【感想・ネタバレ】2040年 自治体の未来はこう変わる!のレビュー

あらすじ

自治体戦略2040構想研究会による報告書もふまえ、
自治体本来のミッションから描く、もう1つの未来像。

AIの到来、加速する人口減少、高齢化など、課題が山積するなかで、自治体は未来に向けてどうすればよいか?
2018年7月、総務省が設置した自治体戦略2040構想研究会が、「圏域」を行政主体として法制化し、連携して行政サービスを担う態勢を整えるよう提言する報告書をまとめ、地方自治関係者の中で大きな話題となっています。
これは、高齢者人口がピークを迎え、人手不足が深刻化する2040年を想定すると、従来通り、それぞれの市町村が単独で全ての分野の施策を手掛ける「フルセット方式」の行政運営では、住民の暮らしが維持できなくなるため、複数の市町村で構成する「圏域」を新たな行政主体として法制化し、連携して行政サービスを担うというものです。
しかし、地方の側からは、「国が選択肢を示す手法は集権的」「市町村の独自性がなくなる」といった反発の声が上がっています。
こうした現状もふまえ、本書では、自治体本来の「使命(ミッション)」が、「今日と同じように明日も暮らし続けられること」であることに立ち返り、研究会報告と似たようなデータを使い、似たような分析を行いながら、もう1つの自治体の未来を展望します。

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Posted by ブクログ

2018年初版の本。2018年当時に読んでから、2024年に改めて読み直しましたが、本書の内容は色褪せることなく、むしろより切実に感じられました。

国が出すドキュメントなどをそのまま鵜呑みにするのでなく、(本書のように)批判的な意見も読むことで、より自治体への理解を深めることができると思います。特に(自治体を顧客に持つITベンダーの社員である)自分に響いたのは次の内容でした。

①少子高齢化により労働力に制約が生じるから「業務のあり方」を変革するというのはおかしい。公的部門の役割は、市場原理の社会から疎外されたりする社会的弱者を支えるところにある。そのような「本来担うべき機能」を精査して、それを維持するためにどうするかというのが発想の流れであるべき。

②AIやロボティクスなどIT技術を利用して「職員は企画立案業務や住民への直接的なサービス提供などの業務に注力する」と言うが、同じことは40年前の大型コンピュータ導入の時から言われている。現実はそうならず、業務量は増加。ITは単に大量の計算処理をすることばかりでなく、コミュニケーションツールとして使われ、市民から大量の問い合わせや国・都道府県から頻繁に照会・調査依頼が来るようになった。いつでもどこでもネットに繋がることで、時間や場所を問わずに仕事に巻き込まれ、職業倫理の高い人ほど日常的に隙間なく緊張を強いられる。住民への直接的なサービス提供を割く時間が増えるという見通しは現実に合致してない。AIについても、行政は福祉・課税など毎年のように制度変更があり、かつ、誤った対応は許されないため、モニタリングが必須。

③情報システムの標準化・共通化も要注意。カスタマイズを無くしシステム投資を抑制すると言うものだが、そもそもナショナルスタンダードで行政実務を執行しなければならないのであれば、国が直接執行すべき。自治体を国の出先機関のように捉える発想が誤り。まず国がやるべきことと自治体がやるべきことの見直しが先。その上で、自治体は多様な地域社会に対して独自の行政サービスを提供する必要がある。単純にカスタマイズは無くすべしといった独自の行政サービスを提供すること自体を否定するような考えはおかしい。地域社会や自治体が多様であることが問題なのではなく、多様な地域社会や自治体に対して標準化・共通化を求めるから問題が生じる。

④自治体のミッションは「今日と同じように明日も暮らし続けられる」ということを市民に保障すること。将来に向けてそれを困難にしているのは、少子高齢化よりも、「余計な仕事や責任」を強要されていること。自治体に自立性が欠けているのではなく、自治体の自立性を奪うようなアプローチが繰り返されているということ。

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2025年01月02日

Posted by ブクログ

『今日と同じように明日も暮らし続けられることを住民に保証すること』を自治体のミッションと捉え、地域社会や自治体行財政の未来についての展望を記している。
本書を読んで、この『ミッション』の意味を個人的に考えてみた結果『社会情勢や環境の変化によって住民が新たな不安や不満を抱かないように、先を見通して柔軟に対応できるよう準備すること』なのかなと思った。先を見通す事は、現状を正確に捉える事から始まる。柔軟性を持つには変化を恐れない、前例踏襲、現状維持思考を捨てること。
自治体職員だけでなく自治体職員を目指す人も読んでおくといいと思った。

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2019年03月10日

Posted by ブクログ

自治体の将来について、現場の職員視点での問題点や業務レベルでの課題なども書かれてあり、参考になった。
そもそも、国が市町村へ委ねる政策などが実態と乖離しており、施策が破綻していることが多いということを理解すること、国の施策が必ずしも正しいという先入観を持たずどうあるべきかを考えながら施策を見る必要があることが学びになった。実務でも行政と向き合うことが多いが、それぞれの立場から考えた上で向き合うようにしたい。

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2023年11月04日

Posted by ブクログ

本書は、2018年7月に総務省の自治体戦略2040構想研究会報告書の方向性に対して、批判的なスタンスである。
本書の中で、特に注目するのが、「6章 自治のゆくえ」のうち「計画による統制」である。国が自治体に策定を求める計画が増加しており、法令上は「任意(できる規定)」や「努力義務」規定であっても、地方創生の地方版総合戦略のように、事実上全自治体での策定が求められているものがあることを、国と自治体は「対等・協力」の関係とした分権改革と遠い世界になってしまったと表現し、厳しく非難している。単に仕事を増やすだけでなく、計画策定を通して、国から自治体に責任が転化されることを問題視しており、著者の指摘は非常に納得するものである。

また、また、現在の地方自治制度の問題点として、多様な地域社会を反映する多様な自治体に対して、全国一律、画一的な「標準化・共通化」を押し付けていることを挙げている。そもそも、国レベルで、標準化・共通化が必要な業務は自治体そのものの業務とは言えないとも指摘している。
この点で、総務省の報告書が、自治体行政の標準化・共通化、行政のスタンダード化を志向していることと基本的な考え方を異にしている。

個人的には、地方分権改革を経てもなお、現行の国の機関、自治制度上、地方自治体は国の政策のアウトプットを担う側面は大きく、その点総務省の報告書の言うように標準化や共通化は必要でないかと思う。また、報告書の趣旨としても、すべての業務を標準化、共通化できる業務と捉えておらず、できるものについて進めることで企画や住民サービスに人材を充てることを目的としているのではないか。

著者の言うように標準化できるものはむしろ国がやるべきという主張は正しいように思われるが、国の機関で担うには新たな地方機関の新設や人の関係上難しいだろう。

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2018年11月07日

Posted by ブクログ

タイトルとは異なり、2040年の自治体の状況を予想したものではない。
いろいろな分野での自治体の課題を説明した入門書として良いのではないか。

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2018年10月28日

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