あらすじ
日記をつけることで〈幸福〉を楔で心に打ち付ける女。17年間、帽子とマスクで顔を覆い商店街の中だけで暮らす女。夫の浮気相手である図書館司書を日々監視する女。理想の家庭を夢見ながら妻に家出された男……。穏やかで静かな街に暮らす人々の〈不安〉はやがて、「ある人々の存在」に向けられてゆく。彼ら/彼女らはいったい何者なのか――。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
いつも抱腹絶倒のエッセイを届けてくれる北大路公子さんの、初小説!これは 期待大!
……。まさかのホラー!? イメージと違いすぎてビックリしました。
でも、なんでも均一化しようとする世の中に(それは現実にも)、うっすらと反発しているようでもありました。
Posted by ブクログ
北大路公子は面白エッセイを書かせたら右に出る者はいないと信じている。
そんな彼女の小説。
普段のエッセイでもこの手の不思議な味わいは、ある事はあったが、小説ではガッツリ書きましたという感じだ。
しかし、読んでみると確かに北大路公子作品なのだ。
豆腐屋の女将さんのエプロンの柄の描写とか、正に。
面白小説を期待すると肩透かしを食らうが、個人的には嫌いじゃない作品だった。
星は3つだが、好きな作品だ。3.7としたい。
Posted by ブクログ
立場はそのままに人が入れ替わっていく世界。
入れ替わることによって感情は薄れていき、記憶だけが残る。
「美しい街、平和な心」
日常にひとつだけ特異な設定を加えるという点では村田沙耶香と似ている。
『苦手図鑑』に収録されていた短編小説のほうが面白かったように思う。
Posted by ブクログ
陽光あふれる表紙は罠だったのか、と思うほど中身はダーク。
互いに感情をぶつけ合わず、距離を保って平穏に暮らすことを目指した先が、あの「均された世界」なら、ディストピアとも言い切れない。そのことが、なにより怖い。
Posted by ブクログ
穏やかな暮らしは作られたもの。明らかにSFであるが、具体的な設定は最後まで明かされない。現実世界と妄想の狭間に入り込んだような浮遊感。ご町内の描写が妙にリアルでなところに少しホッとする。
Posted by ブクログ
エッセイとは全く違うテイスト。
とはいえ、エッセイの中にも少しこんな感じの物語も掲載されていたので、全くお初でないものの・・・
当たり前ですが、そのギャップがまた不思議感を助長します。
均された世界、このある意味、安定感の世界での連作短編、どこかで歪みながらも感情は続いて無くならない。
Posted by ブクログ
あらゆる出来事が等しく遠くなるように、あらゆる感情が等しく平らになるように、あらゆる景色が等しく小さくなるように、人は入れ替わる。そんな風にして自分の感情を肩代わりさせている。意味の擦り切れたやりとりを日々繰り返し、やがて言葉だけではなくお互いの存在すら無意味になってきた頃、離婚を決意。だからか、他愛のない言葉ばかりであっても、影のような住人との暮らしにぼんやり疲れていた主人公には、そんな馴染み深い親しさが心地よかった。人は自分の感情くらいは自分で引き受けるべき、替わらない人たちのように。SFなのかファンタジーなのか不分明ではあるが、小説であることだけは確か。タイトルのハッピーライフは言いえて妙。エッセイとは全く異なる魅力がひたひたと迫ってくる。