あらすじ
ここには海より深い愛がある。
高校入学式の翌日、語木璃一は登校途中、八重桜の木の下で、一人の少女に出会った。璃一と同じ高校の制服を着た女子生徒。長くふわりとした髪を持つ小柄なその少女は、危なっかしく青い自転車の荷台の上に立ち、頭上へと手を伸ばし、桜の太い枝に荒縄をくくりつけている。それを見て璃一は思った。
「ひょっとしてこれは。首吊りってやつですか」
しかしそのあまりの容姿の美しさに、璃一は彼女が荒縄を首に装着するのをただ静かに見守っていた。やがて桜の花びらが降り、少女が宙に浮かんだ、と、同時にぶちんとものすごい音がしてそのまま落下した。彼女は「げうー」と言いながら、こんな悪態をついた。
「もう百二十二回め! また首吊りに失敗! これはもう呪われてるといってもいいんじゃないかな!」
自殺を試みようとするとなぜか天変地異が巻き起こり、どうしても死ねない少女・なゆた。そんな少女に一目惚れして延々とストーキングする少年・璃一。なゆたは天に誓う。
「いつか必ず死んでみせるの!」
そんななゆたに璃一は叫ぶ。
「ぼくと結婚してください!」
桜の下で巡りあい「括る繰る」でクルクル回る少年少女の不思議な恋物語!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
自殺に失敗し続ける少女とその少女を付回すストーカー少年の話.
呪われてると言ってもいいくらいに自殺に失敗する少女.
首を吊ると縄が切れ枝が折れ
飛び降りると窓ふきゴンドラに落ち
どんな方法を試しても死ねない彼女.
巷を騒がせる連続殺人犯に殺してもらおうと犯人探しを始める始末.
いやー,凄いね.
面白かったよ.
Posted by ブクログ
純然たる興味でありストーカーではないと力説するけれども、しかしまごう事無きストーカーである(前半では)。にのまえの前半と後半では物語が大きく変わる展開が大好き。
Posted by ブクログ
“「事後報告になってごめん。それは謝る。けど、ぼくはただ君を知りたいだけなんだ。もっともっと君を縛る特殊体質を知りたいんだ。君は死のうと思ってる。でもどうやっても死ねない。ぼくはそれがなぜか知りたい。それが解ければ君は晴れて自殺できる。ほらね、ぼくらの利害は見事に一致する!」
魂の叫びである。
後世きっとゲティスバーグの演説とともに歴史の教科書に記載されることだろう。
気がつけば、辺りは騒がしかった。
無数の野次馬がぼくらを取り囲んでいて、なかにはケータイカメラで撮影してくるやつまでいた。遠くからは救急車だかパトカーだかのサイレンまで聞こえる。考えてみたら民家も大破してて、大量の粉塵が夜空に舞っている状態だ。やばいなあ。怪我人とか出てないだろうな。いまさらながらそんな心配が頭の片隅を巡ったけど、それもなゆたの下っ足らずな台詞でかき消された。
「つまり、あなたはどうしてあたしが死ねないのか研究してくれてるというわけなのね?」
なゆたはぞくぞくするような上目遣いでぼくを睨みつけてそう確認してくる。
「その為につけ回したり、胸さわったりしたというのね?」
とりあえず、ぼくは頷いた。
「まあ、そうだね。胸は不可抗力だけど」”
死にたい理由がある死にたい少女は何度も死のうとするけれど、その度『なゆたエフェクト』と名づけられた不思議現象が起きて死ぬことができない。
彼女にストーカーまがいの行動をする少年は記述者となり彼女と行動をともにすることに。
どういうエンドが待っているのかと思ったら現実離れしたエンドだった。
だけど、無理矢理といった感は特にない。
意外な展開に驚嘆し、寧ろ、納得できる部分もあったり。
そして、二人のこれからは。
“「死は救いだと思わない?」
「おう、いいパンチだ。思うぜ。ときどきな」
「どういうとき?」
「たとえば、朝かな。朝目覚めたとき。まだ生きてるよ、俺って」
するとなゆたは目を輝かせた。
「あたしも思うの。寝ている間にすうっと死ねたらどんな幸せで面倒がないのだろうって。毎晩そう願っているのに、朝目覚ましが今日も始まりますよーって鳴るの。最悪なの!」
おいおい。
「なんで、仕方なく顔洗って、ご飯食べて、着替えて、髪とかして、家出るとストーカーがいるし。最悪なの」
「そりゃあ最悪だな。死にたくもなるな」
おっさんまで楽しそうに相づちを打ちやがったので、ぼくは言ってやった。
「そんなに死にたいのなら、あなたの場合、出頭すればすぐだと思うのですけど」
すると、Kはにやりと笑う。
「あいにくケーサツは、麩菓子の次に嫌いなんだ」”