【感想・ネタバレ】黒水仙のレビュー

あらすじ

宮城県の第八十八銀行白山支店で行員が射殺され、現金一億円と支店長が消えた。行員の口に押し込まれていたハンカチに施された黒い水仙の刺繍に、捜査官は首を傾げる。ほどなく、崖下に転落炎上した車から支店長が見つかり、当局は方針転換を迫られることに。強奪された一億円のうち紙幣番号の判明した十枚に関して得た情報が呼び水となって、東京の守衛殺しとの関連性も浮上、事件は思いがけない様相を呈していく。菊地警部が苦悩しつつも辿り着いた、黒水仙に象徴される悪しきものとは何か。父娘作家の出発点『獅子座』に続くシリーズ第2作。

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Posted by ブクログ

5- 

前作に当たる『獅子座』が予想以上に面白かったので、それなりに期待していたのだが、本作はそれに勝るとも劣らない。スッと物語に入り込める導入部、興味を持続させながら展開していく筋立て、大小二つの密室とアリバイトリック、バラバラのピースが一つまた一つとはまっていくように事件の真相が徐々に明かされていくその解かれ方、実に人間くさい登場人物たち、彼らの織りなすドラマ、終盤明らかになる重要人物の特異な内面、しんみりと心揺さぶる結末、本当によくできた物語だ。ただ、大きい密室の方の殺害トリックは過剰なまでに凝り過ぎで、この辺りは『獅子座』のやりすぎな暗合にも通じるのだが、少し読み手を置き去りにしている感がある。むしろ小さい密室の方の脱出トリックの明かされ方、伏線の張り方などはサラッとスマートで小粋。アリバイ崩しの過程も濃厚かつ論理的で、時刻表うんぬんが決定打になっていないところも良い。藤雪夫が宮城出身とあってか方言がリアルで、これがまたいい味を出しているし、心にグッと来るものがある。
競作、改作の良いところも悪いところも色々と見て取れることが、バランスの悪さと見る向きもあるやも知れないが、このてんこ盛り感はサービス精神の発露と好意的に受け止めたい。

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2013年05月23日

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