by ブクログ
最初、良かった。
開業医とレイプ犯の設定が面白く、被害者たちがだんだんとつながっていくのも面白く読めた。
あれよあれよと繋がり出して、行き着いた後がなんかモヤっとする終わり方だった。レイプ犯がこんなに軽やかな終わりでいいの?やり口が本当に悪質で、その復讐にしては軽すぎると感じてしまった。
それから中盤後半にかけて一気に登場人物が増える、アパートの住民たちの話。何かにつながるかと思い、一言一句逃さないよう読み返すくらい読んだのだが関係なかった。
Posted by ブクログ
久々の桐野さん。相変わらずドロドロの設定。全体的には面白かったけど、登場人物が多すぎてそれぞれの個性がうっすい。個人個人の日常生活を再現したかったんだろうけど、もっと絞ってよかったのでは?ツイッターとかネットとか駆使して今の世の中っぽくしたのはよかった。最後の犯人を追い詰めるところとか。でも、もし私がレイプされたとしても犯人に個人的に復讐したい気持ちより、逮捕されて次の被害者を出さず、私自身は事件のことを忘れたいと思うので、被害者たちが警察に届けるより復讐を優先した気持ちは理解できなかった。
Posted by ブクログ
自分の行動がすべての元凶なのに、何が悪いのか、妻のためといいながら、自分が好きなもの、自分が彼女に似合うと思うものしか認めなかったり、それに反すると、すぐに態度に出る。何故病院がうまくいっていないのか、わかっていない。身勝手な性格で、自分のやること、自分のセンスが一番良いと思っている、まわりの不満、窮屈さを感じられない人物。
ギリギリまでどうなるかわからなくて、ページが少なくなってどう復讐するんだろうと一気に読んだ。
かけあしで終わった感があるので、もう少し、女性たちの復讐のかたちを読みたかった。
自分の卑劣・悪質なことは棚にあげて女性たちに怒りと復讐をどうしようか最後までクズで鬼畜な考え方をもつ主人公だった。妻に対して、妻の愛人に対してなど、嫉妬ゆえの歪んだ行動。犯行後、そのあと少しの間はビクビクするが、すぐに次の犯行にうつる。
金(借金もある設定だったけど)・権力・自由があるのに、まだ足りないのか、人間の欲は計り知れない。自分の不満、苦しみの対処法が歪んでいる。
Posted by ブクログ
加害者視点でも被害者視点でも語られるのが、おもしろかったような、そうでもなかったような…。
嫉妬の描写と、そこから来る行動はおもしろかったから、そこをもっと掘り下げてドロドロ汚い部分がもっと見えてもよかったのになーとか、煽ったほどは復讐に恐怖を感じられなかったなーとか、少し物足りなさが残った。
Posted by ブクログ
その昔、僕の友人がですね、桐野夏生の「メタボラ」を評して「ポップにグロい」と言っていたのですが、あの表現、まさに言い得て妙だなあ~、と思って、今頃感心しております。そうなんですよね。桐野作品、まさに、ポップにグロい。「ああ、これが現実社会なのか、、、そうなのか、、、」と突きつけられる容赦のなさ。その消費文化っぷり、そのグロさっぷり。あの表現、うん。まさに、桐野作品の真理を突いている気がする、と、この「緑の毒」を読んで、至極納得した次第です。
この作品、なかなか興味深いのは、連載時は、角川書店の雑誌「野生時代」に2003~2011年もの長期間にわたって、断続的に連載していたものなんですって。あしかけ8年に渡る連載!?長い。長いぜ。なんでそんなに長い年月かけて連載してたのかしら?そこまで、超大作でもない感じの作品ですし。謎ですね。ちょっと、ここらへんは、謎です。
あと、冒頭に、シェイクスピアの「オセロ」の一文が、エピグラフで挙げられてまして。嫉妬の怖さを言及した文章でして。で、小説の題名も「緑の毒」だし。green eyed monster. 緑の目の怪物。西洋では、嫉妬の色は緑色、って感じになるみたいですね。だからまあ、嫉妬は緑、というのが、この作品のテーマなのだろうなあ。嫉妬の怖さを描いた作品なのだろうなあ。
という思いで、読み始めたのですが、あれ?そんなに嫉妬、重要ではなくね?って思いながら読んでました。最初の章こそ、川辺康之が、嫁さんのカオルの不倫で嫉妬に狂って変になっていく感じを述べてましたけど、この川辺がマジ変人。カオルが不倫している事への嫉妬の気持ちで自分が逆に悦んじゃう、みたいなドMやないっすか。変態だなあ。
で、その嫉妬の気持ちの荒れ狂いっぷりから、水曜日の夜によなよな、連続レイプ犯罪をやっちゃうよ、みたいな流れ?になってるのか?って感じなのですが、、、嫉妬、関係ない気がするぞ?嫁のカオルが不倫してなくても、川辺、なんらかの犯罪に手を染めてたんではないのかなあ?というくらいに、なんだか変態です、この人。
で、いきなり最初から、主人公?って感じで登場した川辺はレイプ犯だわ、第二章になったら目線がレイプ被害者の亜由美に代わって、この亜由美の姉ちゃんは引きこもりだわ、で、うわあ桐野さん、、、相変わらず、えげつなく酷い物語を綴るなあ、、、ってこう、早速ね、鬱な感じになるんですけどね。
第三章になったら、やたらとこう、桐野さんっぽくないというか、普通な感じになってくる。若宮伸吾、登場。このキャラが、めっちゃ好青年。妹のルリ子がレイプ被害にあったことに、心の底から憤慨して、ぜってえ犯人とっつかまえてやる!ルリ子!お前の無念は、兄ちゃんが晴らしてやるからな!と意気込む麗しき兄妹愛。家族愛小説ですやん?バリに、真っ当に良い兄貴。うお?桐野さん。なんか、テイスト違わなくね?
って思ったら、こっから、なんかこうね、一気に物語が、ポップになるんですよ。しっかりグロいんですが、凄くこう、桐野的にマトモ、というか、なんというか。
嫌なキャラばっか登場するんではなくて、カオルの不倫相手の玉木は、なんだか爽やか男臭いキャラだし、ピーターフラット2の住人の、飲み会企画した本木 夢も、なんだか善人。川辺の、元共同経営者だった野崎 友秀なんかも、なんだか憎めない。
そんなテンションで、なんだか矢鱈とポップに、話が、、、進んでいく、、、という思いで一杯でした。川辺はマジで人間のクズ、みたいな酷い男でしたよ、ええ。レイプ犯だし、医院経営の方針も、全然親切にしない診療、がモットーのダメ経営者だし。でも、何だかほかが、あれ?案外、善人多いじゃん?とか思って、サクサクと読み進めてしまいました。不思議な感じだった。
が、まさに「ポップにグロい」というそのまんまの評価となる気がする、そんな一作でしたね。
ってか、性犯罪、絶対いかんよ。ダメですよダメ。川辺にレイプされた被害者の女性たちが、どうしても警察に被害を届けたくない、と、しり込みしてしまう気持ち、これはマジで真実なのだろうなあ、、、そこだけは、マジで真摯に受け止めたい。性犯罪と幼児虐待は、マジでダメだよ。ということを、肝に銘じたいですね。そんな思いは、確かに感じました。
物語の最後も、川辺は、えらくアッサリと捕まる感じで、若宮伸吾、どっから絡んできてたのよ?という感じでいきなり登場して、ちょっと微笑ましかったですね。で、川辺の後日談を全然描写しないところとか、桐野さん、クールやなあ、とか思う。最後の章の、描き下ろしの話の主役ポジションの人物が「お前じゃないが仕方ない」の海老根 たか子ってか!というのも、うーむ。潔い。たか子、沖縄のいきつけの飲み屋で、じろじろ自分を見てたオッサンに、キレてるし。そんな終わり方も、うーむ。なんだか、いさぎよい。