あらすじ
「韓非子」の内容上の特徴を一言でいえば、人間不信の哲学のうえに立って、権力のあり方を追求している点にある。人間の実態を見すえながら権力の本質を分析し、トップの置かれている困難な立場をうきぼりにすることによって、権力維持の方途をさぐった本、それが「韓非子」にほかならない。
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Posted by ブクログ
人間不信の哲学たる韓非子です。ちなみに同じ訳者で新しいのが出版されています。
古典を引用し訳と解釈を付けているものですが、非常に面白い。人間は己の利する所に依って行動する、と。徳を以って~と言った論語と反対の内容ですが、学ぶ所が多い。個人的には韓非子の方がしっくり来ます。
上に立つ者が部下をどう操るか、制御するか、また下に立つものがどのようにして上の人間とやっていくか、それぞれが個人の立場から利を追求するという概念に於いてその解を出しています。
語るべき事は序章に記されています。ベースと成るのは、「法」を貫徹し、「術」を駆使し、「勢」握ること。
信賞必罰。「刑」と「名」の一致。心の内を見せない。仁義に拘り過ぎない。カナメを押さえる。二言をしないこと。約束を守る。一人の部下に任せない。部下の忠誠を当てにしない。側近の言葉に惑わされない。ヒトを頼まず自分を頼め。他国を当てにしない。etc
徳を以ってヒトや組織を管理する、これはこれで立派なことだろうと思いますが、現代社会・国家程組織が巨大に成り、腐るには長過ぎる時間を生きれば、多くの要因からヒトと組織を全体最適化・トップの目的の為に動かすのは至難でしょう。ヒトは己の利する所に依って行動する。個人が利を求める行動が結果として全体最適化に進めばいいのでしょうが、そんなに簡単な行動ではない。市場経済のみを見ても、神の見えざる手は完全には機能していない。ヒトの利する所を制するシステムを以って、個人が己の利を追求することを抑止、若しくはそのベクトルを強制的に変換するようにしてやる必要がある。
ヒトは放っておけば大なり小なり個人の利を追求する、トップ足る者はこれを念頭に置かなければ成らないだろう。