あらすじ
あの夏からずっと、大人って何か、考え続けてる――。
離婚し、東京・谷中に戻ってきた沢口遥は、近所に『ルーカス・ギタークラフト』という店を見つける。
店主の乾は、ギターだけでなく日用品の修理も行う変わり者。
彼と交流するうち、遥の脳裏に、蓋をしていたある記憶が甦る。
大人になりたい少女、大人になりたくない少女、大人になってしまった少女。
それぞれの悩みと思いが交錯する。青春の葛藤と刹那の眩しさに溢れた群像劇。
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Posted by ブクログ
2つのパートに分かれて話が進む。
大人になった遥の視点のパートと女子高生クミ視点のパートを中心にストーリーが展開される。
遥は、今の現状に全く満足しておらず、自分も、周りの世界も好きになれない。まるで青春時代に何かを忘れてきてしまったような少し暗い生活を送っている。
彼女の鬱屈とした様子は読んでてとても共感できて、どんどん話に引き込まれていった。彼女はこの先どうするのか、奥底にある考え方はどんなものなのかずっと気になってしまった。
私自身、いつも後悔ばかりで、出来ることなら彼女みたいに全てを投げ捨ててどこかに逃げてしまいたいと思うことが何度もある。
一方で別パートの語り部となるクミの学生時代のバンドの話は遥のパートと対照的に明るくて瑞々しい青春時代が描かれる。
物語が後半になるにつれて見えてくる遥という人物のロックな気質。大人への反抗心。それが所々細かい描写のある楽器屋音楽の描写ともマッチしていてとてもよかった。
大人になるとはなんなのだろう。
瑠夏は人のために一生懸命になれる人のことだと言った。これは正直その通りだなと思う。仕事でも、学校でも、他人や仲間や会社のために自走できる人が周りを引っ張っていく。
でも大人になるのが全てではないように思う。
最後遥は大人になって、新しい生活を始めていくような終わり方だった。
ただ正直、個人的には学生時代のギラギラした尖った魅力が抜け落ちてしまったようにも感じてしまった。これは大人にはない子供の魅力もあるということなのかもなと、思った。
学生時代の行動力や内に秘めたエネルギーのようなものは大人になったら無くなってしまうような気がして少し寂しかった。