【感想・ネタバレ】世界のほうがおもしろすぎたのレビュー

あらすじ

正体不明という生き方。

「ぼくが目指したことは、すべて編集です」
異能の編集工学者が謎に包まれたその生涯と秘策を一気に語り明かす。
ロングインタビューによる、最初で最後の「自伝」。

「若者の教祖」「知の巨人」「博覧強記」──。
あらゆるレッテルを嫌い、「生涯一編集者」であることに徹した松岡正剛。
その歩みは理科少年の時代[ころ]に抱いた自己同一性への疑問に始まっていた。
十数時間におよぶ、生前最後にして初の自伝インタビューを完全再録。
また付録として、未発表稿及び年譜を掲載。

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【本文より】
「遅ればせ」ということを、わりに早くから自覚していたんです。
あえて遅滞する、遅延するということです。
ふつう遅れるというのは、とろいこと、才能が発揮しにくいとか、
コミュニケーション能力がないということです。
でもぼくは「遅ればせ」がいいんだと思ってやってきた。
こういう感覚は若いころからありました。
おそらくぼくが編集に関心をもったことにも関係していたんだろうと思います。──

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【目次】
第1章……正体不明のゴースト
■自己同一性がわからない
■科学のデーモンと精神のゴースト
■「粗より」という方法
──断章[フラグメント]1:「きのふの空」(『擬』第一撤)

第2章……「世界」のおもしろみとメディアへの憧れ
■その奥に何が見えるか
■理科少年の目覚めと抵抗
■「自分」の確立から遠のくということ
■新聞づくりと印刷技術に夢中になる
■革命的マルクス主義の前線で
──断章2:極上の迷宮(『概念工事』より)

第3章……アルス・コンビナトリア事始め
■「ハイスクール・ライフ」編集長になる
■稲垣足穂に翻弄される
■オブジェマガジン「遊」の誕生
■杉浦康平からの宿題
■すべての「可能性」を逃がさない。誤植とか、誤配とか
■超絶アルス・コンビナトリアとそのコツ
──断章3:歳視記2

第4章……すべてはアナロジーのために
■人が人を、噂が噂を連れてくる
■なぜ本に孔を空けたのか
■科学と精神と機械はまぜこぜに
■中断こそ決断、中断万歳
──断章4:振舞の場所(『フラジャイル』より)

第5章……編集工学の胎動と脈動
■万博とNTT民営化と『情報の歴史』
■複雑系・割れ目・ノンリニア
■編集工学は「知」を自由にする技術
■企業人たちとの交流
■トークは「装置」から考える
■高気圧先生の大学奮闘記
──断章5:頭の中で電話が鳴っている(「ハイパーリヴ」)

第6章……編集の国から生まれた学校
■早すぎた「編集の国」構想
■「たくさんの自分」から始まる学校
■イメージメントとマネージメント
──断章6:埒外案内 2000年12月(一到半巡通信)

第7章……歴史の網目のなかで千夜千冊を紡ぐ
■千夜千冊は書評ではない
■千夜千冊達成と胃癌の顛末
■他者と自己の問題を再編集する
■千夜千冊を新たなエディションにする
■本棚の文脈が読める空間
──断章7: 編集工学的読書論(『學鐙』2024年9月)

第8章……虚に居て実を行う
■写真家たちのアート・ジャパネスク
■方法日本を奮い立たせる
■近江に思考の拠点を移してみると
──断章8:主客の遊び(『日本数寄』より)

◆松岡正剛年譜


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松岡正剛(まつおか・せいごう)
編集工学研究所所長、イシス編集学校校長。生命・歴史・文化にひそむ仕組みを「編集」の観点でとらえ、方法的に用いて新たな仮説や問いを創造する「編集工学」を確立。おもな著書は『知の編集工学』『知の編集術』『花鳥風月の科学』『17歳のための世界と日本の見方』『日本流』『日本文化の核心』ほか多数。2000年よりインターネット上でブックナビゲーションサイト「千夜千冊」を連載、2018年より文庫シリーズ「千夜千冊エディション」30冊刊行。2024年8月逝去。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

生前のロングインタビューの他、未発表の原稿もいくつか。本当に偉大な業績をのこしたものだと思うし、いっしょの時代を生きたことに感謝。

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2025年09月25日

Posted by ブクログ

本書を読んで確信した事がある。

「もし松岡正剛が編集者であるならば、世界中の編集者は編集者ではない。もし、世界中の編集者が編集者ならば、松岡正剛は編集者どころではない。」

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2025年09月21日

Posted by ブクログ

 松岡正剛という存在を掴もうとして、だが掴めない存在=ゴーストなのだ。という本である。徹底して確定させることを避け、ブリコラージュ的に、ちぐはぐに組み合わせて編集し、新しい存在になる。松岡正剛は必ず中道的に物事のバランスを測る。

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2025年11月16日

Posted by ブクログ

松岡正剛のことが知りたくて読んだが、読んでも、やっぱりどういう人なのかよく分からない。人を理解する際には、肩書きや専門性で判断しがちだが、松岡正剛はそういったものにハマらないからだろう。
知識の豊富さよりも、その生き方に魅力を感じた。

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2025年11月12日

Posted by ブクログ

遅ればせ
 肩書やアイデンティティに関心がない スピードを要求する社会や産業にも
チグハグ(鎮具/破具)
 自然界はチグハグ状態 ハッキリさせない わずかな差分を行ったり来たり
レクジット バラエティ 最小多様性
 粗より=少しの情報から見分ける認知力 分析ではなく 編集(矛盾や相反も残す)
2社バインド広告  (歩合制で 2倍のスピードの借金返済)
 見開きで同じコンセプト お出かけ=全日空とマックスファクター 

「スクールライフ」 高校生向けに参考書と一般書も紹介する新聞 楽譜も 「情報」
 いちばん大事なことこそ子供に言うべき
 いちばん難しいことこそ子供に教えるべき
「遊」 1971~1982年
 変異や事変 イメージの揺らぎ (多数の人が理解できることに寄せすぎない)
 結合術 組み合わせる編集
「工作舎」 ワークショップの意訳
 自分が動いて人とつながっていた時代 今はメディアでしかつながっていない 
 転移 方法の実験 アナロジー 連想力 編集工学
「情報の歴史」 1990年~ NTT 電話サービス100年
 生命は情報を作った 負のエントロピーを食べている
「編集の国」2000年~
 クラブ経済 イギリスコーヒーハウス 茶の湯 メディアの仮の宿
 ブラウザに類推力 ソフトフォーカスで引っかける 
「千夜千冊」
 読む行為の本質  継続が人を変える エディション=長丁場の編集力
 もてなし ふるまい しつらい 場
「スサビ」
 荒び 遊び  隙間を透く  室町 元禄 大正

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2025年11月21日

Posted by ブクログ

松岡正剛という人を知らなかった。この本を知ったのは何かのショート動画だったと思う。彼は亡くなっていて、この本は生前の歴史を自伝的に振り返るインタビューだった。

平成に活躍する文化人達を繋ぎながら、自らがやりたいことを抽象的にも具体的にも語れる人で、「人に見せられる」「説明できる」ことを重視している

変わっていくこと、変わっていかないことに関する功罪を議論する。変わらないことを望むアイコン化こそが崇拝や極端なこだわりに繋がる。

ビジネス書のようにも読めるし、カルチャーを物語る歴史書としても面白かった。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

好奇心の天才、松岡正剛の多面体。

◯これが編集の極意です。微妙な差分を詰めに詰めたうえで、「どっちやねん」にもっていく。

◯レクジット・バラエティ:最小多様性
われわれは誰もが、少しの情報があれば多様なものを見分けることができるような認知力を持っている。

◯凧きのふの空のありどころ 蕪村

一言でいえば、「転移」です。メディアを転移させる。身体を転移させる。
それによって何が出てくるかわからない。でもあえてやってみる。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

お気に入りの…という枕詞から、なじみの…に変化するくらいにここ最近、来店頻度があがった工夫舎さんで購入。

昨年亡くなった松岡正剛さんの、
生前最初で最後の自伝的内容がインタビュー形式で綴られている。
合間合間に過去の著作を挟み、
より深く濃く松岡さんの人生を振り返る内容になっている。

はじめの始めからもう面白い。

松岡正剛という人間について、
その肩書きや過去の経緯から追って行ってもどうにもこうにも正体が掴めない。
その理由を

「自分のアイデンティティの同一性というものに常々懐疑している」

ということを松岡さん自身はあげている。
少年の頃から独自の自然観と科学観を持っており、自分が男であるとか、日本人であるとかの以前に、動物であり、場合によっては植物から分かれてしまった生物である、ということを考える方に魅力を感じていた、と言う。
この感覚を少年の頃から持っていた、
というところが松岡正剛さんを松岡正剛たらしめているように思う。
私がこういう境地に至ったのはここ数年くらいで、読みながらめちゃくちゃ共感しつつも、
人生のこんなに早い段階で自我の確立をそこまで抽象的な視点で把握するなんてどれだけの知性だよ…と、
空恐ろしくなった。

そのうえ松岡さんは、生命の前段階にまで遡る。すなわち、
自己同一性など持ちえない「素粒子」にまで。

ここまで遡って考えるとなると、
次元が違いすぎてもうひれ伏すしかない。
観察によって振る舞いが変わる素粒子にまで自己を分解して、同一性を懐疑するとは。

ここの部分でそれまで以上に松岡正剛さん自身について興味をそそられたが、
このあとは、このような理性と知性がどのように誕生し、どのように育ち、
どんな経緯を経て編集という手段と方法で世界に相対してきたのかがよくわかる刺激的なインタビューになっている。

昨年お亡くなりになっているのは分かっているので余計にその生涯について、
成してこられた仕事、
そこを貫く柔軟だけど堅牢な思想について、読み終わるのが惜しいとさえ思ってしまう素晴らしい内容だった。

松岡さんがその生涯の仕事の初期で独立してつくられた「工作舎」を、「工夫舎」と空目しては、工夫舎さんのあの本の空間を想起する。

正体不明で世界を全力で面白がる松岡正剛さんの著作をまた探しに行かなくては。

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2025年10月11日

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