【感想・ネタバレ】こどもの頃のこわい話 きみのわるい話のレビュー

あらすじ

記憶の底にこびりつく、忘れたほうがいい「何か」
追憶の怪異体験45篇

幼少期に目撃した奇妙な光景、いま思い出してもぞっとする体験。
それぞれが己の胸にあれは何かの勘違いか夢であったと封印してきた記憶を静かに呼び覚まし、丹念に聴き集めた怪異取材録。
公園から聞こえる太鼓の音。そこには見えない猿をつれた猿面の男がいて…「猿なし猿まわし」
友人家族と行った異形の集う焼肉屋。そこで食べた定番メニューにないものとは…「焼肉ハナ」
新興宗教に入信していると噂の同級生の家。そこでは信者たちがスイカのようなものを撫でながら唱え言を…「くびぞろえ」
小学校の学級文庫にあった不気味な挿絵付きの児童書。誰もがそんな本はなかったと言うのだが…「首のない女の子の話」
両親以外の男女と暮らしていた謎の記憶。そこで繰り返される不気味な儀式とは…「家族こっくりさん」
祖父母の家に泊まった夜。仏間の明かりに誘われ中を覗くと、そこには異形と男女二人の淫靡な光景が…「餓鬼ねぶり」
母の化粧台の引き出しから出てきた烏帽子姿の男。家のトイレから繋がる異界の先に見たもの…「おばけの世界」
母が亡くなって以来、部屋に閉じ籠もるようになった父。部屋には母と娘二人を模したマネキンがいて…「人形地獄」

他、追憶の45話収録。


猿面の人物は相変わらず、タタタン、タタタン、と同じリズムで太鼓を叩き続けている。
よく見れば、ジャングルジムの下のほうに犬用のリードみたいなものが結びつけてあり、その先にはこれもまた真っ赤な革製の首輪がつながっていた。
猿なし猿まわし。
そんな言葉を当時の康介さんが思い浮かべたかどうかは定かでないが、気味が悪いと感じたのは事実だ。
おまけに、その太鼓の音を聞いていると、不思議と不安な気持ちになってくる。
心拍数が増え、腋の下から汗がにじむ。
腰から下の力が抜けて、体温が奪われていくようだ。
「……あれ、ちょっとダメなやつかも。もう行こうぜ」

――「猿なし猿まわし」より

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

今年読んだ本で3本の指に入る怖さだった
こどもの頃の話は、あいまいではあるが嘘がつけないというか、リアルな感じがする
短編でサクサク読めるのも好みでした

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2025年12月09日

Posted by ブクログ

いろんな人の子供の頃の怖い話。最初は不思議でなんとなく怖い、くらいの話が多いなと思って気軽に読み進めていくと、だんだん積み重なった不気味さ、理不尽さ、意味のわからなさが重くなってきて、そのせいなのか臭いや視覚の描写がリアルに迫ってくる感じがして、ゾワゾワした。面白かった。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「こどもの頃の~」というタイトルと、このレーベル(竹書房怪談文庫)ではほとんど見かけない、一見愛らしい表紙デザインに油断して読んでいるとざっくりと心を抉られる。事故物件や曰く付きの土地、怨念の籠る事物などに纏わる幽霊譚、言い伝えられてきた禁忌を犯した報い……といったある意味定番の心霊怪異譚とは明らかに異なる肌触りの、因縁や因果もすっ飛ばし、記憶の底で澱んだ不気味で不条理な体験談45編。

 中には、子どもの当時に見た夢や、テレビ番組や読んだ漫画などなどが記憶の中で再編集されていたのでは―と勘繰りたくなるほどどうにも理解し難い話も確かにあるが、形而下的な知識や常識に捉われない子供だからこそ見た、体験したという読み方もできるのかも。何れにせよ体験者の子供の頃の記憶という、どうにも確かめようも実証もしようのないものだけに、そのもどかしさが余計に気味の悪さ居心地の悪さを感じさせるような。

特に印象に残ったのは……かつて犬が多数飼われていたという廃屋に忍び込んだ3人の少年の運命(「犬屋敷」)、顔のない男性に遊んでもらった記憶が後年思わぬ形で噴き出す(「無貌三題」の3話目)、中学時代に駅で目撃した人身事故の記憶を恋人に語る女性(「わすれないでください」)、蜥蜴人、自ら出した炎に包まれる同級生、マネキン小屋の当番、田んぼ道に現れたキングコブラ……不可解で不気味なオムニバス譚(「贋・真実の世界」)、近くの山に先祖が建てた石碑があると知り、少年は祖父と共に山中を探し始めるが(「先祖の石碑」)、園児が繰り返し描く、家族の絵の中の不可解なもの(「別れる理由」)、火難に見舞われた同級生の自宅。その直前、友人たちに届いていた薄気味悪い手紙(「死体ペンギン」)など。

 幸いなことに自分には子供の頃にこういった怖い記憶、不気味な記憶はないのだけれども……無意識に思い出さないでいるだけ、だったりして。

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2025年10月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「え?何だったん??」「この後どうなったん??」な夢とも現実ともつかない奇異な体験談ばかりだが、それが45話も集まればりっぱな怪談となり、その気味の悪さに背筋が寒くなる。
子どもの記憶違いで解決できる事案がほとんどなんだろう。でも大人も一緒に体験した『猫頭』や『いやな宿』は…。非科学の存在や現象を嫌でも意識してドキドキするなぁ。
一人で体験するのも怖いけど、複数で体験するのも勘違いで終わらないから怖い。
怖いもの見たさで『焼肉ハナ』と体験者ももう一度と期待する『おばけの世界』にはちょっと行ってみたくなった。

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2025年12月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『きつね』、『別れる理由』、『富士山を見る』、『オボザワススグ』、『死柱にこうべを垂れよ』、『人形地獄』が現実と幻想の塩梅が良く、良いゾワッと感だった。
幼少期の記憶を中心に収集されて話の為、基本的にどこかボヤッとしていて、ほん怖とかフィクションのような決めのオチ(幽霊の出自、場所のいわく)が無いのが多い為、「そこで終わり?」となる反面、これぐらいの方が現実味があって、ある意味「怪談らしさ」が出ていて良かった。

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2025年11月11日

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