あらすじ
【メディア紹介情報】
・読売新聞(2022年10月30日)小川さやか氏(立命館大学教授)
・「じんぶん堂」(2022年11月2日)「「まさか」の本との出会い:『暴力のエスノグラフィー』の衝撃」前田健太郎氏(東京大学教授)
・朝日新聞(2022年11月19日)犬塚元氏(法政大学教授)
・東京新聞(2022年12月24日)「2022 私の3冊」松村圭一郎氏(岡山大学准教授)
・図書新聞(2022年12月24日)「2022年下半期読者アンケート」佐藤泉氏(青山学院大学教授)・奥野克巳氏(立教大学教授)
・『HUG』Vol.1(2023年1月号)「食肉処理場潜入ルポ 暴力を可視化する試み」
・『週刊東洋経済』(2023年1月21日号)「政治学者が屠畜場に入り「視界の政治」を実践する」橋本努氏(北海道大学教授)
・図書新聞(2023年02月18日)「現代の巨大な産業システムを「視界の政治」で考察――隠蔽・隔離と監視に支えられた屠殺場の暗部に迫る」河島基弘氏(群馬大学情報学部教授)
1日に2500頭の牛が食肉処理される産業屠殺場――その現場に政治学者が覆面労働者として潜入し、不可視化された暴力の実態を明らかにする。さらに屠殺の観察を通して、現代社会における監視と権力、暴力の恩恵を受ける多数者の矛盾と欺瞞、そして〈視界の政治〉の輪郭を浮かび上がらせる。
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現代の屠殺場の壁の向こう側で何が起こっているのか、読者は知りたくないかもしれない。しかし、パチラットの驚くべき語りは、虐待された動物や貶められた労働者以上のものを教えてくれる。われわれが生きている社会がどのようなものであるか、目を開かせてくれるのである――ピーター・シンガー(『動物の解放』著者)
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Posted by ブクログ
筆者は社会学者。アメリカの牛の屠殺現場、屠殺工場と言える場に労働者として入り、克明にその様子を描く。それは想像以上のむごい世界なのだが、筆者の目的は、都合の悪いものを隠蔽することで世界が成り立っていることを示すこと。ゆえに屠殺工場の説明が、ただの残酷描写であるだけでなく、それが意味するものにまで及ぶ。そしてこの工場自体が最初の一番つらい部分、個性を持った命ある動物から均質化された工業製品になる部分は徹底的に隔離・隠蔽されて成り立っている。この世界そのものなのだ。都合の悪いことは隠蔽することが文明化である、人々は暴力のもたらす恩恵を享受しながら文明人でありつづける。筆者はそれらを可視化する『視界の政治』への変化、変革を提唱している・・・のかな?隠蔽されていることは屠殺ばかりでない。それらをすべて可視化することなんて不可能かもしれないが、目指す方向としてあるべきかもしれない、その方がもっと世界は豊かになるような気がする。それにしても、なんかもう、牛を見るのがつらい。何かが行き過ぎているのを感じる。だからって、何ができるのかなぁ
Posted by ブクログ
権力による暴力がどのように監視・隔離されて社会の中に存在しうるのか、ということを知りたくて読んだ。
そしたら冒頭いっぱつめから屠殺場の事細かな工程と見取り図が出てきて、出鼻を挫かれた。私は屠殺反対論者としてこの本を読むのではないんだ…。
だが、読み進めていくと、作業工程がどのように分断されているのかがよくわかるし、それゆえ死への一撃を食らわせる担当者以外は屠殺に加担している意識がとても低くなってしまうメカニズムもよく描かれていて興味深かった。
フーコーをちゃんと読めば、この辺の論理をもっとクリアに理解できるのだろうなと思う。
今の私のレベルではざっくりレベルの理解。
そして、自分がこの本を読んでいる最中に焼肉を食べに行ってしまったことによって、私自身も屠殺に加担していることへの意識がどれだけ低いのかを逆に痛感させられ衝撃だった。
あの日の焼肉は一生忘れないと思う。