あらすじ
新宿区落合の下宿屋《なかもり荘》は少し独特だ。月1万円という破格の下宿代に、要実費ではあるものの、素朴ですこぶる美味しいまかないまで用意されている。さらに風変わりなのは、管理人からのお悩み相談まで付いていること。ささやかなことに疑問を覚えたり、話があちこちに飛んでしまったりする、心優しくも不器用な管理人・凪人の悩みを聞くうちに、下宿人たちもいつしかそれぞれが抱えている問題に向き合っていく。人と人とが落ち合って、同じ空間で同じ日々を過ごす様子を見守るような筆致で綴った、心あたたまる下宿屋連作ミステリ!
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Posted by ブクログ
人間関係に不器用で繊細な管理人さん兼まかないさんと、それぞれに何かから逃げてきて身を隠したい下宿人たちの、連作短編集。
なかもり荘のみなさんの関係性がとても優しく、温かい気持ちになれるのは、真ん中にナギトがいるおかげですね。そして、そこに導いたみちるさんのおかげでも。ナギトがみんなに愛されていて、それが読後感の良さにもつながりました。
最後に明かされる真相は悪意に満ちていて、犯人の性格が悪いな、とは思うものの、自分の中にもそういう要素がないか、ドキッとした結末でした。ナオさんの言う「しかたない」ではなく「ただそういうこと」と受け止める、という言葉も心に残りました。
この暖かい関係が続いてほしいな、と思ったので★5
Posted by ブクログ
〇〇荘…にとにかく弱い!
「〇〇荘」と見るととにかく読みたくなってしまう。
なんとなく伽古屋圭市さんの「猫目荘のまかないごはん」のような感じかなぁと…管理人さんが素朴な美味しいご飯を作ってくれる、まかないつきの〇〇荘!
途中までは予想通り、少し頼りなげな管理人さんの元に様々な人達が集まり、良い距離感でお互いに助け合いながら穏やかな温かい下宿人生活を送る。
微笑ましく「うんうん、いーねー」なんて思いながら、ぬくぬくのストーリーを楽しんでいたら、少しずつお話がミステリー色を…。
ぬくもり荘を脅かす事件が次々と…。
犯人の動機を知った時は、なんて理由で…と憤慨したのも束の間、ナオさんの犯人に対する心の声を読んだ時…自分の心にも刺さるものがあった。
「自分を取り繕って、さもちゃんとやっているかのような仮面を被って生きるほうが、よほどうんざりするんじゃないのか」
まさに…自分にもあるよな…そういうとこ。そんな時ナオさんの言うようにうんざりするし結局自分で自分を追い詰めて凹む。
誰もがいびつだったり歪んでいたり、苦手だったり不器用だったり…皆んなに弱いところはある。
それを補い合って助け合って肩寄せ合って生きていく。
人ってそういうものだ!
自分の置かれた環境に不平や不満を重ねてどんどん嫌な自分を目にし犯人のように「どうして私だけ…損してる」と…でもそんな自分もその周りの人達に助けられている…損してると思ってもその人達のおかげで助けられている事も救われている事もあるんだと改めて気付かされた。
ぬくもり荘、あったか、ほっこりだけではなかった!
思いがけず自分を見つめる機会をくれた!
そして最後はナギトの一枚岩に感動!泣けた!
ナオさん、アリッサ、敏治さんと可愛い可愛いムネくん❤︎そしてリツ子さん…素敵な下宿人に囲まれてナギトがぬくもり荘で奮闘する姿をまた見たいです!
知らぬ間に人と人とを落ち合い、新しい流れに乗せてくれるナギトにまた会いたいです!
自分もナギトにぬくもり荘の皆さんと会わせてもらえて良かった!
人って、どんな人にも魅力があるんですね❤︎
Posted by ブクログ
好きな話。ビターだけでもなく甘いだけでもなく。紹介文からはもっと連作短編っぽいかと思ってて、もう少し緩やかなつながりの長編みたいな感じでちょっと戸惑った。
Posted by ブクログ
創元推理文庫なので購入
作者の文庫コードの末尾が4、つまり4冊目ということになるが前の3冊は積読状態のまま最新作を初めて読む
タイトルで嫌な予感はしていた
背表紙の「連作ミステリ」や、帯の「管理人からのお悩み相談」あたりにミステリ要素を期待しながら読んだが
・ミステリ要素が激薄
連作ミステリとは各話各章に謎と解決があって、クライマックスでそれらにまたがる伏線を回収するカタルシスを得るものだと思っていたが、この作品はそうではなく、各話で起こった軽い事件の犯人が最終話に明かされる
・犯人の動機がサイコパス的で物語にそぐわない
それまで散々ほっこり話を読んだところで「あなたしかいない」犯人が明かされ、気の利いたトリックや工作も無い、言わば場当たり的犯行で動機も陳腐
普通の文芸書として管理人と住人たちの人物描写はそのままにハートウォーミングストーリーにした方が良かったのでは?ギタリストおばさんと幼児のシーンは涙を誘われたし
急に1人だけドクズ人間が出てこられても同情の余地もないし、この世界観から完全に浮いていると思う
ギャップを狙ったものではない、よなあ
ミステリとして評価は星2つ
ミステリ要素を抜いた物語として星3つ
Posted by ブクログ
8畳ワンルーム キッチン、バス、トイレ、庭は共有
下宿代月1万円 まかないあり(要実費)
管理人からのお悩み相談付き
作品の舞台「なかもり荘」という下宿屋の条件。
そして、この「なかもり荘」でいくつかの事件が起こります。
プランターの土がひっくり返る、ということから始まって、下宿人たちが作った作品が破られる。そして、ついには火事。
いったい誰が、何のために。
犯人がわかって、動機も知れた時は気分が悪くなりました。「やめてくれない!」という感じです。
ミステリー要素とは別に登場人物たちは個性的で、中でも管理人兼まかないさんの彼は特徴的でした。
また、まかないさんの作るご飯はとても美味しそうでした。中でも私が気になったのは「明太子うどん」です。これは真似して作れそうです(*^^*)
ミステリーなんだけども、下宿人同士の関わりがとても素敵で心温まる物語でした。