【感想・ネタバレ】アラブの格言(新潮新書)のレビュー

あらすじ

神、戦争、運命、友情、家族、貧富、そしてサダム・フセインまで――。素早く、簡潔に、かつ深くアラブ世界を理解するには、彼らの世界の格言を知るに限る。「追う者と追われる者は、共に神の名を口にする」「一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ」など、古来より伝承され数多ある中から530を厳選。そこに加えられた著者独自の視点、解説によって、鮮明に浮かび上がる「アラブの智恵」とは。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

ちょっと古い本(2003年発行)ですが、当時のホットな話題であったサダム・フセインとアメリカとの戦争にも絡めて、アラブ世界の様々な格言を紹介しています。

「アラブ」というざっくりした切り口なので、当然ながらそれぞれの格言が生まれた背景や使われている国はバラバラ。それでも、似通ったものを大きなテーマごとにまとめ、分かりやすく紹介しているところは、さすが曽野さんといったところ。
アラブの常識や文化というものを理解するための一つの手段として、名言・格言という切り口から入っていくのも、なかなか面白いと思います。

0
2012年05月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 アラブの価値観に触れることが出来ます。それは、日本的なものでも欧米的なものでもありません。砂漠の民が何を祈り、どんな気持ちで戦っているのか、短い格言を通して手軽に知ることが出来ます。


=====【以下、引用】=====


■p23
*もしも神が許さなかったら天国は空っぽになる(アラブ)

p27
*断食して祈れ。そうすればきっとよくないことが起こる(レバノン)

 誤訳でも誤植でもない。信仰などで事はよくならない、という皮肉な現実認識である。

■p33~p34
 現代においてもなぜこの部族対立が続くかというと、これも私の実感にすぎないのだが、こうした心理の育つ土地には、今でも電気がないのである。(略)民主主義を育てたのは電力である。それならば、電力の恩恵を受けない土地では、どのような支配体制が行われているかというと、族長支配なのである。
 (略)民主的な選挙をしようにも、電気もなく、通信手段もなく、テレビもなく、交通手段も原始的なままとすれば、形ばかりは民主的投票システムを採用したとしても、充分にそして安全に機能しないから、現実の政治は、依然として封建的族長政治の形態をとり続けるより仕方がないのである。そのことを我々は理解しなければならないし、非難してはならないと思う。

■p35~p36
*一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ。(アラブ)

*天使に支配されるよりは、悪魔を支配する方がいい。(マルタ)

 アメリカは「解放」を最上の美徳の一つとするが、彼らはそのようなものに何の魅力も感じていない。部族の支配とはむしろ解放の不安から守ってくれるものなのである。支配者がいないということは、真空と同じ恐ろしい空間になる。

*鼠の正義よりも猫の暴政の方がましだ。(レバノン)

■p37
*首長が死ぬと、同盟関係も死ぬ。(アラブ)

■p39
*金持ちが蛇を食べると、人々は「なんて賢い」と言う。貧乏人が蛇を食べると「馬鹿な奴だ」と言う。(アラブ)

■p41
金の装飾品が、郵便局や銀行の代わりにベドウィン(遊牧民)たちの貯金の方法となっている

■p42
「前の人の方が貧しいように見えましたが、貧しい人にたくさんおやりになるんではないんですか」
 社長は答えた。
「人間には皆分相応ということがあります。富んだ暮らしをしている者にはたくさん与えねばなりません」
 それがアラブの知恵というもので、貧しい人に恵むと言っても「過度の寛大は愚かさと同じ」ということをこの社長は知っていたのである。

■p44~45
*もしも本当に敵を悩ませたいと思うなら、何も言わずに彼を一人にしておけ。(アラブ)

 戦いをおこす原動力はいくつかあるが、そのもっとも普遍的なものは復讐である。(略)自分の家族、部族、財産、権利、あるいは恥の感覚などに対して加えられた暴力を人は決して忘れることはない。そしてその傷から立ち直る唯一の方法は、復讐を実行することなのである。
 (略)「目には目を、歯には歯を」は、決して復讐を勧めたり、拡大させたりするものではなく、むしろ受けた傷と同じ量だけ厳密に返すようにという「同害復讐法(レックス・タリオニス)」を明記したものであった。つまり、目を一つ潰された男が、怒りにまかせて相手の両目を潰すことがないように、一つの耳を切り落とされた男が、相手の両耳をそがないように規制したのである。

■p46
 アラブ人たちは復讐について次のように考えているのである。

*復讐は恥を消す。(アラブ)

*復讐をしないやつはロバ(馬鹿なもの)の甥。(スーダン)

*俺の壷を一個割ったら、百個割返してやる。(アラブ)

*犬の血の値段は、犬一匹だ。(レバノン)

*一人のアラブ人の正義より一人のトルコ人の圧政のほうがましだ。(アラブ)

*復讐をするのは恥ではない。(レバノン)

 ただし彼らはこうも言っている。

*復讐はありきたり。慈悲は希有なもの。(アラブ)

 しかし復讐は徹底的に完了しなければ意味がない。

*蛇を殺すときには、頭をこなごなにしたことを確かめろ。(イラク)


■p49
*死ぬ予感は、死そのものより悪い。(アラブ)

■p189
*アラブ(ベドウィン)は帰ってくる。(アラブ)

 ベドウィンたちは一度襲われたら、たとえいったん負けて逃げようともいつか必ず帰ってくるという意味だそうである。
 彼らは、他部族と確執があれば決して忘れない。彼らと戦った人々はそのことを知っているのだろうか。

0
2011年05月28日

「雑学・エンタメ」ランキング