【感想・ネタバレ】メディアの敗北 アメリカも日本も“フェイクニュース”だらけのレビュー

あらすじ

ローマ法王の警告
「偽りの情報拡散は罪である」──
朝日・NHK・CNN・NYT
(ニューヨーク・タイムズ)よ、よく聞け!
もう、世間は新聞・テレビの
「作られた世論」に騙されない!

はじめに──さらば、フェイクニュースを垂れ流すメディアよ

1章 トランプが仕掛けるメディア戦争で世界が炎上する
トランプvsメディアの仁義なき戦い
あぶり出されるメディアの「歪み」
報じられない、もう一つの現実
メディアの詭弁とミスリード
トランプが壊した「ポリティカル・コレクトネス」の正体
トランプ大統領誕生はメディアの敗北宣言だった
露見したメディアと世論の歪み
ローマ法王発言でメディア崩壊が本格化
曖昧で不正確なニュース記事
メディアの“飛ばし報道”はなぜ生まれるか
トランプがつくり上げる新秩序
日米をつないだ悪の枢軸

2章 崩壊寸前! 新聞業界の深い闇
朝日新聞社の“お荷物”は新聞事業
メディアの「クロスオーナーシップ」の弊害
タブー化する押し紙は詐欺同然の大問題
売れない新聞に価値はない
新聞紙面の半分は広告?
限界が訪れた新聞の宅配モデル
新聞は言論機関として偏るのが当然
日経新聞の経済記事は読んではいけない?
メディアの近未来予想図は真っ暗闇か
消えるメディア、生き残るメディア

3章 ネットが滅ぼすレガシーメディア
新聞・テレビの「報じない自由」が崩壊
もう世間は騙されない
ネットの持つ四つの機能が世界を変えた
「保育園落ちた日本死ね」が流行語になる不思議
マスメディアの間違った特権意識
新聞・テレビのロビー力低下が始まる
コンテンツの多様化でジリ貧になるレガシーメディア
吉本興業とテレビ局の露骨な癒着構造
レガシーメディアの衰退は必然だった
レガシーメディアはGHQの産物?
勝者がつくった歴史を信じた戦後の日本
日本のメディアにはびこる「反権力」の勘違い

4章 利権まみれのテレビ業界
電波利用料は携帯電話会社の十三分の一
広告まがいの放送が跋扈するテレビ番組
潤沢な資金で“寄生虫”を飼うNHK
今の時代にNHKは本当に必要なのか?
官と民の“おいしいとこ取り”をしているNHK
楽して大儲けのNHKエンタープライズ
資産二百六十五億円、NHKの巨大な“貯金箱”
民業圧迫なのに批判されないNHK
肥大化した巨大帝国・NHKが陥る崩壊へのシナリオ
民放も信用できない?

5章 出版クライシスは止まらない
市場規模四割縮小、負の連鎖が襲う出版業界
それでも紙媒体はなくならない
メディアは「変わらなければ生き残れない」時代に

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Posted by ブクログ

日本のメディアには少し問題がある、と今まで何冊かの本を読んできましたが、この本にもそれらが総括された内容が書かれていました。

私が社会人になったころを思い出すと、新聞記者やメディアに入るのはとても難しい試験問題をクリアーした人が多かったと思います。今でも状況は変わらないのではないでしょうか、中で働いている人達は優秀な人でありながら、そこをとりまく環境、既得権益が変わらないと、この本のタイトルにあるような状況に陥ってしまうのでしょうか。

昨年11月に当選した米国大統領選挙においても、メディアでの報道と実際に起きたことはかけ離れていたと思います。日本では、東日本大震災が起きたころから、メディアの化けの皮がはがれ始めていますが、その原因はここ5年間ですごく発展してきた「ネット、スマホ」の力が大きいと思います。

今までは「報道しない自由」を最大限に利用してきたメディアは、「なんでも報道するネット」にどう対応していくのでしょうか、あと10年もしないうちに決着がついて多くの変化が起きているかもしれないと、この本を読んで感じました。

以下は気になったポイントです。


・裁判所が新聞社の残紙(押し紙・積み紙の総称)を違法と認めれば、グレーゾーンのときのように判例として機能するので、それは大きな衝撃として、すべての新聞社・新聞販売店・広告代理店を襲うだろう(p4,5)

・メルトダウン化している日本の大手メディアは、大手新聞社・大手芸能事務所・大手広告代理店・テレビ局(p5)

・新聞社、テレビ局、ラジオ局が同一資本であり、これが「縦糸」、コンテンツ制作は芸能事務所と癒着、広告収入については広告代理店に依存している、これが「横糸」(p7)

・トランプ氏は就任前に、CNNを名指しで批判、CNNは報道の約7割をトランプ批判をしていた、当選後も同じ。一方、保守派のFOXニュースには情報提供を行っている(p17、53)

・トランプ氏は2016年7月に記者会見を開いて以来、当選後1月まで約半年も会見なし、という異常な状態を続けていた(p18)

・トランプ氏は自ら一次ソースとなる情報を発信することで、メディアによる切り取り、ねつ造を防いでいる。これはニュースの在り方を変えるものであると同時に、新聞テレビの優位性を失わせ、ビジネスモデルそのものを破壊するものと言える(p20)

・世界中で物議で醸した「イスラム教徒の入国を禁止する」にしても、メディアが大きく取り上げた割に世論の反応は薄かった、有権者の中でイスラム教徒は0.7%程度だから(p30)

・アメリカでは1970年代までは徴兵制があり、男性は兵役義務を果たして国家のために活躍してきた、一方で現代の移民は、出来上がった枠組みの中に入って大国の恩恵を受けようとする人であり、性質の違うもの(p32)

・同じニュースでも、主語は何か、どの立場から書かれているかを読み解くことで、別の見方ができるのと同時に、それが、これからの時代のニュースの読み方である(p46)

・読売新聞と産経新聞は、官邸側に太いパイプがあるので政府関係のニュースは信用できるが、朝日や日経には無いので、誤報・見当はずれの論調が目に付く(p48)

・大統領選でトランプ氏がヒラリー氏に勝つことができたのは、中西部・五大湖周辺のラストベルトのエリア票(ペンシルベニア、オハイオ、ミシガン)を集めたから、ここは民主党の地盤であった(p51)

・安倍氏とトランプ氏の会談において、安倍氏が言った内容「あなたはNYTに叩かれた、私もNYTと提携している朝日新聞に徹底的に叩かれた、だが私は勝った」と聞いたトランプ氏は「俺も勝った!」と言って意気投合した(p54)

・ネットの普及によって情報の流れが双方向型になり、同時に誰もが直接発信できるようになった、これはメディア界における革命と同時に、レガシーメディアの瓦解の始まり(p63)

・日本新聞協会と記者クラブという排他的仕組みは、第二次世界大戦後にGHQが実施したプレスコードという報道検閲システムを継承するもの、実質的に新規参入を阻害するもの(p66)

・産経新聞社が残紙の押し紙にあたる部分の廃止を実施、読売新聞社も動き始めている。16年3月には、公取は朝日新聞社に注意勧告を行っている(p75)

・第三種郵便物は、公益性の高い出版物に与えらえる優遇措置であり、郵送料を安く抑えることができる仕組み。これにより宅配モデルが成立している(p77)

・日経新聞の経済記事を鵜呑みにするのはやめたほうがいい、読むとしても、誰にとって都合のいい情報か、を見極めるべき(p89)

・ネットの持つ4つの機能、アーカイブ・議論評論・情報収集・拡散、これらが既存メディアとネットの世界をガラリと違うものにしている(p109)

・以前は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビの順に権威があるとされた。テレビはあくまでも興行主であり、芸能・娯楽の一部であった(p145)

・テレビ局の電波利用料は、携帯電話と比較しても低すぎる、一番負担の大きいNHKとドコモの負担額は13倍も差がある(p151)

・受信料の値下げ(50円)を提案して会長を解任された籾井氏は、年間400億円も余剰金がでているが、1999年からNHKセンターの建て替え費用として積み立てて実質的に見えなくしていた(p158)

・NHKは国営放送ではなく、直接的な支配を受けない「公共放送」という位置づけで、放送法により電波受像機を持つ人から集める受信料で成り立つ「特殊法人」である(p160)

・イギリスでは公共放送をしているBBCの存続は5年に1度の国民投票で決める、不要となった場合には、民営化や解体を行うことになっているので、大規模な賃金カットとリストラが行われた(p165)

・NHKの子会社13社の利益余剰金が2015年度末時点で948億円であることが、会計検査院の調査により判明した(p172)

・書店数は、1999年の2.2万店から2015年で1.3万店であり、9千店近くも減少している(p191)

・出版の市場規模は、1996年ピークの2.6兆円から、4割以上も縮小、時代の変化の波が最初に直撃したのが出版業界(p195)

2017年5月22日作成

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2017年05月22日

Posted by ブクログ

 イギリスのEU離脱、トランプ大統領の誕生、そして下がらない自民党の支持率で新聞やテレビ、ラジオなどの既存メディアの影響力の低下が明確となった。本書では既存メディアの問題とそれを取り巻く環境の変化をまとめている。内容そのものは著者がTwitterでつぶやいていることやネット上で拡散されているメディアの不祥事、メディア論、ネット論の範囲を超えるものではなく、目新しいことは特にない。しかしこれらが1冊の本として世に出てしまったことに意味があるように思う。ネットの情報は信用できない、新聞や書籍の方が信用できると考えている人は意外と多い。そのような人たちが、本書をたまたま手にとってしまい、ネットが何を明らかにしたのか、そして「KY事件」や「WaiWai問題」の懲戒昇進、そして現在ホットな「残紙問題」などのメディア絡みの不祥事をメディアが隠しているという事を”紙”で知ってしまったとき一体どのような反応を示すのか。その時がこそ、まさにメディアの敗北が始まるのだと思う。

 なお、前著『平和ボケ お花畑を論破するリアリストの思考法』と内容が被っているため既視感が強い(コピペも散見された)。ほぼ同じタイミングでの発行のため仕方がないとも言えるし、考え方がブレていないとも言えるが、もう少しなんとかならなかったのだろうか。

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2017年05月01日

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