あらすじ
「身を挺して」「悲劇的な」人間になりたいという欲動を抱えながら、三島はどう自分の人生と向き合ったのか。その作品から読み解く。
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Posted by ブクログ
三島由紀夫の作品を時系列で紐解いた本。
はっきり言います。難しい…。入門とあるが、三島由紀夫を1から知るという本ではない。ある程度の教養が必要な本。
この本は、三島由紀夫の作品を読んでいないと、筆者のあらすじだけだと内容が入って来にくかったのだが、これは筆者のせいというより、三島由紀夫作品が観念的だからだとおもう…。
というか、突飛すぎる?
実は、私も文学史を教えるとき、『金閣寺』のあらすじを生徒に話してたことがある。そのときはうーん、我ながらわかりにくいと思いながら紹介していた。
内面に起こった心情的な変化を観念的に表現しているからか、捉えどころがないのか。
金閣寺に憧れてた男がいる→最後は金閣寺を焼く
ストーリーにするとつまらないなぁと思っていたのだけど、そこに至るまでの描写でなんとなくだが納得できる。
そして三島由紀夫の文体で読むと、よくわからん世界が急に艶っぽくもなり、怪しくもなり、絢爛豪華にもなるのだからすごい。文学は文体に宿るのかも。
とりあえず、あまり知らない作品の論説を読んでもピンとこない。読んだことある作品なら、その作品への想いがグッと強くなるのだが。三島由紀夫をそこそこ読んでるって人に、なぜこの話を書いたのか、そこに踏み込むのにいい本だと思った。
三島由紀夫の作品には、「身を挺して」「悲劇的な」ものがあるとする。「全意味論的欲動」と筆者は呼ぶ。
意味は本人にもよくわからない、なんか身を滅ぼして人が見向きもしない、何かに打ち込むような英雄的な人間でありたい!という思いだと解釈した。
この欲動を基準にして、作品を読むことで、なるほど、三島由紀夫の作家性はここにあったかと納得できる。
当時の小説作品と比べ、三島由紀夫の作品の新しさや世間の反応、何が描きたかったのかといったテーマ性など、作品を知っている方が楽しめる本だと思う。
三島由紀夫の最期について詳しく知りたいといった人は物足りなく感じるかもしれないが、割と幼少時代から、切腹に類することへの欲望みたいなものが垣間見える。本作を読んでも思想的な部分ではなく、価値観として、「身を挺して」「悲劇的な」ものへの憧憬や欲望的なものとして落とし込んで考えたら割腹自殺については通じるものがあると感じた。
まあ、それでも謎は残るのだけど。
一貫して「全意味論的欲動」ってものに一度立ち返って考えれば、三島文学の根底にあるものは見えやすくなったように思う。今年は近代文学ももう少ししっかり読みたいと思っているため、再びこの本に戻ることもあるかも。
個人的には『仮面の告白』がどこまで三島自身を投影しているか、同性愛的要素の話などは興味深かった。