あらすじ
アルバトロス号に乗り、大量の魚類博物画をアメリカに残した伊藤熊太郎。
彼が遺した芸術的な金魚図譜を追い、いまだ解明されざる明治博物学史にまで照明をあてたマニア必読の書!
かつて図鑑は写真ではなく、画工が描く細密画(博物画)で種を解説していた。
この物語では明治後期から昭和初期に日米を股にかけ活躍した博物画家伊藤熊太郎の謎に包まれた生涯を解き明かしていく。
そして、新発見された「魚譜」。
この極細部にまで観察が行き届いた究極の31枚の博物画(金魚が中心)は、熊太郎の筆によるものなのか?
「開運!なんでも鑑定団」で熊太郎の絵を見定めた安土堂書店店主八木正自氏、博物学の権威で、東京海洋大学に眠る熊太郎作品を発掘した荒俣宏氏らを訪ねて「魚譜」の正体に迫っていく。
本書ではもはやアートといってもよい「魚譜」に収められた図版すべてをカラーで紹介する。
■内容
目次
序文 特別寄稿 伊藤熊太郎―日米博物画交流史の一挿話 荒俣 宏
まえがき
第1章 幻の魚類博物画家・伊藤熊太郎
第2章 新発見の『魚譜』がこれだ
第3章『魚譜』をめぐる謎
第4章 伊藤熊太郎の生涯
第5章 伊藤熊太郎の足跡を探して
第6章 博物画の過去と現在、そして未来
あとがき
参考文献
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Posted by ブクログ
明治時代、画工であり博物画家であった、伊藤熊太郎。
彼は海洋調査船に乗りアメリカに渡って、博物画を描く。
偶然に彼の魚の肉筆画を入手した著者が追うのは、
忘れ去られた画家の足跡と生き様。そしてその博物画。
・序文 特別寄稿 伊藤熊太郎ー日米博物画交流史の
一挿話 荒俣 宏
第1章 幻の魚類博物画家・伊藤熊太郎
第2章 新発見の『魚譜』がこれだ
第3章 『魚譜』をめぐる謎 第4章 伊藤熊太郎の生涯
第5章 伊藤熊太郎の足跡を探して
第6章 博物画の過去と現在、そして未来
・あとがき 参考文献有り。
表紙の金魚の絵の美しさに魅せられての、読書。
著者が偶然に古書店で出会った「魚譜」。
この本の絵に一目惚れし、この本の謎を追い求めることに。
奥付無し、作者も製作年も不明。
だが更なる偶然から、伊藤熊太郎の作品の可能性を知る。
多くの書籍、アーカイブデータなどを調べ、
様々な人に意見を求め、これは肉筆か印刷か?
著者は伊藤熊太郎なのか、更に彼の足跡を探ってゆく。
その生涯は実力と縁での歩み。
中島仰山に弟子入りし、画工の道へ。
博物局、水産調査所などとの関わり。
米国海洋調査船アルバトロス号に乗船しフィリピン調査航海へ。
日本に帰国。
アメリカのシアトルに渡り、画工としてワシントンの
米国水産局に勤務。アルバトロス号で描いた下絵を
彩色図版に仕上げ、その原画はスミソニアン博物館へ。
日本に帰国。
水産講習所などで数々の魚の絵を描く。図鑑にも絵が掲載。
だが、何時どこで亡くなったのかもわからない。
とにかく熊太郎自身の情報や記録がほとんど無かった。
でも現在、は彼の存在は再評価され、
スミソニアン博物館では伝説の博物画家として語られている。
それにしても、よくここまで調べたなぁと、感心しきり。
多くの人々や機関などに連絡をして、更には縁を結ぶ、
その熱意に感銘を受けました。
そして今後、新事実が現れることを切に願います。
Posted by ブクログ
40年近く前に初めてもらったボーナスを握りしめて古本屋街で購入したかった図鑑をゲットしてホッとした著者。そんな著者に古本屋の主人は古い魚の絵(主に金魚)を見せた。誰が描いたのかも分からないその絵(魚譜)に魅せられた著者は、値段もついていないその本を古本屋の主人から無理やり購入。これがストーリーの始まり。
それから時は30余年が過ぎる。
著者はたまたま観ていたお宝探偵テレビ番組で自分が購入した「魚譜」とタッチがとても似ている絵が掘り出し物として出ているのに気づいた。
描いたのは伊藤熊太郎。
写真技術の発達していなかった100数十年前、図鑑は誰かが描いた絵に頼らざるを得なかった。こうした絵は博物画と呼ばれ重宝されたが、描いたのは誰か?どんな人だったのかを示す資料はほとんど存在しない。
筆者がたまたま手に入れた「魚譜」は伊藤熊太郎が描いたものなのか?伊藤熊太郎とはいったいどんな人物なのか?
限られた資料をもとに著者がひとつひとつ史実を明らかにしていく過程にいつの間にか私も引き込まれていた。
著者自身あるいは伊藤熊太郎の親族、歴史の研究者、さらにはアメリカの関係者が伊藤熊太郎に関する新たな史実を発見しこの本がさらに成長をしていく姿を見てみたい。
そんな思いをさせてくれた作品。