【感想・ネタバレ】葛飾物語のレビュー

あらすじ

ここを子供らの故郷にしよう…戦前から東京の下町・葛飾で、肩寄せ合い助け合って暮らした春野家と三軒長屋の仲間たち。本家もなければ分家もない、いわば故郷を喪失した彼らが、敗戦―戦後復興―高度成長と時代が流れ、それぞれ人生の悲哀を乗り越えながら、今年もまた春野家当主の命日に集う――著者が自らの故郷・葛飾を舞台に、戦中・戦後・平成と時代の奔流の中で、たくましく生きた庶民の〈昭和〉を描く長編小説、ついに電子化。

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Posted by ブクログ

 昭和十八年から平成二年まで、葛飾は立石の長屋の人々が、故人の命日に集まっては酒を酌み交わしつつ往時を偲ぶ。しかし時は容赦無く過ぎていく。敗戦をむかえ、高度経済成長のなかでそれぞれが必死で生き抜いていこうとするが、年をとっていくことはどうしようもない。かつて集っていた面々が、ひとり、またひとりと旅立っていく。そして、あの酷い、誰も望まなかった戦争を始めた、とてつもなく罪深い者も下血して旅立ち、元号が変わる。土地に刻まれた人々の暮らし。人々は移り変わり、土地もまた姿を変えていく。誰の記憶にもやがて残らなくなっていく日々の営みは、しかし、かつて、その土地に確かにあったのだ。

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2023年10月10日

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