あらすじ
野鍛冶、萱葺き、箕作りなど手仕事に生きる人々を全国に訪ね、技の伝承や職業的倫理観などを考察、「職人」を通して「仕事」の根本を考え直す。
第1章 消えた職人たち
第2章 輪廻の発想ーー尽きない材料
第3章 徒弟制度とは何だったのか
第4章 手の記憶
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Posted by ブクログ
今は後継者がいない、あるいは数少ない手仕事の現場を訪ね、職人さんたちの聴き書きを重ねて出来上がった本。
以前から手元にはあったのだが、なかなか読めずにいた。
先日読んだ梨木香歩さんの書評にも取り上げられていたのを機に、読み始めた。
第一章では、昔は小さな集落にもいたという野鍛冶や、箕作り、屋根板を挽く木挽、手作りの釣り針の職人さん、サバニ舟の大工などの聴き書き。
たしかに、石垣を作る職人さんの章などは、ただただ面白い。
職人さんの聴き書きを、著者の塩野さんは、その地方の言葉を交え、きっとそんな風に語ったのだろうと思わせる書き方をする。
でも、たくさんの職を見ていく中では、正直、写真が欲しいな…と思ったり、こういうのって、NHKかなにかのフィルムに残しててほしいよな、と思ったりしていたが。
しかし、それはとても皮相な読みだったに違いない。
本書はこうした手仕事が滅びる理由を、ただ効率化や消費者の嗜好の変化だけに求めない。
一つの職が消えると、それが利用していた山の資源の再生の輪が途切れ、他の職人が使っていた材料も得られなくなるといったことが起きるというのだ。
職人の倫理ということにも目を啓かれる思いがする。
職人はよい材料を使い、技を磨いて、少しでもよい品物を世の中に出そうとする。
だから、職人が世を去る時、大名人であったとしても、その人のもとには何も残っていないのだという。
人ともに消えてしまった考えかたもたくさんあるのだろう、とも想像される。
また、職人の養成についても、聴き書きがある。
通いが許されたり、家事雑用に追われることがなかったりする場合もあるが、基本的には若い時から住み込みで、師の技を見て学ぶことが求められる。
師匠は教育の専門家ではないから、教え方は知らない。
育っていくかは、弟子の向上心次第。
うちの子どもは頭が悪いから漁師にはしなかった、という漁師さんの言葉が重い。
このような職人養成のあり方が、近代的な教育とは相いれないことは想像がつく。
職人の滅びの原因は、ここにもあるのだなあ、と気づかされる。
Posted by ブクログ
手仕事に生きる職人たちを筆者が一人一人訪ね歩き、話を聞き書きしたものを纏めた文庫版です。僕は偶然本書を手にすることが出来ましたが、新しいものと古いものの間で揺れ動き続けるものを記録した貴重な一冊です。
僕がこの本を読むきっかけとなったのはとある施設に用事があって、暇をもてあましていたときにそこに所蔵してあるライブラリーの中の一冊であったからでございます。ここに記されているのは野鍛冶、萱葺き、箕作り…といった連綿と続く手仕事の世界に生きる職人たちを筆者が訪ね歩き、彼等の話を聞き、まとめ、自らの考察を加えたものを文庫した一冊です。
こういうことを言うのは自分でも口幅ったいことですが、職人のなりそこないで、ここに登場する彼等のようなきびしい職業観を持ち合わせていない男がこの文章を書くことは非常に躊躇を心のどこかで感じているわけですが、登場する職人たちの言葉は、非常に含蓄に富んだもので、そういうことを感じ取れるだけでも、自分が過ごした人生に無駄な箇所はないのかなと、自分で自分を慰めているのが現状でございます。
竹細工を作る職人や、炭を焼く炭焼き、山から切り出された木を板にする木挽。彼等に脈々と伝わってきた「わざ」と「こころ」が現在の大量生産、大量消費の風潮によって、もはや風前の灯であると筆者は後半で説いております。職人の持つ技術はそれを使う消費者や、諸君が精魂こめて作った商品をを買い上げ、流通させる商人たちの厳しい『目』があったからこそであるという記述を読んで、あまりそういったものを求めていない自分に気づかされて、とても複雑なものを感じました。
そして、厳しい徒弟制度をとおして培われる職業観や、仲間内での仁義や礼儀作法を通じて「人が育つ」という文化にも触れられており、こういうこともなくなりつつある、という記述もあり、これで育った人間は文字通り『一人前』になるのでしょうが、なかなかついていくのは大変であると、個人的には思っております。ここに記されているものは『失われていく』技術や人間たちへの『惜別の辞』であり、『挽歌』のようなものであると、読み終えた後にそういうことを感じ入った次第でありました。
Posted by ブクログ
懐古、感傷、寂寥の強い香りに多少たじろぐ。
効率化はされているし、消費第一の世の中ではあるが、大量生産の現場においてもそれでもいいものを作ろうと試行錯誤している職人がいないわけではないことを知っているので、この本に完全同意!とはならないけれど、それでも弟子の教育については思うところあった。
100年後のものづくりはどんななんだろうなあ。
Posted by ブクログ
従弟制度とはなんだったのか、昔の師弟関係のこと、考え方、今の師弟関係のあり方、なぜ職人がそのような師弟関係を築いて仕事をしていたのか、どのような生活でどのような教わり方をしていたのか、なぜ職人はいなくなっていったのか、生き方、考え方、などなど
後半の章が面白かった。
社会が変わり、買い手の考え方も変わったから、作り手も存在できなくなってしまう。
親方は先生ではない。教えるプロではない。
ただ、現場を与え、仕事をする姿を見せる。
職人としての生き方を見せる。
教わる側次第で一人前にもなれるし、やめることもできる。やる気がない人を鼓舞する必要なんてない。学校の先生じゃないから。
なんとなく詳しく知らない状態で、職人ってかっこいいよね、とか思っていたくらいのレベルの知識で読んだ本だったから、
職人たちの考え方や在り方、どんな存在なのかを知ることができた。