あらすじ
「命さえあれば」―コロナ禍のNYでサバイブ。大江千里のNY音楽暮らしを綴るエッセイ第3弾。
47歳で日本でのポップミュージシャンとしてのキャリアを一切合切すて愛犬「ぴ」と渡米しJAZZ専門大学ニュースクールに留学。
大学卒業と同時に52歳でNYで起業したミュージシャン兼CEO、大江千里。
2018年ポップス時代の楽曲を新しくジャズアレンジしたアルバム 『Boys&Girls』を、そして2019年には満を持してジャズトリオ(アリ・ホーニグ、マット・クロージー参加)でのアルバム『Hmmm』をリリース。
才能ある音楽仲間と出会い、ビジネスでも力強いサポーターを得て、音楽家として社長として精力的に活動を続けていた。そんな2020年、世界中をパンデミックが襲う。
2月、ジャパンツアーを切り上げて緊急帰国するが音楽活動そのものが中止や転換を余儀なくされた。
60歳の誕生日、PCR検査、音楽ライブ配信、ワクチン接種、そして引越し…。世界が大転換期を迎える中、新しいジャズは生まれる。
大江千里が「ウィズコロナ」にトライする日々をリアルに綴った1冊。
目次(抜粋)
【プロローグ】 還暦の僕からあの頃の「君」へ贈る言葉
◆Chapter1 Pop Meets Jazz
◆Chapter2 Becoming a Real Trio
◆Chapter3 Hello!New World
【エピローグ】 空の頂に、小さな星が昇る
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Posted by ブクログ
愛犬の病気や父親の逝去など重たい内容が多く、コロナ禍初期の最も感染が酷かったニューヨークの状況も生々しく描写されていますが、どんなに大変な時でも心のどこかで「この状況を楽しもう」と捉えているような、不思議な明るさが感じられました。
こういう明るさやユーモア感覚みたいなものは、千里さんの文章だけでなく音楽にも共通していて、ジャズミュージシャンになっても、根っこに持っているポップさと同じく魅力の核になっているんだな、と逆境の時だからこそ改めて際立っているように感じました。
もし日本でポップスの世界に留まっていたら、今頃大御所として何不自由ない生活をしていたことでしょう。60歳を過ぎてまだまだ挑戦者で居続ける姿には何度でも感銘を受けます。
Posted by ブクログ
前作のつづきのニューヨークのブルックリンでのジャズミュージシャン生活の記録。
コロナ禍ではバスの中でアジア人差別を受けたこと、マスクをすることはテロリストか感染者と見られていたこと、大変な自粛生活のあと2021年初頭にワクチンを受けられたがワクチン2回目にはアナフィラキシーがおきたことなどのリアルな描写がとても貴重。
大学の軽音楽部でのバンド結成からデビューまでのこと、お父様との別れ、大切な家族である愛犬"ぴ"のこと、これからのご自身のこと。いつも明るく振る舞う大江さんが、色んな葛藤やダメージを受けつつも前に進んでいる様子が記されていてる。
自己主張のそれほど強くないタイプの日本人である大江さんのような人が自己主張が強く物価も家賃も高いニューヨークで長年暮らしていけるのは、とにかく音楽が好きという強い思いがあるからなのだろう。
大江千里という有名なミュージシャンの生き方を通して生きることってなんだろうと考えさせられる貴重な一冊でした。
Posted by ブクログ
文章のスピード感というかリズム感がすばらしいと思う。最初の、高校生の前で講演したときの一部始終が書かれた章を読みはじめて、臨場感というかだんだん盛り上がっていく様子にものすごく引き込まれた。ほかにも、ライブやレコーディングのこととか、わたしは音楽のことはよくわからないし、それほど興味がないのに、読んでいて一緒に気持ちが上がっていくような。
アメリカの音楽業界のこともわからないけど、ワンステップずつ上っていく感じ、きっと不安もすごくあるんだろうけど、それをひとつずつ乗り切っていく感じもすごくよかった。本当にものすごくポジティブで前しか向いてないってふうだけれど、意外とそれも鼻につかず、素直にいいと思える。
でも、コロナで、ライブとかツアーとか、すべての予定がなくなっているわけで、経済的にも危機だろうし、将来の夢があって計画がある人にとってはものすごい打撃だろうなと想像した。(わたしみたいな人間の場合、実際あんまりコロナ下でも、これから先も変わらないような。)そういう厳しさはあからさまには書かれていないんだけど、逆に想像させられた。それでもポジティブ。なんであんなに前向きなんだろう……。
コロナ下のニューヨークの様子がよくわかる感じもおもしろかった。やっぱり日本とは厳しさが違うなと。
Posted by ブクログ
シンガーソングライターとしての成功を投げ捨てて、単身448歳でニューヨークに渡り、ジャズの名門大学であるニュースクールに入学し、ジャズピアニストとして活動を始めた大江千里の日記的なエッセイ集の第3冊目。
本書でのメイントピックは、これまでに数枚リリースしたリーダーアルバムの中で、ようやくジャズピアノの王道とも言える編成、ピアノトリオ作『Hmmm』へのチャレンジ、そして何よりもCOVID-19でロックダウンしたニューヨークでの生々しい市井の生活の実態である。
『Hmmm』に関しては、これまでの大江千里のリーダーアルバムの中で、個人的には最も良い作品だと感じた。ポピュラリティのあるメロディーメーカーとしてのセンスが、決して4ビートには収まらない自由なアレンジと共に結実した印象。
そして、COVID-19に関しては、既に60歳を迎え感染が命取りになる可能性もある危機感の中で、どう自らの身を守るか、そしてライブ活動ができない環境下でどのように音楽家としてサバイブするか、という生活が生々しい。
Posted by ブクログ
3.2 コロナ禍のアメリカ生活を描く大江千里のエッセイ。興味深かったが読むのに時間かかった。60歳で挑戦し続けている生き方に尊敬してしまう。自分もそうありたい。